本当の「価値」を見誤らないために大切なこと

価値を見誤らないために

物事の本当の価値は、それが無くなったときに分かります。

典型的な例は、親の存在。
反抗期、口うるさい母親に、
「うるさい、くそババア! はよ死ねー!」
とひどい言葉を浴びせた息子も、実際母親が亡くなると
「おかあちゃーん!」
大声で泣き、孝行できなかったことを悔やむ。
「健康」もそう、「友人関係」もそう。
失うまでなかなかその本当の価値を認識することができません、残念ながら。

ですから、何かの価値を測るとき、その必要性を見定めるときは、それが無くなったときのことを想像することが有効です。
自分の周りの人やモノ・コトについて、一つ一つそれが「無くなって二度と戻ってこなかったら」と想像してみる。
すると、それらの本当の価値(自分にとっての価値)が見えてきます。
そこで価値を感じないものは捨ててしまえばよいでしょう。
そして残ったものを見回すと、思っていた以上に自分が価値のあるものに囲まれて生きていることに気づきます。
それは自分の人生の豊かさに気づくことでもあります。

仕事も同じでしょう。
気に食わない上司や、デキの悪い部下。
普段不満に感じている相手について、彼らがいなくなったらと想像してみる。
すると、彼らがいなければ自分の仕事も成り立たないこと、案外自分が助けてもらっていることに気づいたりします。
毎日提出するのが面倒な業務日誌や、中身が薄く役に立ちそうもない会議。
ムダに感じる業務日誌や会議について、それらが無くなったらと想像してみる。
すると、それらが無ければいざ自分が情報発信したいときには手段がなく困ってしまうことに気づく。
同時に業務日誌や会議を最初に導入した人の思いにも気づく。

ではそんな気づきの後、自分はそれら「上司」「部下」「業務日誌」「会議」に対してどう向き合うべきか。
それを考えるところから、仕事が豊かなものになっていきます。

モラルとモラールの関係

モラルとモラールの関係

「モラル」と「モラール」は別の言葉です。
「モラル(moral)」は、日常も良く使う、「倫理」とか「道徳」の意。
「モラール(morale)は、仕事の場でしか聞かれませんが、「労働意欲」「士気」「ヤル気」の意味。

この二つの言葉は直接的には関係のない言葉ですが、会社経営の上では非常に密接に関わっています。

私たちの会社(製造業)では一年に一回、全従業員対象に「モラールサーベイ」を実施します。
日本語では「勤労調査」「従業員満足度調査」と訳されますが、morale serveyからすると「労働意欲調査」がストレートな訳でしょう。

モラールサーベイには、
・会社の経営方針や今後の計画を知っていますか。
・日常の仕事に関して、上司の指示・命令は的確に行われていますか。
・会社の規則やルールは、これでよいと思いますか。
・昇進や昇格の機会が適切に設けられていますか。
・あなたの職場と、他の職場との協力や情報連絡はうまくいっていますか。
といった質問が30ほどあり、最後は次の質問で締めくくられています。
・あなたはこの会社で働き続けたいと思いますか。

また、自由意見を書く欄もあります。
従業員に調査シートを配付する際、記入済シートを入れる封筒も配布します。
従業員が提出した封筒を会社で開封することはなく、そのままコンサルタントに送ります。
従業員にも、「会社で開封することはないので、安心して書いてほしい」と伝えています。

後日コンサルタントから、全体的な傾向分析や個別の回答事例をまとめた「結果報告」を受け取ります。
その結果報告には、従業員が不満に思っていることがあまた書いてあります。
それらの不満の中で、圧倒的に多いのは、「上司への不満」です。
・仕事について質問すると、バカにしたような口ぶりで説明される。
・喫煙時間のルールができても、上の人たちが守っていない。
・上司が仕事中に長い時間インターネットを見ている。
・社用の買い出しのとき上司に、ついでにタバコを買ってきてほしいと頼まれた。
・上司は、注意しやすい人だけに注意し、しにくい人は放任している。
などなどなど。

上司の「モラルの低さ」が、部下の「モラール低下」を招く。
会社で一番よく目にする、「モラル」と「モラール」の関係です。

ワクチン接種で考える、「ポジティブ目標管理」

ワクチン接種で考える、「ポジティブ目標管理」

なかなかペースが上がらなかった高齢者へのワクチン接種が、ようやく本格化してきました。
人口の多い大都市圏は、政府が想定する7月末完了は難しそうですが、地方では十分に間に合いそうです

高齢者接種の準備に手間取ったこれまでの間、ワクチン接種に関連していろんな問題が取り沙汰されました。
ネットや電話に接種申し込みが殺到し、なかなかつながらない。
ネットに慣れない高齢者が市役所に並んだ。
余って行き場のないワクチンが廃棄された。
知事などの首長が優先的に接種するのはいかがなものか。
地元の有力者が市に優先接種を要望し、市がそれに応えようとした。
などなど。
ネガティブな話ばかり。

テレビのニュースの冒頭では、必ず「本日の都道県別感染者数」の日本地図が出て、口頭で重症者数と死亡者数が加えられます。
これに前出したネガティブ情報が上乗せされるのですから、国民はみんなトゲトゲした気持ちに支配されてしまいます

ところで、私たち日本国民の現在の最重要かつ最優先の目標は、はっきりしています。
「ワクチン接種を希望する全国民が、早期に2回の接種を完了すること。」
これ以外にありません。
医療従事者や高齢者への優先接種を7月末までに完了させる目標は、全国民が完了する目標の「中間目標」に過ぎません。
テレビのニュースでは見かけませんが、Yahoo!JAPANのトップページには、
「国内の新型コロナ発生状況」の下に、「国内のワクチン接種実績」が並んで載っています。
さすがです。
私たちはこのワクチン接種の積み上がりにもっとフォーカスすべきでしょう。

テレビのニュースでも、取り入れてはどうでしょうか。
日本地図で都道府県別の感染者数を示したあと、同じ日本地図で都道府県別のワクチン接種率を示すのです。
感染者数と違い積み上がる数字なので、視聴者は自分の県の数値を毎日継続的にフォローするでしょう。
ウチの県は今、全国3番目の接種率だ。
なぜウチの県は隣の県に大きく引き離されてるんだ。
県民がそういうフォローをすれば、県の担当者はじめ接種に関わる人たちも俄然頑張るでしょう。
(今も頑張っていらっしゃいます)

私たちのほうも、「知事の優先接種がいかがなものか」、などという狭い了見は無くなるのではないでしょうか。
「誰が先に受けても接種率が上がりさえすれば、自分の身の安全度は高まるし、自分の接種時期も早まる。」
そんな考え方になれば素晴らしいです。

一番大切な目標を、「数値化」して「見える化」して「ポジティブ化」する。
これが目標達成への最短ルートです。
会社の目標管理も同じです。

10年後土地は半額になる、と考える

将来土地は半額になるかもしれない、と考える

以前、宝飾品を扱う会社の社長から相談を受けたことがあります。
「自分が引退するまでに、会社の借入を全部返すことはできそうもない。
どうしたらええんでしょう」
会社の年商は10億足らず、借入は合計3億。
社長は現在65歳。
75歳で引退するとして、残り10年で3億をゼロにするのは到底無理、とのこと。

この社長もそうですが、多くの中小企業の社長は未だに自分の会社の借入についてガッツリ連帯保証しています。
そのため、借入が相当残った状況では引退すらできないのではないか、そんな心配をしているようです。

その会社の決算書を見ると、固定資産の部に「差入保証金」90百万がありました。
差入先は、ルミネやアトレ、イオンなど優良な先ばかり。
全国の優良なショッピングモールに出店している同社は、結構な額の保証金を差し入れているのです。
「社長、この保証金90百万はいつか還ってくるお金、返済に充てられるお金だから、3億から引きましょう」
結果、実質的な借入残は210百万になりました。

また、決算書の固定資産の部には「土地」150百万がありました。
本社ビルの敷地です。
土地は処分したらお金になって還ってくるのだから、これも210百万から引いて考えることもできます。
しかし、土地は相場で値上がり、値下がりします。
処分したときにいくらのお金になって還ってくるか分かりません。
どう考えるか。
こういう場合は、単純に「10年後半額」として計算します。
土地の値下がりリスクを考えるとき、「10年後半額」はリスクを十分反映しているでしょう。
30年後ならもっと値下がりするかもしれませんが。
「社長、10年後土地を処分したら、少なくとも簿価150百万の半分75百万はお金で還ってくるでしょうから、それも返済に充てられるので、210百万から引きましょう」
結果、実質的な借入残は135百万になりました。

つまり、この社長は向こう10年間で135百万をしっかり返していけば良いのです。
300百万返す必要はありません。
可能であれば現在の借入300百万を1本にまとめて、10年後社長が75歳のときに残高が165百万になるよう長期借入を組み替えるとよいでしょう。
その間は新たな借入はせず、しっかり返済を進める。

このように、10年後の土地の簿価が半額になるとして財務チェックすることは有益です。
多くの会社で、「土地」は貸借対照表の資産で大きな割合を占めています。
その「土地簿価」を半額に置き換えると、自己資本比率はどうなるか。
借入額から「土地簿価の半額」を引いた実質借入残、それを10年で返済することができるか。
全ての会社で使えるセルフチェック法です。

農産品の統一ブランドに違和感

農産品の統一ブランドに違和感

今日の日経新聞地域面に
「県産和牛を統一ブランド化、知名度向上のため」
という見出しがありました。
記事によれば、(山口)県内には多くの和牛ブランドがあり、県外での知名度が低いことから、統一ブランドをつくって県外での販売拡大を目指す、とのこと。

この記事を読んで、何かモヤモヤした気持ちになりました。
なんとなく趣旨はわかるのですが、消費者目線で言えば、知名度が低いものを集めてつくったブランド牛が魅力的に感じれないからです。
県内で魅力的に感じない統一ブランド牛が、県外で目論むほど売れるのか。
そもそも県外ってどこ? 隣の広島? 福岡? それとも東京?
広島や福岡には自前の県産牛があるでしょうし、東京には「神戸ビーフ」「松阪牛」はじめ全国からすでに有名なブランド牛が押し寄せてるし。

モヤモヤするのにはもう一つ理由があります。
それは山口県には、小規模だけど注目すべき和牛ブランドがいくつもあるからです。
日本の肉用牛の祖先と言われる、萩市見島の純粋和種「見島牛(みしまうし)」
「見島牛」とオランダ産ホルスタインの交配種「見蘭牛(けんらんぎゅう)」
全国肉用牛枝肉共励会で二度の日本一に輝いた「阿知須牛(あじすぎゅう)」
和牛オリンピックで入賞常連の岩国ファーム「高森和牛」
などなど。
これらの希少ブランド牛は大量に流通させることができないので、JAはじめ流通業者にとっては魅力に乏しいかもしれません。
しかし、消費者にとっては「神戸ビーフ」「松阪牛」に劣らない個性に魅力を感じます。
一度食べてみたい、と。

人口減少の趨勢の中で、JAは生き残りをかけて合併し効率化を進めています。
それに呼応してか、みかんや牛乳など農産品ブランドも合併する方に進んでいるように見えます。
しかしそれは、地元にある美味しいブランドが、その他大勢と混ぜられて薄まっているようで、悲しい気持ちになってしまいます。
これからすべきはむしろ逆、「ブランドの細分化」ではないでしょうか。
県内に大きな統一ブランドをつくるのではなく、希少な魅力的ブランドをたくさんつくる。
その方が、それを育てた農家の考え方や地理的背景など「美味しさの理由」が消費者に届きやすいはずです。
またそれは、今後強く求められる「食品のトレーサビリティ」とも相性の良い戦略です。
小さくて魅力的なブランド農産品を、どうやって効率的にたくさん流通させるか、それを考えるのがこれからの流通業ではないでしょうか。