中小企業の利益の出し方

中小企業の利益の出し方

中小企業と大企業とでは、「利益の出し方」が違います。

大企業は、「人・モノ・カネ」の経営資源すべてに十分な投資をして、圧倒的な付加価値を生み出し、それが利益となって残ります。
中小企業はそんなマネはできません。
「モノ・カネ」が十分に無いからです。
というか、「モノ・カネ」が無い会社のことを、「中小企業」と呼ぶのです。

では、「人」はどうか。
これも新卒採用で言えば圧倒的に大企業に負けてしまいます。
給与水準も、福利厚生も、親族へのウケも大企業の方が良いでしょう。
よっぽどの変わり者の新卒者でない限り、大企業を志望するでしょう。
中小企業に、キラッキラな新卒が入ってくることは、まずありません。
(あくまで仕事の遂行能力の話であり、人間力・人間性の話ではありません)

それでも毎年安定的に利益を出す中小企業はたくさんあります。
ということは、そういう会社では、キラッキラではなかった新入社員たちが、何年かかけて成長して、高い付加価値を生み出しているのです。
(大企業に比べて)安い給料の社員たちが、高い付加価値を生む。
これこそが、「中小企業の利益の上げ方」です。

ですから、中小企業では「人」について無いものねだりをしてはいけません
もし高い給料を出して、キラッキラな人材をたくさん抱えても、それを生かす土壌(モノ・カネ)が無ければ、すぐに経営は立ち行かなくなるでしょう。

少し出来の悪い社員がいても、さじを投げてはいけません
そんな子たちは、考えようによっては、「伸びしろ」のある子たちです。
その分だけ会社の利益にも「伸びしろ」がある、と考えましょう。

中小企業は、「CFO(最高財務責任者)」をチョイ借りする

 

上場企業には必ずCFO(最高財務責任者)がいます。
CEO、COOと共に経営を担う、重要なポストです。
それぞれの役割は、
CEO (最高経営責任者) ・・・ 経営戦略立案
COO (最高執行責任者) ・・・ 事業戦略の立案と実行
CFO (最高財務責任者) ・・・ 経営検証、財務戦略の立案と実行
プラン(CEO) → ドゥ(COO) → チェック(CFO) → プラン
のサイクルを回すためにも、それぞれの機能が必要です。

一方、中小企業では、社長や常務が実質的にCEOとCOOとなっています。
しかし、CFOはいません。
経営戦略を立てる人、それを実行する人はいるのですが、検証する人がいないのです。
上場企業・大企業と中小企業の経営体制を比べたとき、最大の違いが、この点にあるのではないでしょうか。
プラン → ドゥ の後のチェックが十分になされない。
十分にチェックされないまま、次のプラン → ドゥ。
とにかく一所懸命、プラン → ドゥ。
ちゃんと検証できる、それをしっかり主張できるCFOがいたら、余計なプラン → ドゥを繰り返さなくて済みます。

とは言え、規模が小さい中小企業では、役員レベルでCFOを抱えることは難しいでしょう。
また逆に、CFOが常勤するほど、財務の仕事量は多くないでしょう。
そこで、おすすめしたいのは、CFOのシェアです。
今後は「働き方改革」で社員の副業が当たり前になります。
中堅以上の会社で財務を担当している社員・役員をチョイ借りするのです。
今はまだ一般的ではありませんが、あと2、3年もすれば人材のシェアは当たり前になります。
CFOは難しい仕事ではありませんが、専門性が必要です。
今バリバリやっている人をチョイ借りするのが最も確かで、最も安上がりです。
今のうちに取引先や知り合いの会社でCFO候補を物色しておくといいでしょう。

CEOとCOOは自前、CFOは借り物、が中小企業に合っています。

中小企業の「実践的」財務分析 ②

中小企業の「実践的」財務分析

 

財務分析は、会社の「健康診断」です。

私たちが毎年受診する健康診断では、受診後に「結果表」が送られてきます。
その結果表には、検査項目ごとに自分の数値と、判定結果が記載されています。
白血球数 54.4      判定A (基準値32〜86)
中性脂肪 230  判定E (基準値30〜149)
γ-GDP         22       判定A (基準値0〜50)
などなど。
私もそうですが、結果表が届くと、このABCDE判定に一喜一憂します。
昔、夏休み前に通知表が配られ、そっと開いたときと同じように。

しかし、この判定は必ずしも正しいものではありません。
正しいのは「中性脂肪230」という数値であって、それが本当に「E」と判定されるほど悪い状態なのかどうかは分かりません。
人それぞれ個人差と個性があります。
基準値・平均値から離れていても、その人にとっては必ずしも異常値ではないかも知れません。
尿酸値がずっと9.0以上あっても、まったく痛風を発症しない人がいます。
逆に基準値内でも、発症する人もいます。

ですから、「判定」は参考程度にしておいて、注視しなければいけないのは、数値がどう変化しているかです。
それぞれの数値がいい方向に動いているのか、良くない方向に動いているのか。
「中性脂肪」は去年179だったから、悪い方に行ってるな。
最近、食生活が荒れているからかな。
酒を減らして、もっと野菜とらなきゃ。

大切なのは数値の変化をウォッチすること。
そしてその変化の原因を見つけ改善のアクションを起こすことです。
中小企業の「財務分析」もまったく同じなのです。

中小企業の「実践的」財務分析 ①

中小企業の「実践的」財務分析

 

「財務分析」と聞くと、貸借対照表や損益計算書の数字から、「自己資本比率」や「流動比率」を算出することをイメージします。
しかし、それは中小企業にとっては、「学問的」な財務分析です。
中小企業では、「学問的」財務分析の前に、「実践的」財務分析をしなくてはいけません。

中小企業の「実践的」財務分析は、貸借対照表や損益計算書を、時系列に並べることから始めます。
並べた数字をじっと眺め、科目ごとに増減をチェックします。
どの科目が増えて、どの科目が減っているか。
数字の並びを穴が開くくらい見るのです。
そうやって、数字の変化から会社の状態を読み解きます。

例えば、損益計算書を5年分並べる。
エクセル上に並べた数字を眺めて、増減している科目を探す。
「売上」は毎年着実に上がってる、4年連続増収だ。
「外注費」は3年前まで増加傾向だったのに、それ以降は減ってきている。
「広告宣伝費」は2年前から急増している。

増減している科目を見つけたら、その変化はなぜ起きたのかを考えます
さらにじっと数字を眺めながら考えるのです。
「売上」が増えたのはネット販売が増えた分だな、店の売上はそんなに増えていないから。
「外注費」は、売上が増えればそれにつれて増えるものだけど、3年前から内製化を進めたからこの動きになっているんだな。
「広告宣伝費」が急増したのは、間違いなくネット販売の「クリック広告」だ。
という感じです。

この「数字の変化」と「会社でやったこと・起きたこと」を一つずつ結びつける作業こそが、「実践的」財務分析です。
それを進めると、逆に「何をすれば、数字が変化するか」が明瞭になってきます。
何に取り組めば、数字が良くなるのか。
何をやめれば、数字が良くなるのか。
この財務分析は「会社のアクション」に直結しています。
だから「実践的」なのです。