公平な売上目標を設定する方法

昨対トレンド

売上目標を設定するとき、部門間・店舗間で公平な目標にすることは簡単ではありません。
月が終わって、月間の売上結果を振り返るとき
「ウチの店は目標が高すぎる」
「あの店ならあの程度の目標は達成して当たり前」
など、不満を漏らす店長もいます。
しかし、売上目標を設定する本部は、その店の状況を加味したうえで設定しているわけですから、そんなに不公平なわけではないでしょう。

では、なぜ店長は売上目標に対して不満を感じるのか。
それは、目標設定に本部の「恣意」、平たく言えば「鉛筆なめ」を感じてしまうからです。
本当はそんなに不公平ではないのに、本部の「人」が介在するために、「人のエラー」のせいにしたがるのです。

そこで、できるだけ「人」を排除して、目標設定を自動化する方法を紹介します。

例として、売上好調なA店と、売上不振のB店の9月の売上目標設定をします。

<過去3ヵ月の売上状況>   (千円)
6月 7月 8月 平均 9月
A店 売上 6,200 7,300 6,800
昨年売上 5,610 6,710 5,700 5,900
昨対 110.5% 108.8% 119.3% 112.9%
B店 売上 5,800 6,500 6,100
昨年売上 6,480 6,900 6,690 6,700
昨対 89.5% 94.2% 91.2% 91.6%

赤色の数字は、直近3ヵ月の昨対の単純平均(売上の大小で加重平均しません)。
これは、それぞれの店の足元の状況が上向きか下向きかを表しています。
ここでは、この数字を勝手に、「昨対トレンド」と呼びます。
この昨対トレンドを使って、次月9月の売上予測をします。
A店の9月売上予測=昨年9月売上5,900千×112.9%=6,661千
B店の9月売上予測=昨年9月売上6,700千×91.6%=6,137千

この予測に対して両店とも103%をかけて目標とします。
A店の9月売上目標=6,661千×103%=6,861千 (昨対116.3%に相当)
B店の9月売上目標=6,137千×103%=6,321千 (昨対94.3%に相当)

この目標設定は、
好調な店であろうと不振な店であろうと、店のスタッフがすべきことは、「店の状況を今より少しずつ良くしていくこと」
という、当たり前で、現実的で、普遍的な考えに基づいています。
そこに「不公平」はありません。

この目標設定のプロセスで恣意的な数字は、最後の103%だけです。
直近3ヵ月の売上も、昨年対比もすべて実績値ですから、動かしようがありません。
この103%も全社で事前に設定してしまえば、月末に当月売上が締まった瞬間に次月の目標が自動的に決まります
そこに「人」の介在はありません。
だから結果を「人のせい」にもできません。

「昨対トレンド」で、目標設定を自動化する。
今後、AIが目標設定するなら、こんな感じになるのではないでしょうか。

昨年対比(昨対)100%とは。

昨対トレンド

売上の目標管理に、「昨年対比(昨対)」を使う会社は多いでしょう。
先月の売上は昨対103.5%だったとか、96.3%だったとか。
とりまく環境がどうであれ、昨対100%をクリアすればホッとします。
とりあえず、「去年と同じ売上」はとれたと。

しかし財務担当者であれば、昨対100%を単純に「去年と同じ売上」で済ませてはいけません。
全社売上が昨対100%であっても、部門別、製品別には120%だったり85%だったり、上下バラつきがあります。
つまり昨対100%は、120%や85%の数字を集めてみたら奇跡的に均衡して100%になったということ。
中身を見れば、今年の売上は、決して「去年と同じ売上」ではないのです。

これをある町の人口に例えるとこうです。
例えば、その町の今年の人口が3万人で、去年と同じ数字だとします。
しかしこの町では一年間に、赤ちゃんが生まれ、お年寄りが亡くなり、若者が都会の大学に出ていき、ベトナムから町内の工場に技能実習生が来ています。
その結果、奇跡的に3万人という数字で均衡しているのです。
今年の3万人は、「去年と同じ3万人」ではありません。
中身は大きく変わっています。
この中身を見ない限り、この町の将来の人口を予測することは出来ないでしょう。

このように、一見均衡して見える数字も、中身を見ると増えたり減ったり変動して、その総計が均衡しているに過ぎません。
この数字の見方は財務担当者にとって大切です。
会社を成長させるためには、
伸びている部門・製品に投資をする、
縮小している部門・製品に対策を打つ、
そのためには、部門別・製品別の変動をしっかり分析する必要があるからです。
そのとき、全社売上の「昨対100%」というデータはほとんど役に立ちません。

財務担当者は他の人と同じように「昨対100%」にホッとしていてはいけないのです。