儲からない売上

 

以前、アイスクリームブランドの立ち上げに携わっていた時の話です。

東京に1号店を出店し、半年後には都内の商業施設に2号店を出しました。
2年目には大手百貨店から、「お中元カタログ」への掲載を提案されました。
私はその提案にすぐ乗っかりました。
というのも、実は1号店、2号店の売上が計画の半分もいかない状況で、売上がほしくてしょうがない状況だったのです。
とにかく売上がほしい、どんな売上でもいいからほしい。

6月に入り、百貨店の中元がスタート。
産地直送形式なので、商品はアイスクリーム店から直接発送します。
百貨店からアイスクリーム店舗には、記入済みのヤマトの発送伝票が送られてきます。
中旬になり、伝票が日に2、3枚来るようになりました。
初めて掲載したのに、結構買ってくれる人がいるんだなと喜んでいました。
下旬になり、伝票は日に50枚になり、100枚になり、200枚になりました。

慌てました。
1セットが、カップアイス12個入りで5,000円。
12個のうち4個はパティシエメイドの手が込んだアイスになっています。
それなりの在庫はストックしていたのですが、このまま増えて行けば絶対に足りなくなる。
百貨店のギフトだけに、「足りない、送れない」は絶対許されません。
パティシエたちは毎日深夜までアイスを作りつづけました。

人海戦術でなんとかなるものは良いのですが、困ったのは在庫の保管場所です。
厨房の冷凍庫も店舗の冷凍庫もいっぱいになり、入れるところがありません。
それでも作り続けなければ品切れになる恐れがあります。
それで仕方なく、外部の冷凍倉庫に預けることにしました。
店舗スタッフが段ボールにカップアイスとドライアイスを詰め、冷凍運送業者に依頼して倉庫に搬入。

結局その夏、百貨店からもらった注文は1ヵ月半で、1,600セット、売上にして800万、通常の何倍もの売上が立ちました。
どれくらい利益が出るんだろう、期待しながら試算表を待ちました。
結果、損益はトントン、期待外れの数字でした。
百貨店の歩率は分かっていたことですが、人件費、倉庫代、運送費など、予想していなかった経費が大きく膨らんでしまったのです。
あの忙しさは何だったのか・・・。

この件で学んだことは、
➀モノを動かしたら儲からない
➁社外に仕事を出したら儲からない
ということ。
単価の安い商品を、「あっちに動かしこっちに動かし」してしまうと、すぐに儲からなくなってしまうのです。
製造や発送が増えることに伴う人件費増は、変動費として売上増で吸収されるので、問題ありません。
しかし冷凍倉庫代・往復の冷凍急便代、それにかかる人件費は、売上に対する変動費にはなりません
まったく余計な費用です

自社の物理的なキャパシティーを超える売上は、儲からない売上なのです。

日割り予算 ① 今日の売上は、今日しか取れない

日割り予算 ① 今日の売上は、今日しか取れない

 

店舗には毎日の売上目標があります。
「日割り予算」と呼ぶ会社もあるでしょう。
「日割り」というくらいですから、もともと月の予算があってそれを日数で割って、曜日などを加味して算出します。
店舗スタッフはこの「日割り予算」を達成するために、日々店頭を整え、接客に注力しています。
もし日割り予算がなく、月の予算だけだったら、日々の目標意識が希薄になってしまうでしょう。

ところで店舗は、当たり前ですが、今日の売上は今日しか取れません
「今日は売上が悪かったから、明日頑張って取り返します」
店長たちがよく口にする言葉です。
しかし明日頑張って取る売上は、「明日の売上」です。
「今日の売上」ではありません。
今日の売上は今日取るしかないのです。

例えば、今日朝から強い雨が降って、スーパーマーケットの客足が伸びないとします。
スーパーの店長は、今日来れなかったお客が、明日天気が回復したら来店してくれると期待します。
しかし実際には、お客はそのスーパーに行かなかった分、近くのコンビニに行ったり、雨でも濡れない大型スーパーに車で行ったりします。
もしくは、宅配ピザを頼んだり、家にあるもので簡単に済ませたり。
お客の選択肢が増えた近頃では、スーパーが期待するほど次の日に取り返すことは出来ないのです。

結局店舗は、その日その日で勝負をしているのです。
月で勝負をしているわけではありません。
月の売上実績は、日々の売上実績の合計に過ぎません。
ですから、店舗にとって「日割り予算」は大切です。
それだけに日割り予算は、店舗スタッフがチャレンジしがいのある適正なものでなくてはいけません。
実態を無視した高い「気合の目標」ではスタッフは萎えてしまいます。

売上を分解する

売上を分解する

 

よく使われる「売上の公式」
売上=客数×客単価
この式は、売上を上昇させる要素が2つあり、売上を上げるためには、「客数」を増やすか、「客単価」を上げる必要がある、ということを表しています。

この公式はもっと分解できます。
② 売上=客数×買上点数×物単価
これは①の「客単価」を「買上点数×物単価」に分解しています。
買上点数はお客一人当たりの平均購入点数です。
この式は、売上を上昇させる要素が3つあり、それらのどれかを上げる必要があることを表しています。

もっと分解できます。
③ 売上=入店客数×買上率×買上点数×物単価
これは②の「客数」を「入店客数×買上率」に分解しています。
買上率とは入店したお客の中で実際に買ったお客の割合です。
この式は、売上を上昇させる要素が4つあり、それらのどれかを上げる必要があることを表しています。

もっと分解できますが、やめておきます。
大切なことは、売上を分解して小さな要素にすれば、その要素に具体的な目標や対策を設定しやすくなるということです。
例えば漠然と「売上を上げる」よりも、
もっと具体的に、「客数を増やす」
さらに具体的に、「買上点数を増やす」
の方が対策を打ちやすくなるのです。