社員が一番怖れる言葉、「そろそろ課長になるか」

社員が一番怖れる言葉、「そろそろ課長になるか」

 

地方で製造業を営む私たちの会社では、上席からの「そろそろ課長になるか」という言葉は、社員が一番怖れる言葉です。
冗談のようですが、本当にそれくらい工場で働く社員は、役職者になりたがりません。

早い段階で相当な技術を身につけ、仕事の段取りもよく、周りからも一目置かれる若手のホープ。
そんなホープでさえ、人事面談で「製造課長」の役職の話をすると、表情が曇ります。
彼らの役職者になりたくない理由は、
➀ 部下をまとめたり、
➁ 現場でのトラブルに責任者として対応したり、
➂ 上層部と社員たちとの板挟みにあったり、
そんな「ややこしいこと」に巻き込まれたくないのです。

「出世なんか興味ない」
釣りバカ日誌のハマちゃんと同じです。
ハマちゃんは立身出世欲のない「稀有な存在」として描かれていますが、地方の工場ではごく普通です。
というか、ほとんどがハマちゃんです。

しかしこれは決して悪いことではありません。
みんな「モノづくり」は好きで、自分の技術を高めたいという思いはあります。
自分のところで製造が遅れないように、という責任感も十分あります。
それと出世欲がない分、ハマちゃん的な「人の良さ」があります。

とはいえ会社としては絶対に「課長」が必要です。
ですから、十年に一人くらい現れる「技術があって、会社の運営にも興味がある」、そんな貴重な人材を見逃してはいけません
地方の中小企業では、都会の会社や大企業のように役職者候補が並んで待ってはいないのです。

ローテク業界で生き残るために大切なこと

ローテク業界で生き残るために大切なこと

 

ローテク(Low Technology)業界で生き残るために一番大切なことは、
設備投資を惜しまないことです。

私たちの会社の工場はローテクを絵に描いたような工場です。
鉄やステンレスやアルミの板を、切ったり曲げたり引っ付けたり塗ったり。
製品は大きくて重たいものばかり
一番小さな製品でも軽く1トンはあります。

大きいものを作るために工場の天井高も高く、20メートル。
大きい鉄板、厚い鉄板を切るための超大型レーザー切断機。
長い鉄板を折り曲げるための超大型ベンダー(プレス)。
バカでかい塗装ブース。
大きな材料や完成品を置くための広い土地。

爆発的な売上を望めないローテクでこれだけの投資は、割に合わなさそうに見えます。
しかし実はこの投資こそが、生き残るために不可欠なのです。
この設備投資には次のような意味があります。
①必要な初期投資額が大きいことが、新規参入の障壁になる。
②ローテクな業界は零細企業がたくさんあり、それらの企業が出来ない投資を先行することで、品質・効率で圧倒的に優位に立つ

つまり積極的な設備投資をすることで、新規参入を抑えながら、業界内のシェアを高めていくことが出来るのです。
実際、いろんなローテク業界で、積極的に設備投資をする勝ち組と、徐々に売上を落とす負け組にハッキリ分かれてきています。
この傾向はますます強くなるはずです。

今後いろんなローテク業界で、業績が安定した、新たな勝ち組優良企業が出てくることになるでしょう。