農産品の統一ブランドに違和感

今日の日経新聞地域面に
「県産和牛を統一ブランド化、知名度向上のため」
という見出しがありました。
記事によれば、(山口)県内には多くの和牛ブランドがあり、県外での知名度が低いことから、統一ブランドをつくって県外での販売拡大を目指す、とのこと。

この記事を読んで、何かモヤモヤした気持ちになりました。
なんとなく趣旨はわかるのですが、消費者目線で言えば、知名度が低いものを集めてつくったブランド牛が魅力的に感じれないからです。
県内で魅力的に感じない統一ブランド牛が、県外で目論むほど売れるのか。
そもそも県外ってどこ? 隣の広島? 福岡? それとも東京?
広島や福岡には自前の県産牛があるでしょうし、東京には「神戸ビーフ」「松阪牛」はじめ全国からすでに有名なブランド牛が押し寄せてるし。

モヤモヤするのにはもう一つ理由があります。
それは山口県には、小規模だけど注目すべき和牛ブランドがいくつもあるからです。
日本の肉用牛の祖先と言われる、萩市見島の純粋和種「見島牛(みしまうし)」
「見島牛」とオランダ産ホルスタインの交配種「見蘭牛(けんらんぎゅう)」
全国肉用牛枝肉共励会で二度の日本一に輝いた「阿知須牛(あじすぎゅう)」
和牛オリンピックで入賞常連の岩国ファーム「高森和牛」
などなど。
これらの希少ブランド牛は大量に流通させることができないので、JAはじめ流通業者にとっては魅力に乏しいかもしれません。
しかし、消費者にとっては「神戸ビーフ」「松阪牛」に劣らない個性に魅力を感じます。
一度食べてみたい、と。

人口減少の趨勢の中で、JAは生き残りをかけて合併し効率化を進めています。
それに呼応してか、みかんや牛乳など農産品ブランドも合併する方に進んでいるように見えます。
しかしそれは、地元にある美味しいブランドが、その他大勢と混ぜられて薄まっているようで、悲しい気持ちになってしまいます。
これからすべきはむしろ逆、「ブランドの細分化」ではないでしょうか。
県内に大きな統一ブランドをつくるのではなく、希少な魅力的ブランドをたくさんつくる。
その方が、それを育てた農家の考え方や地理的背景など「美味しさの理由」が消費者に届きやすいはずです。
またそれは、今後強く求められる「食品のトレーサビリティ」とも相性の良い戦略です。
小さくて魅力的なブランド農産品を、どうやって効率的にたくさん流通させるか、それを考えるのがこれからの流通業ではないでしょうか。

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