究極のキャッシュフロー経営

私が子供のころ、1970年代の商店の軒にはザルがぶら下がっていました。
八百屋や魚屋で、売上金や釣り銭を入れるためのザルで、
確かゴム紐みたいなもので、ぶら下がっていたような気がします。
普段は比較的高い位置にあるザルを、お金を出し入れするときだけ
引っ張って下げるという便利グッズです。
売れた時だけでなく、営業中に集金に来た業者さんには、
このザルのお金で支払いをしてしまいます。
 
テレビドラマや漫画の世界では、不良な店主がたまに店に来て、
そのザルの中のお金をつかみ、またギャンブルに向かう、という
昭和的なシーンの小道具でもありました。
 
しかし当たり前ですが、普通の八百屋さんは夜お店を閉めると
そのザルのお金を数え、明日の釣り銭をザルに残し、
それ以外を今日の売上として袋に入れます。
翌朝はその袋を持って市場に行き、その現金の範囲内で仕入をします。
 
究極のキャッシュフロー経営です。
いつもキャッシュ残高を把握しているので資金繰りを考える必要もなく、
突然の倒産なんて絶対ありません
 
同じような話を聞いたことがあります。
関西の大手のアパレル企業の元事業部長の話。
その方のお父様も50年近く尼崎で女性服の専門店を経営されていて、
亡くなる直前まで細々とではありますが営業されていたそうです。
その仕入れ方法は一貫していて、一つ売れたら一つ仕入れる、というもの。
 
いかにも古風でいかにも小規模ゆえのエピソードです。
しかし、われわれ財務基盤が盤石でない中小企業にとっては、
覚えておかなければいけない商売の原点ではないでしょうか。

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