すべて東京が最先端、というわけではない

すべて東京が最先端、というわけではない

二十年前は疑いもなく、日本国内の流行やトレンドはすべて東京でつくられる、と思っていました。
これから地方で起きることを予測するには、東京を見ておけばよい、
東京で起きたことが地方に広がっていくんだからと。

しかし、「人口減少」が日本の最重要課題の一つになった頃から、その考えは変わりました。
「人口減少」に関して言えば、東京から最も遠くの町が最先端を行っているからです。
東京は最後尾です。

例えば、首相のお膝元、山口県長門市の人口は、平成30年10月現在で33,570人。
これは
5年前(平成25年)の36,235人から7.3%減、
10年前(平成20年)の39,209人から14.3%減
に相当します。
人口総数が少ないので変動率が大きくなりやすいとはいえ、7年で1割の人がいなくなる、という空恐ろしい状況です。
隣接する萩市も同様ですから、本州最西端のこの辺りは、「人口減少」に関しては最先端の町かも知れません。

毎月、山口、兵庫、東京に滞在します。
これらの地域は、「人口減少」に関しては、三者三様です。
前述の通り、「人口減少」がハッキリ顕在化している山口、
今でも一貫して増え続ける東京、
過去10年以上、550万人前後で増えも減りもしない兵庫。
そんな増えも減りもしない兵庫が未来を予測するとき、見ておかなければいけないのは「東京」ではなく「山口」かも知れません。

その観点からすると、われわれ地方の中小企業は、これから日本で進む「人口減少」問題を真っ先に体験し、そこでのビジネスを模索することになります。
そのビジネスは、「東京」から学ぶことは出来ません。
地方の中小企業が自ら考え、自ら取り組むしかないのです。
考えようによっては、チャレンジャブルでやりがいのある仕事です。

山口県長門市にある「元乃隅稲成神社」は、2015年CNNが選んだ「日本で最も美しい場所31選」に入りました。
地元の人が見向きもしなかったこの神社は今、国内外の観光客でいっぱいです。

セブンイレブンが、若者の地方移住を促進する

地方移住

 

日本全国どこに行っても、老若男女すべての人が「そこそこ」オシャレになり、極端に田舎っぽい人はいなくなりました。
それは「ユニクロ」のおかげではないでしょうか。

私が高校生だった1980年代、都会と地方のファッション感度には大きな開きがありました。
高校3年の冬、私立大学の受験で初めて一人で神戸に行った時のこと。
受験に来ている関西の女子高生たちを見て、地元広島の同級生とのあまりの違いに衝撃を受けました。
ゆるく巻いた長い髪にコンサバ系ファッション、都会の女子高生はこちらが気後れするほど、大人っぽくてきれいでした。
それまで、女子高生は「聖子ちゃんカット」で「スケバンロングスカート」を履くものと思っていた私は、その時初めて都会と地方の「格差」を強く認識しました。
(もちろん、自分たち男子の方がもっと格差があったと思いますが)

しかし、今の高校生はそんな経験をすることはないでしょう。
今は都会と地方で、そこまでの格差はありません。
全国津々浦々のロードサイドに「ユニクロ」が出来てからは、ユニクロに行きさえすれば、若者からお年寄りまですべての人が、「そこそこ」オシャレで間違いのない服を着られるようになったのですから。
ユニクロが地方のファッション感度を底上げしたのです。

同じことが「食」の世界でも起きています。
全国津々浦々にセブンイレブンが出店し、そこに行きさえすれば、「そこそこ」美味しくて間違いのないスイーツを買えるようになりました。
セブンが地方のスイーツレベルを底上げしたのです。

ユニクロやセブンイレブン、しまむら、マクドナルド、スシロー、牛角、王将など、全国チェーンの店舗のおかげで、私たち消費者は全国どこに住んでも、「そこそこ」の「衣食」を揃えることができるようになりました。
この「そこそこ」は、非常に重要です。
「そこそこ」の生活が確保できるなら、「住んでもいい」と思えるからです。
「そこそこ」の生活が確保できるなら、その上に望むものは人それぞれです。
もっとスペシャルなファッションやスイーツがある都会での生活を望む人もいれば、自然に囲まれて暮らしたい人、農業にチャレンジしたい人、子供を静かな環境で育てたい人、安くゴルフできる地域に住みたい人、生まれ育った地方に帰りたい人などなど、必ずしも都会に住みたい人ばかりではありません。
かといって、いくら農業がしたい、自然に囲まれて暮らしたいという人でも、今さらポットン便所での生活はしたくないでしょう。
田舎暮らしでも「そこそこ」は譲れないのです。

全国津々浦々まで「そこそこ」の生活が保証された今、若者が自分のスペシャルを求めて地方移住するケースが増えることも十分考えられます。

地方の工業団地に異変

地方の工業団地に異変

 

最近私たちの会社がある、地方の工業団地に異変が起きています。
長い間売れずに残っていた区画に、この2年で次々と有力企業の進出が決まっているのです。
しかも今最も注目されている製薬会社や医療機器製造会社など、超優良企業が進出を決定しています。

25年前に整備公団が分譲開始した50区画は、つい3年前までかなりの数が売れ残っていました
それが現在は完売状態です。

なぜ急に売れ始めたのか。
東日本大震災以来高まっている、自然災害に対する「備えの意識」から、大企業が工場の地方分散に動いているのか。
それとも景気回復に乗って、スマート工場の新設をしているのか。
それともこのエリアの評判が、急によくなったのか。

先日、市の産業立地担当者と会う機会があったので、事情を訊いてみました。
確かに有力企業の国内新工場への投資意欲は高まっているとのこと。
ただ売れている最大の理由は「市が必死に売っているから」だそう。

3年前、公団から売れ残り区画をすべて買い上げ、市が直接販売する形に切り替えたとのこと。
県の東京事務所・大阪事務所の駐在員と連携、有力企業に直接誘致活動を仕掛け、企業からの要望を聞きながら経済条件を柔軟に緩和しているそうです。
例えば、
土地代金の4割を補助
土地取得税免除
建設する建物の取得税も免除
工場稼働開始から3年間固定資産税も免除
その他、雇用にも助成金
といった感じで、何かの「特区」ではないかというような優遇です。

有力企業を誘致して、若い人たちの流出を防ぐ、同時に都会からの人口流入を促す。
地方の県や市ができる人口減対策は、企業誘致以外にないのです。
定価で買った私たちからすると複雑ではありますが、それでも有力企業が進出してくることは、地域にとっても私たちにとっても喜ばしいことです。

市担当者曰く、次の工業団地用地を物色中とのこと。
待ったなしの人口減問題、地方自治体は本気で必死です。