経験は教えることが出来ない

年末、NHKの「証言ドキュメント 大谷翔平」を視ました。
オープン戦の不調から始まり、メジャー鮮烈デビュー、ケガによる戦線離脱、そして最後は圧倒的な得票での新人賞。
その一年を、対戦相手、球団関係者、メディア、ファンの証言を紡いで浮き彫りにしようという趣旨で、非常に興味深い内容でした。

オープン戦で、評論家に「高校生レベル」と酷評されたバッティング。
開幕までの短期間で前足を上げないフォームに改造、それがすぐに結果となって現れたことは有名です。
その対応力の高さは、大谷選手がもつ類まれな才能の中で、最初に称賛された才能でした。
前足を上げない「打撃フォームの改造」は、エンジェルスのヒンスキー打撃コーチがアドバイスしたものだそう。
ただ、強制するものではなく、あくまでアドバイス。
大谷選手もすぐに受け入れたわけではなく、試行錯誤した上で最終的にそのフォームに決めたのだとか。

そのヒンスキー打撃コーチの「証言」の中に、「いい言葉」がありました。
「経験は教えることが出来ない」
確かにフォーム改造のアドバイスはしたけど、それだけで打てるようになったわけではない。
その前にまず、オープン戦で結果が出なかったのは、単純に翔平にメジャーの経験が無かったからだ。
だが結果が出ない間も、翔平はクレバーに着実に経験を積んだ。
フォーム改造もその経験を積むプロセスで、自ら納得し受け入れた。
そしてあとはそれを実戦で試す経験を積むだけだった。
経験だけは教えることが出来ないからね。

私たちは仕事の中で、「人を育てる」という言葉を簡単に使ってしまいます。
上司が部下を育てる、会社が社員を育てる、と。
しかし本当に社員が育つために必要なのは、「経験すること」でしょう。
私たちすべてのベテラン社員も、いろんな仕事を「経験する」ことで、育ってきたはず。
なのに、若手社員に対しては、つい教えて育てようとしてしまいます。
私たちがすべきは、「若手社員に何をどう経験させるか」を考えることです。

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