なぜそんなに残業をさせたがる ?

 

先日、新国立競技場の地盤改良工事に携わっていた男性が自ら命を絶ち、遺族が労災の申請をしたとのニュースがありました。
大学を卒業して一年目、12月中旬から新国立の担当になり、3月初めに失踪するまでの間、月間200時間以上の残業をしていたとのこと。
このニュースを聞いて、ドキッとした人たちがいます。
運輸業、建設業の業界団体の人たちです。

政府が導入を目指している残業時間の上限規制。
企業側の経団連は100時間、従業員側の連合は100時間未満を主張。
結局安倍首相の裁定で、連合側の100時間未満に決定しました。
この規制は2019年度から適用される予定です。
しかし運輸・建設の業界団体は、適用の猶予を申請しています。
東京オリンピック後から段階的に適用するように。
この上限規制が施行される前、現時点でも運輸と建設だけ労働時間については特別扱いをされています。
この二業種は残業規制になじまないものと見られてきたのです。

冒頭の悲しい事件を、運輸・建設の業界団体の人たちはどう捉えるのでしょうか。
「考え直さなければいけない」と思うのか、それとも「余計なことをしてくれた」と思うのか。

それにしても、産業界はなぜそんなに残業をさせたがるのでしょうか。
従業員側の連合でさえ、100時間を基準に議論してしまっているのですから、日本の産業界の残業に対する感覚は、「働き方改革」に程遠いです。

この100時間は繁忙期の残業時間を規制するもの。
しかしそもそもそれだけの残業が必要な「繁忙期」があること自体が問題ではないでしょうか。
「働き方改革」は「仕事改革」なしには成し得ません。

もう一つ気になるのは、経団連が現場の働き手のことをどれだけ理解しているのかという点です。
ハッキリ言って、現場の従業員は100時間も残業させられたら、いい仕事はしません
今日も残業だと思うと、朝からそれに合わせた働き方になります。
人間だもの。
逆に、それくらいでなければ不幸な事件はもっと増えるでしょう。

仕事は定時か若干の残業で終わり、早く家に帰ってゆったりと自分の時間を過ごす。
そして早めに寝て、早く起きる。
早めの電車で出勤して、今日の仕事の段取りを早く済ませる。
こんな循環が仕事の質を高め、社員を輝かせるのではないでしょうか。

遅くまで残業して、ヘロヘロになって遅い時間に家に帰る。
朝はギリギリに起きて満員電車でギリギリに出社。
勤務時間が始まってから、ようやく今日の仕事の段取りを始める。
いいことなんか絶対にありません。

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