「モノわかりの悪い人間」を演じることができるか

 

私の部下の一人は、入社して15年、非常に優秀です。
地元の国立大卒で、適度なスポーツマンで見た目も爽やかでハンサム(イケメン)。
経理・人事・総務の中心的な役割を担い、現場(工場)の社員にも信頼されています。
私が下世話な話をして水を向けても、他人の悪口は言いません。
よくデキる部下がいて本当に助かっています。
しかし一つ物足りないことがあります。
それは、「モノわかりの悪い人間」を演じることができないことです。

「モノわかりの悪い人間」を演じることは、ときに必要です。
例えば、工場内の大型レーザーが突然稼働停止したとします。
まだ導入して数週間、原因は不明ですが、こちらの運転ミスではなさそう。
当然、そのメーカーに電話することになります。
状況を伝え、早く修理に来てほしいと頼みます。
しかしメーカーはスタッフが出張中で早くても2日後の修理になるとの返事。

ここからこちらは「モノわかりの悪い人間」を演じなければいけません。
こちらはレーザーが止まったら、それから先の工程すべてが遅れてしまいます。
月に21日程度の稼働日数しかない工場で2日のレーザー停止は大きな打撃です。
メーカー側の人的な状況をある程度理解したとしても、「モノわかりの良い人間」になってはいけません。
「あー、そうですか。じゃあ出来るだけ早くお願いします」
などと簡単に言ってはいけないのです。

不具合の原因がメーカー側の責任であれば、しつこくそれを訴えて、出来るだけ早く修理に来るよう頼み倒します。
「2日後と言われても、納入先のお客さんは今でも催促して来てるんです。
お客さんにウチはどう説明したらいいんですか。
まだ買ったばかりで、それもそちらに勧められて入れた機械ですよ。
何で2日も製造できない状態で待たなきゃいけないんですか」
本当はそこまで逼迫した状況ではこちらもないとしても、稼働停止が長くなればそれだけ損失が増えるのであれば、これくらいは主張しなければなりません。

これまでの経験で言えば、「モノわかりの悪い人間」を演じれば、ほぼすべてのケースで相手の対応が早くなります
なぜなら相手には必ずバッファーがあるからです。
2日後という回答であれば、その期限にいくらかは保険をかけています。
さらにその気になれば、仕事の順番を入れ替えて早く来ることも出来るかも知れません。
こちらに非が無いときは、自社の損失を最小限にするために、時として「モノわかりの悪い人間」演じることが必要なのです。
また、それは一つの「交渉スキル」でもあるのです。

では、こちらに非がある場合はどうか。
その時はひたすら頭を下げて、粘り強くお願いするのみです。
結局、非があっても無くても、簡単に引き下がってはいけない、ということです。

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