新しいチャレンジに、「障害」がつきまとう理由

 

何をやってもスッとは行きません。

新工場建設で基礎工事を始めたとたん、予期せぬ岩がゴロゴロ出てきたり。
ようやく決まった不動産売買の契約直前、なぜか持ち主のおばあちゃんの気が急に変わったり。
追加注文が来たと同時に、仕入先から材料の値上げ通告。
海外に雑貨を買い付けに行き、いいセレクトが出来たと思いきや、届いたときには半分近くが破損。
イベントの日に大雨。
などなど。

何かにチャレンジしたら、必ずそれを邪魔する「障害」が発生します。
簡単だと思った案件にも、用意周到に進めた案件にも。
小さな障害だったり、大きな障害だったり。
「なんて自分はツイていないんだ」
と嘆きたくなることもあります。
しかし、これは自分だけに起きていることではないでしょう。
障害は、「アクションを起こした」人に必ず、等しく起きるのです。

なぜチャレンジには、必ず障害が発生するのか。
シンプルに考えれば、事を起こす前にその障害発生を予測できなかったから
しかしこれだけ何をやっても障害が発生するということは、これもシンプルに考えれば、「障害の事前予測なんてできない」ということでしょう。
アクションを起こしてみないと分からないことが、たくさんあるのです。
つまり、「障害の発生」こそがアクションを起こした証なのです。

何かにチャレンジするとき、私たちは100メートル走やマラソンをイメージしてはいけません。
イメージするなら、何が出てくるか分からない「障害物競走」。
障害物をクリアすることこそが、タスクの「中心」です。

ところでこの「障害」は、悪いことばかりではありません。
それをクリアすれば、他社の参入障壁として機能するからです。
自社のチャレンジが成果を出し始めた頃、ライバル会社がそれを見てマネをしようとするかも知れません。
しかし大体において、ライバル会社には、こちらがクリアしてきた「障害」が見えていないものです。

新規事業は川べりで始める

新規事業は川べりで始める

 

新規事業にチャレンジするときには、
「自分のアイデアを世に出せば、お客が集まってくる」
と考えてしまいがちです。
それくらいの自信とヤル気と少々の勘違いが無ければ、新規事業の立ち上げは出来ないかも知れません。
しかし、それは
「世の中の流れがどうであろうと関係ない、流れは自分が作る」
と考えているのと同じです。
とてつもなく難しいことを自分に課してしまっているのです。
ただでさえ難しい新規事業の立ち上げを、さらに難しくするわけですから、成功確率はドンと下がってしまいます。

以前、アパレル大手W社の専務からアドバイスを受けたことがあります。
「商売するときは、川がどこを流れているかをよく見て、その川べりでせなあかん。
流れのないとこでは、何やっても、なんぼ頑張ってもムダや
当時絶好調だったW社でさえ、川を探して、川べりまで商品を持って行って、商売をしていたのです。
一番売れやすい場所を探し、売りやすい方法で売る。
自分が流れをつくる、なんて考えていません。
考えているのは、商売を出来るだけ簡単に、簡単に、簡単に

冒頭のように「お客が集まってくる」と考える人ほど、事業開始後の現実に慌てふためきます。
この慌てふためくことが、事業を迷走に向かわせます。
ですから、新規事業に取り組むときは、
「どんなにいいアイデア・いい商品であっても、世の中の人にはなかなか伝わらない
というところからシナリオを書くくらいでいいのではないでしょうか。
そうすれば、一番売りやすい場所、一番売りやすい方法をたくさん考えるようになるでしょう。
「最初の2、3か月はほとんど売上は見込めない」
そう考えていれば、事業開始後しばらく売上が立たなくても、迷走することはないでしょう。

考えてみれば、本当に優れたアイデア・優れた商品であれば、あとはお客にアプローチするだけのはず。
お客が集まるのを待つまでもなく、こちらから持って行けば良いのです。
お客に知ってもらい、手に取ってもらい、体験してもらう仕組みを地道に構築していけば、着実に売上は上がります。
慌てる必要はありません。

繰り返しになりますが、
アイデア・商品に対する過度の自信 → お客が集まるという妄想 → 現実は売れず → 焦り → アイデア・商品への自信喪失 → 迷走
という「負の連鎖」に陥ってはいけません。