日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

以前、「日本橋三越本店」の地下食品売り場に催事出店したときのこと。
一週間催事の初日開店前、バイヤーさんから印象的な話がありました。

「すべてのお客様に等しく丁寧に接客してください。
お客様の印象だけで接客を変えることが決してないように。」

このバイヤーさんの丁寧な言葉を言い替えると、
「絶対にお客さんを見た目で判断するな。
どこにどんなVIPがいるか分からないんだから。」
ということでしょう。

資産家が常にパリッとしたお仕立てスーツを着ている、とは限りません。
総菜売り場で100gを少しオーバーした分を減らせと言う客が、実はその百貨店で年に何百万も遣っている上顧客かもしれません。
見た目で判断することはできません。
ましてや、販売する側のこちらは「庶民」です。
お客を見た目でランク付けするなんて無理でしょう。
無理だから、リスクヘッジの意味でも、どのお客にも等しく丁寧に接客しなくてはならないのです。

小売やサービス業のスタッフに、「平等で丁寧な接客」を指導するとき、このバイヤーさんの話は有効です。
なぜすべてのお客様に等しく丁寧に接客しなくてはならないか、の理由付けになるからです。
スタッフの納得度が上がります。
国内トップクラスのVIPを数多く抱える「日本橋三越」のバイヤーの言葉だけに、使えます。

百貨店退店の跡に誘致すべきもの

百貨店退店の跡に誘致すべきもの

百貨店退店の跡に誘致すべきもの、それはイオンではなく「会社(オフィス)」です。

関西の自宅のすぐそばにある百貨店が、再来月8月に閉店します。
バブル直前の平成元年、市のニュータウン開発の計画に沿って、その中心駅に出店した百貨店。
あれから30年あまり。
「企業の寿命30年説」というのがありますが、この30年は企業よりも「流通」の世界の方が環境が激変しているように思えます。

百貨店が退店に追い込まれた理由、これは誰でもすぐに挙げることができるでしょう。
イオンモールの全国展開
ニュータウンの高齢化
若者のブランド離れ
ネット通販の台頭
などなどなど。

百貨店が閉まると、地元では必ず次の商業施設を待ち望む声が上がります。
これを好機ととらえ、もっと魅力のある商業施設を誘致したいと。
百貨店が退店に追い込まれる理由をいくつも挙げておきながら、その一方で次の商業施設を待ち望む。
矛盾しています。
個人消費が枯れた場所では業態を変えたところで、いい結果はまず出ないでしょう。

百貨店が退店した後に誘致すべきは、「会社」と考えます。
百貨店の地下と1階は比較的健在ですから、それは残し、2階以上をオフィスにする。
つまり、「消費する場」を「働く場」に変えるのです。

「個人の支出」と「会社の支出」は、仕組みが違います。
会社はまず「支出」をしてから稼ぎます。
逆に、個人はまず稼いでから「支出」します。
ですから個人消費が枯れているなら、まず稼ぐ場所を与えるべきでしょう。

何も大きな会社を誘致する必要はありません。
郊外の百貨店の周りはすべて住宅地です。
百貨店跡がオフィスになれば、そのまま「職住近接」です。
新型コロナ禍を経験し、その後の「ニューノーマル」を模索する過程で、リモート、サテライトオフィス、コワーキングスペースなど、「職住近接」の需要は高まるでしょう。

「働く場」が充実し、そこに人が行き来するようになる。
「消費の場」が必要になってくるのはそれからです。