TSUTAYA、目標売上が取れる店と取れない店

レンタルビデオとスマホが取り合う「時間」

 

「レンタルビデオ店で、目標売上が取れる店と取れない店の違いは何か」

この質問を、例えば大学生にしてみると、
「品揃えじゃないですか」
と返ってきます。
しかしTSUTAYAなどでは、揃えるべき作品はすべて本部が決めるので、どの店も違いはありません。

「商圏の良し悪しではないですか」
それは、出店検討の段階でTSUTAYA本部が入念に商圏調査をしているので、売上の目標はそれに合わせたものになっています。
1,500店近い店舗網をもつTSUTAYAの商圏調査は国内トップクラスの精度があります。

「スタッフの接客ですか」
確かにそれもある程度売上に影響するでしょう。
しかし決定的な要因にはなりません。

答えは、「オペレーション力」です。
具体的には、返却されたビデオをどれだけ早く処理して棚に戻すか、です。
「そんな当たり前のことか」と軽く考えてはいけません。
例えば、レンタルで一日50万円の売上を取る店舗では、一日何本のビデオが貸し出されるか。
レンタル単価を1本350円とすると、1,428本です。
毎日1,428本貸し出すということは、毎日1,428本返ってくるということ。
つまり毎日1,428本の返却処理をして、棚に戻す作業が発生するのです。

棚に戻さなければ、次の売上は立ちません。
お客が借りたいと思う作品があっても、棚になければ(貸出中であれば)、借りることはできません。
ですから、この返却処理を2時間で出来る店と、半日かかってしまう店では、まったく違う売上になってしまうのです。
機会損失の違いと言ってもいいでしょう。

これはレンタルビデオ店に限ったことではありません。
他の小売店でも、いくらバイヤーがいい商品をセレクトしても、店舗スタッフがタイムリーに商品を店に出さなければ売上は立ちません
お客がバックヤードの段ボールの中を探してくれはしないのです。

売上が思ったように上がらない店は、まずオペレーション力をチェックする必要があります。

「米トイザラス、破産申請を検討」で再認識すること

 

米国のトイザラスが破産申請を検討しているとのこと。

1991年、トイザらスが日本に上陸してきた時のことを鮮明に覚えています。
それは、流通の「黒船来航」という騒ぎだったからです。
当時のトイザらスに関して、2つのキーワードがありました。
「大店法」「カテゴリーキラー」です。

1991年当時は、まだ現在の「大店立地法(大規模小売店舗立地法)」はなく、「大店法(大規模小売店舗法)」の時代でした。
大店法は一言で言えば、大きな商業施設の出店を規制するものでした。
地元の商店を守るために。
日本でのトイザらスの店舗展開は、先陣を切って大店法に切り込む戦いでもありました。
2000年に、大きな商業施設を実質的に容認する「大店立地法」が施行され、大店法は廃止されました。
その後は、トイザらスと比べ物にならない大きなショッピングモールが全国に次々とつくられました。
今考えれば、この日本の流通業の大きな転換点をつくったのがトイザらスでした。

トイザらスは「カテゴリーキラー」という考え方も日本に持ち込みました。
「おもちゃ」という単一カテゴリーで大きな店をつくる。
人口50万以上の市の郊外、幹線道路沿いの大きな敷地に、大きな店舗と大きな駐車場をつくる。
大きな店舗と駐車場には、広い商圏から集客する吸引力がある。
そして商圏内の同業者から根こそぎ客を奪う、という考え方です。

あれから四半世紀、日本の流通に大きなインパクトを与えた「トイザらス」が、新しい潮流に飲み込まれる立場になりました。
どの時代も、その時に新しく起きたことが永遠に続くように思いこんでしまいます。
しかしトイザらスの記事を読んで、「永遠はない」ことを再認識しました。
今の新しい潮流「ネットショップ」も、例外ではないのです。

考える現場、考えない現場

 

工場にしろ、店舗にしろ、現場の人が考えて行動することは、当然悪いことではありません。
「考える現場」と「考えない現場」のどちらが好ましいかと問われたら、誰でも「考える現場」と答えるでしょう。
しかし、この問いについては、もう少し深く考える必要があります。
「考えない現場」の方が儲かるケースがあるからです。

モノづくりで利益を出す一番オーソドックスな方法は、同じモノを作り続けることです。
三角の製品を作った後に四角を作り、丸を作って、また四角、という作り方では効率は上がりません。
三角をずっと作り続ける方が、はるかに効率が上がり、儲かる仕事になるのです。
この「三角を作り続けている」状態では、現場はほとんど何も考えていません
考えなくても体が自然に、スピーディーに動いている状態。
これが一番儲かる状態です。
一個一個考えながら作るようでは儲かりません。

私たちが考えるべきは、三角・四角・丸の製品の製造計画をどう工夫して、同じ製品を作り続ける状態に持ち込むか、です。
これを私は、「得意パターンに持ち込む」と言います。

これは製造業に限らず、小売業やサービス業にも当てはまります。
小売店で、あるアイテムを大量に売りさばきたい時、得意なセール方法があればそれに乗っければよいでしょう。
スタッフも一回ずつセール方法を考える必要はありません。
何度もやっている「得意パターン」なので、考えなくても精度の高い準備が出来ます。
肉屋で売れ残りそうな牛肉を、「手作りハンバーグ」に変える得意パターンがあれば、その都度その都度、在庫処分に考え悩む必要はないでしょう。

「考えない現場=儲かる現場」は自社の得意パターンです。
得意パターンをつくるために、考えるのです。