銀行員はなぜ書類を改ざんするのか

銀行員はなぜ書類を改ざんするのか

シェアハウス関連融資で、スルガ銀行が揺れています。
シェアハウスの運営会社「スマートデイズ」が破産、「30年間家賃保証」が不能になり、物件に投資した700人の個人投資家も、破産予備軍状態です。

この件で大きく採り上げられているのは、スルガ銀行の行員の重大なコンプライアンス違反。
行員による「土地売買価格の水増し」や「借主の資産状況資料の改ざん」といった不正です。
このような不正は、当然あってはならないことですが、これまでにもあちこちの銀行で起きてきました。
昨年明るみになった、商工中金の「制度融資悪用」も似たようなものでしょう。

銀行員は、なぜ、どういうときに書類を改ざんするのか。
そのままでは審査が通らないような「不良案件」を通るように改ざんする、と思われがちですが、そうではありません
逆です。
「この案件は焦げ付く心配がない」と思っているから、改ざんするのです。
心配がない案件だから、少し基準に届かない数字があるなら下駄を履かせて、審査をスムーズに通しちゃおう、という感じです。
そんな風に安易な感覚で改ざんしているケースがほとんどでしょう。

銀行員にとって何よりも恐ろしいのは、自分が関わった融資案件が焦げ付いて、その責任を問われることです。
ですから、どんなにノルマに追われても、焦げ付きそうな「不良案件」に手を出すことはありません。
過去からの経緯で、どうしても若干のリスクを含んだ融資を実行せざるを得ない時は、絶対に資料の改ざんはしません
自分の身を守るために。

スルガ銀行にしても、商工中金にしても、多くの行員が不正に関与したと報じられています。
それは、多くの行員が、同時に「この融資は焦げ付くことはない」、「この融資で自分が責任を問われることはない」と考えたということ。
この特異な状況は、銀行自体が一連の融資に「お墨付き」を与える以外には起き得ないのです。

ベトナム人技能実習生のおカネ事情

ベトナム人技能実習生のおカネ事情

先月、私たちの会社のベトナム人技能実習生3人が、3年の実習期間を終え帰国しました。
(うち2人は実習期間を2年延長するので、1ヶ月後に再来日します)

「溶接技能」の習得を目的に来た彼らは、「技術を身につけたい」モチベーションがハンパなく、同世代の日本人よりもずっと早いスピードで上達しました。
当初は、基本の「鉄」の溶接だけを習得させる予定だったのですが、その習熟度を見て、2年目から鉄よりも難しい「アルミ」の溶接にもチャレンジさせました。
最近は、彼らがいなくなると現場が困ってしまうほどの戦力になりました。

3人が帰る日、下世話な質問をしてみました。
「3年間で、ちゃんと目標の額のおカネ貯まった?」
来日したとき3人とも、「3年間で200万貯める」ことを目標にしていました。
その結果を知りたかったのです。
因みに、ベトナムの平均的な月給は日本円にして2〜3万ですから、「200万円」というのは彼らにとって相当大きな金額です。
答えは、「YES」。
3人とも期間中、毎月10万以上をベトナムに送金したとのこと。
実質35ヵ月ですから、実に350万以上のおカネを送金したことになります。
目標額をはるかに超えました。

あらためて彼らの源泉徴収票を確認してみました。
23歳の実習生の2年目の源泉徴収票は次の通りです。
<給与総額>  2,440千  (賞与・残業代込)
<控除額>     317千  ( 社会保険 272千 + 所得税 45千 )
<天引き>    204千  ( 寮費・光熱費・WiFi 月15千 + 社員旅行積立 月2千 )
<差引手取り> 1,919千

月平均にすると、159千円の手取り。
そのうち、100千を送金すると、残りの59千円が生活費。
なるほど、贅沢しなければ難しくはない金額です。
会社から2キロの古民家を改装した寮から自転車で通勤。
三食すべて自炊、昼ゴハンもベトナム料理を弁当にして持参。
食材は寮から4キロのディスカウントストアに自転車で買い出し。
地方では遊ぶところも少なく、おカネを貯めやすい環境が整っています。
そういう事情が外国人技能実習生にも伝わり、最近は地方の企業を志望する実習生が増えたのだとか。

実習生は来日するために本国で100万円程度の借金をしています。
その返済のためにも、おカネを貯める必要があるのです。
そのような実習生のおカネ事情を理解して、社内で徹底しなければいけないことがあります。
それは、日本人社員が実習生を「飲み」「遊び」に連れまわさないこと
彼らのおカネ事情を崩さないために。