スッキリしない仕事、それも「正解」

スッキリしない仕事、それも「正解」

 

会社も個人も一つ一つの仕事をスッキリ片づけて、ストレスなく仕事を進めていきたいものです。
しかしそうもいかないのが現実です。

私たちの取引先の中に、グルーバル展開している大手メーカーがあります。
数年前から部品加工を委託され、徐々に納品量も増えてきました。
下請け仕事ではありますが、単価も悪くありません。
ただ、仕事量の変動が大きく、月によって売上も大きく上下します。

この仕事で利益を出すために、私たちは仕事量を平準化します。
仕事量の少ない月には、来月の仕事を先食いして製造するのです。
半年先までの仕事内容は分かっているので、それを前倒しにして、製造現場をフル稼働させるわけです。

しかし先方はあくまで「ジャストインタイム」
「必要な時に必要なだけ」の在庫しか抱えません。
私たちが前倒しで作った部品は、納品させてもらえないのです。

先方は「ジャストインタイム」、こちらは「仕事の平準化」。
相容れないテーマです。
そこで毎月のように先方と交渉することになります
「今月の売上は少ないから、完成している来月分も一部納品させてちょうだい」
「来月は工数が余る(手が余る)から、別の仕事もちょうだい」

こちらの担当者は毎月毎月のことで、先方と交渉するのに辟易としています。
担当者は社内で、
「先方の言う通りに納品しましょう。
毎月毎月交渉したくない。
毎月ゴタゴタすることなく、スッキリ仕事をすすめましょう
と主張します。
しかしそれは認めません。
相容れない利害関係を抱えて取引を続けていくためには、毎月「押し問答」が必要なのです。
「押し問答」がなくなったら、向こうの「押し」がさらに強くなります。
スッキリする必要はありません。
時と場合によっては、スッキリしない仕事も「正解」なのです。

仕事の「上流」と「下流」

仕事の「上流」と「下流」

 

私たちの会社の工場は、すべての製品がお客のオーダーを受けて作り始める、受注生産工場です。
設計 → 成型(切ったり曲げたり) → 製缶(溶接でくっつける)
→ 組立(最終製品の形に組みつける) → 塗装 → 出荷
と流れます。

この上流から下流に流れる受注生産ラインには、リスクがあります
それは上流の仕事が停滞すると、下流がすべて「待ち」になるということです。
例えば、、
設計が止まると、その下流の60名が「待ち」になります。
成型が止まると、その下流の50名が「待ち」になります。
製缶が止まると、その下流の40名が「待ち」になります。
組立が止まると、その下流の25名が「待ち」になります。
こんな感じで止まる場所が上流であればあるほど、「待ち」になる人数が増えます。
その分、会社の機会損失が増えるのです。

こういう状況は工場に限ったことではありません。
事務所の中でも起こります。
例えば、毎朝、前日の営業成績が本部からメールで配信されるとします。
大切な速報数字なので、営業担当者は外出前に確認したいと考えています。
しかし発信する本部担当者が自分の業務の都合で、9時に送ったり9時半に送ったり、たまに10時になってしまったり。
それでは営業担当者に「待ち」が発生してしまいます。
これも会社の機会損失です。

自分の業務の後工程にどれだけの人がいるか、ということを意識して仕事をすることは非常に大切です。
上の例でも分かるように、上流が上司で下流が部下というわけではありません
ですから、若い社員にもこの大切さを理解させておく必要があります。
社員全員が自身の業務を、下流で人が待っているもの、待っていないものに選別して、優先順位をつけて仕事をする
社員全員にそれが定着すれば、会社全体の生産性はさらに高まるはずです。