非日常の「コト消費」、イベントが大切な理由

非日常の「コト消費」、イベントが大切な理由

年をとって気づいたことがいくつかあります。

その一つが、「家族旅行」などのイベント、つまり非日常の「コト消費」の大切さです。
なぜ大切なのか。
それは悲しいかな、「家族旅行」などのイベント以外は、昔のことが思い出せないからです。

生活の大半を占める日常は、間違いなく貴重なものです。
しかし50代になった今、20代・30代の頃の日常生活での出来事を思い出そうとしても、曖昧な記憶しか浮かんできません。
ましてや家族全員で共有できる「日常」の記憶・思い出はほとんどないでしょう
2、30年後に家族で一緒に話せる話題は、旅行や海水浴、結婚式・お葬式など、「非日常」のイベントばかり。
結局、「日常」の記憶は日常の中に埋もれてしまい、「非日常」の記憶だけが日付入りの「思い出」として残るのです。

そう考えると家族のイベントは、「その時に家族で楽しむこと」であると同時に、「家族で共有する思い出をつくること」でもあるんですね。
「思い出」はプライスレスです。

このイベントの効用は、家族間だけではありません。
親しい友人との間や、会社でも使えます。
その意味で会社のイベントの意義を見直してみるのも良いかも知れません。
数年に一度、全社イベントがあれば、それは全社員が共有できる記憶になるでしょう。
「あの時自分はこうだった。みんなはこうだった」
と思い出せる記憶です。
そんなイベントが数年ごとにあれば、その記憶は社員たちの記憶の中に「飛び石」のように残っていくでしょう。
それは何十年も続く長い会社員生活の「マイルストーン」になるかも知れません

家族でも会社でも、イベントを上手に活用したいものです。

「モノ消費からコト消費へ」、は間違っている

「モノ消費からコト消費へ」、は間違っている

 

最近のマーケティングで前提になっているのは、消費者の志向が、「モノ消費からコト消費へ」移行したという考え方です。
欲しいモノはほぼ手に入れた消費者は、モノよりもコト(体験)に重きを置くようになった、と。

確かにこの5年くらいは、アパレルなど小売業が大苦戦する一方で、音楽ライブや野球観戦のマーケットは急拡大しています。
音楽ライブのマーケット規模は2016年で3370億、過去5年間で2倍に急成長しています。
CDなど音楽ソフトのマーケット規模が同期間に13%縮小していることを考えれば、確かに「モノ消費からコト消費へ」移行しているように見えます。

野球観戦もそうです。
2016年のセ・パ両リーグの入場者数は2,298万人、5年間で6.5%増、10年間で12.6%増と、各球場盛り上がっています。

しかしこれらが「モノ消費からコト消費へ」移行したためとは思えません。
なぜか。
それは単純に、人間がたった5年間で性質が大きく変わるとは思えないからです。
これらはただ単にインターネット、スマホの浸透のせいでしょう。
インターネット普及から20年、スマホの普及から10年、この間にとにかく「チケット」が予約しやすくなりました
どのアーチストがいつどこでライブをするのか、その空席状況も簡単に分かります。
分かればその場で購入できます。
この今では当たり前のことが、20年前には非常に難しいことでした。

「コト消費」が増えているのは、ただそれだけのことではないでしょうか。
スマホが20年前に登場していたら、コト消費もそれだけ前倒しに増えていたでしょう。
決して消費者の志向が「モノ消費からコト消費に」移行したわけではありません。
もし消費者に金銭的余裕がもっとあれば、コト消費をした上にモノ消費もするでしょう。
所得が増えない状況で、コト消費の増加がモノ消費を押し出している、というのが現実ではないでしょうか。

繰り返しますが、消費者の志向・性質が変わったわけではありません。
今後モノ消費が盛り上がる可能性も当たり前にあります。