日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

以前、「日本橋三越本店」の地下食品売り場に催事出店したときのこと。
一週間催事の初日開店前、バイヤーさんから印象的な話がありました。

「すべてのお客様に等しく丁寧に接客してください。
お客様の印象だけで接客を変えることが決してないように。」

このバイヤーさんの丁寧な言葉を言い替えると、
「絶対にお客さんを見た目で判断するな。
どこにどんなVIPがいるか分からないんだから。」
ということでしょう。

資産家が常にパリッとしたお仕立てスーツを着ている、とは限りません。
総菜売り場で100gを少しオーバーした分を減らせと言う客が、実はその百貨店で年に何百万も遣っている上顧客かもしれません。
見た目で判断することはできません。
ましてや、販売する側のこちらは「庶民」です。
お客を見た目でランク付けするなんて無理でしょう。
無理だから、リスクヘッジの意味でも、どのお客にも等しく丁寧に接客しなくてはならないのです。

小売やサービス業のスタッフに、「平等で丁寧な接客」を指導するとき、このバイヤーさんの話は有効です。
なぜすべてのお客様に等しく丁寧に接客しなくてはならないか、の理由付けになるからです。
スタッフの納得度が上がります。
国内トップクラスのVIPを数多く抱える「日本橋三越」のバイヤーの言葉だけに、使えます。

ネット販売にも、強力な「接客」がある

ネット販売にも、強力な「接客」がある
私が財務でお手伝いをしている会社の中に、ジュエリー(宝石)の加工販売会社があります。
その会社が5年前、ネット販売(EC)を始めました。
その会社の商品の価格帯は平均30万〜50ですので、ライトジュエリーと言われるものよりアッパーグレードになります。
 
私はそんな値段の商品を
①現物を見ないで
②インターネットで(店舗も見ないで)
買うかなー、と当初は懐疑的でした。
 
ジュエリーの伝統的な売り方は、ご存知の通り、ショーケースを挟んで対面販売するスタイルです。
店によっては、一度食らいついたら放さない凄腕店員さんがいたり。
良くも悪くも「接客で売る」のが一般的です。
その接客なしには数十万のジュエリーなんて売れないんじゃないか、と懸念したわけです。
 
結果、私の予測は外れ、そのECは現在月商数千万になり、会社全体の売上の半分以上を占めるようになりました。
「接客なしには数十万のジュエリーは売れないんじゃないか」
という私の懸念は、見事に外れました。
私の最大の間違いは、「接客なしに」の部分でした。
実は、ネット販売でもしっかり接客をするのです。
もちろんショーケースを挟んでではなく、メールを使ってです。
数十万のモノを買おうとするお客様は、さすがにホームページを見ただけで「購入ボタン」をポチッとは押しません。
やはりメールや電話で問い合わせをしてきます。
それに対してメールで応えるわけですが、購入までにお客と何度も「メールのキャッチボール」をします。
 
実はこの「メールのキャッチボール」は、強力な接客なのです。
実店舗で凄腕店員に強烈な接客を受けても、何とかその場を切り抜けて店を出さえすれば、その接客からは解放されます。
しかしメールでやり取りする場合は、お客からの質問にすぐに返答メールを送れば、ボールは常にお客側にあります
大げさな言い方をすれば、お客は24時間このボールを持たされるのです。
つまりお客は、このメールを使った「接客」の中に24時間いることになるのです。
 
もともとSNSなどのネットでのつながりは、実際に会うよりも、気軽なものであるはずでした。
しかし「既読スルー」で多くの事件が起きているように、大半の人がネットでの人間関係に縛られているのです。
 
メールを使ってのお客とのやり取りが、店舗での接客に比べて決して弱いものではないということは知っておく必要があります。