ローテク業界で生き残るために大切なこと

ローテク業界で生き残るために大切なこと

 

ローテク(Low Technology)業界で生き残るために一番大切なことは、
設備投資を惜しまないことです。

私たちの会社の工場はローテクを絵に描いたような工場です。
鉄やステンレスやアルミの板を、切ったり曲げたり引っ付けたり塗ったり。
製品は大きくて重たいものばかり
一番小さな製品でも軽く1トンはあります。

大きいものを作るために工場の天井高も高く、20メートル。
大きい鉄板、厚い鉄板を切るための超大型レーザー切断機。
長い鉄板を折り曲げるための超大型ベンダー(プレス)。
バカでかい塗装ブース。
大きな材料や完成品を置くための広い土地。

爆発的な売上を望めないローテクでこれだけの投資は、割に合わなさそうに見えます。
しかし実はこの投資こそが、生き残るために不可欠なのです。
この設備投資には次のような意味があります。
①必要な初期投資額が大きいことが、新規参入の障壁になる。
②ローテクな業界は零細企業がたくさんあり、それらの企業が出来ない投資を先行することで、品質・効率で圧倒的に優位に立つ

つまり積極的な設備投資をすることで、新規参入を抑えながら、業界内のシェアを高めていくことが出来るのです。
実際、いろんなローテク業界で、積極的に設備投資をする勝ち組と、徐々に売上を落とす負け組にハッキリ分かれてきています。
この傾向はますます強くなるはずです。

今後いろんなローテク業界で、業績が安定した、新たな勝ち組優良企業が出てくることになるでしょう。

バニラ・エアで起きた 「地獄絵巻」

バニラ・エアで起きた 「地獄絵巻」

 

バニラ・エアに関するニュースに驚きました。
半身不随の男性が搭乗する際、会社側の規則を守るため、階段に座った状態で、腕を使って独力で登った、ということです。
周囲の状況を含め、「地獄絵巻」です。

もともと自力で昇降できない人は搭乗できない規則があった
車いすごと抱えて登ってはいけない規則があった
両脇を抱えて登るのも危険なので禁止する規則があった
それらの規則をみんなが守った。
その結果が、「地獄絵巻」。

問題は規則が良かった悪かったではなく、その場で誰も手を出さなかった(出せなかった)こと。
小さな空港、小さな飛行機の話なので、たくさんの人が周りにいたわけではないでしょう。
しかし数人は取り囲んでいました。
その中を、一人階段をよじ登っていく男性。
その姿を目の当たりにしても、手を差し伸べることが出来ない人たち。
こんな国が他にあるでしょうか。
「お・も・て・な・し」 なんて恥ずかしくて世界に向かって叫べません。

以前、スターバックスジャパンの元社長の講演を聴いたことがあります。
スタバの「ミッション経営」は有名です。
「人々の心を豊かで活力あるものにするために
ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
大切なことは、このミッションはすべての規則に優越・優先するのです。
スタバにも規則はたくさんあります。
しかし、困っているお客を前にしたら、社員は自分の判断で一時的に規則を破って、お客のためになることをして良いのです。
それが「ミッション」です。

バニラ・エアの件は、バニラ・エアだけで起きることではないでしょう。
どんな規則に縛られていても、逆に素晴らしい「ミッション」がなくても、今回のような状況を目の当たりにしたら、迷わず近寄って手を差し伸べる。
そんな社員を育てていかなければいけないと強く感じました。

相変わらず好調、「ドン・キホーテ」②

相変わらず好調、「ドン・キホーテ」

 

ドン・キホーテのすごいところは、
「なんてことない日用品の買い物をレジャーにしてくれる」
ことではないでしょうか。

例えば、お風呂場で頭を洗っていて、シャンプーが残りわずかなことに気づく。
「あぁ、もうなくなったかー。
面倒くさいけど明日会社の帰りに忘れずに買いに行かなきゃ」
となります。
日頃使う消耗品が切れて、それを補充することは、面倒以外の何物でもありません

しかし近くにドンキがあれば、
「シャンプー切れたし、トイレットペーパーも買っときたいから、メシのあとドンキに行かない ? 」
となります。
夫婦で夜中ドンキをぶらぶら。
シャンプーとトイレットペーパーの補充が、平日の夜中のちょっとしたレジャーになるのです。

考えてみれば昔から、ホームセンターやディスカウントストアにもこの種の「レジャーの芽」はありました。
お目当てのモノを探して店内をぶらぶら、そこで何か面白いモノを見つけたり。
それを品ぞろえ・圧縮陳列・深夜営業で見事にデフォルメしたのがドン・キホーテではないでしょうか。

最近話題になったアマゾンの「ダッシュ・ボタン」。
日用品の横に貼ったボタンを押すだけで補充品が配達されてくるやつです。
これは面倒くさいことを解消するためのものです。
ドンキはもっと上を行っています。
面倒くさいことをレジャーにまで押し上げてくれるのです。

アサヒHDの東欧ビール事業買収、で心配なこと

アサヒHDの東欧ビール事業買収、で心配なこと

 

アサヒグループホールディングスが、東欧5カ国のビール事業を8,880億円で買収する、と発表しました。
5カ国は、チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア。
売主は、ビール世界最大手の、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)。
「バドワイザー」を生んだアンハイザー・ブッシュ(米国)を、2008年にベルギーのインベブが買収してできた会社です。

ネットニュースによると、今回の買収の背景には、売り手側の独禁法絡みの事情もあるようです。
その売り手側の事情に、アサヒが乗っかった感じでしょうか。
国内のビール市場が伸びない中、海外での成長を目論むアサヒにとっては、「渡りに船」だったのかも知れません。

この買収に、少し心配なことがあります。
「買収に8,800億かかる」とか、「本当に儲かるのか」とか、そういうことではありません。
ビールの本場の国々で、日本企業がビール事業を支配してよいのか、という懸念です。
買収先の中には、世界最初のピルスナービール、チェコの「ピルスナー・ウルケル」も含まれています。
それらの国で、もしビールが「食文化」の一部に位置付けられるようなものであるなら、それは永い時間をかけて、土地に、人に根付いたものです。
日本企業がそれを支配することは、好ましいことには思えません。
「食文化」をある程度共有してきた欧米の会社が買収するのとも、少し意味が違うような気がします。

このような企業や事業の買収においては、それが「工業製品」なのか「文化」なのかが大切な判断基準になるのではないでしょうか
「工業製品」ならOK、「文化」ならNG。
他国の神社仏閣、お城には手を出してはいけないのです。
日本企業がかつて買収した「ロックフェラービル」もアメリカの「文化」だったのです。

相変わらず好調、「ドン・キホーテ」➀

相変わらず好調、「ドン・キホーテ」

 

相変わらず、ドン・キホーテが好調です。
2017年6月期も過去最高益になる見込み、これで28期連続増益です。

ドン・キホーテには、ちょっとした思い出があります。
十数年前に、本社の部長さんとお会いしたことがあります。
用件は、私たちの会社の新業態を、ドンキ内にテナント出店できないか打診したのです。
その業態は当時まだ一般的でなかった「ジュエリーのリサイクルショップ」。
始めて1年、まだ2店舗しかない状況で、3店舗目をドンキ内に出そうとしたのです。
そんな実績もない店の話を、部長さんは丁寧に聞いてくださいました

同時に、ドンキのテナント集めの考え方なども教えていただきました。
それはこんな話でした。
「ドンキは、常に他のSC(ショッピングセンター)との差別化を考えている。
テナント集めも、大手SCの「逆」を行く
だから大手SCに入っているようなテナントは入れない。
だから大手SCに出店していないお宅には興味がある。」

当時、大手SCのリーシング担当者ともよく会っていたのですが、どのデベロッパーも同じようなテナントを欲しがるのに辟易していました。
それだけに部長から聞いたドンキの「逆張り戦略」は、とても痛快で鮮烈なものでした
結局出店には至らなかったのですが、私はそれ以来ドンキのファンになりました。

あれから十数年が経ち、大手SCが苦戦する中、ドンキは躍進を続けています。
これは、当時私が聞いた部長の話とつながっているのではないでしょうか。