グラビアを見るように、「貸借対照表」を見る

グラビアを見るように「貸借対照表」を見る

財務諸表に精通していない人が「貸借対照表」を見ても、それは機械的に数字を並べた紙(シート)にしか見えないでしょう。
左右それぞれの合計が均衡した、文字通りのバランスシートに。

しかし財務担当者は違います。
財務担当者は、新聞を読むように「貸借対照表」を読みます
その中には会社の現在の「強み・弱み」だけじゃなく、「創業以来の歴史」や「経営方針」などいろんな情報が詰まっているからです。
じっくり読みたいと思ったら一時間でも二時間でも眺めていられます。
財務担当者にとって貸借対照表は、機械的に並べた数字の羅列ではないのです。

また、財務担当者は、グラビアを見るように「貸借対照表」を見ることが出来ます
科目一つひとつの数字の大小や、科目同士の関係が、その会社の特徴を立体的に見せてくれるからです。
少し下品な言い方ですが、いい会社の貸借対照表は、「ボン・キュッ・ボン」に見えます。
ずっと眺めていられます。
財務担当者にとって貸借対照表は、平面的な「シート」ではなく「立体」なのです。

しかし、財務担当者は眺めているだけではダメです。
財務担当者のもっとも基本的な仕事は、見えている立体を削っていくこと
自社が目指す「ボン・キュッ・ボン」に近づけるためにどこを削るか、場合によってはどこに肉付けをするか
それをするためには、常に貸借対照表の状況をチェックしておかなくてはいけません。
毎日、風呂に入る前に体重計に乗り、風呂から上がれば鏡で全身をくまなくチェックする。
この日々の積み重ねがあって初めて、いい会社の貸借対照表は出来上がるのです。

「損益計算書」のチェックはみんなしますが、「貸借対照表」のチェックは財務担当者しかしません
こまめにチェックしましょう。

「純資産合計」は、これまでの頑張りの凝縮

「純資産合計」は、これまでの頑張りの凝縮

 

貸借対照表の右下にある
「純資産合計」は経営者にとって非常に重要な数字です。
なぜなら会社設立以来あれこれ頑張ってきた成果が、そこに凝縮して表現されているからです。

例えば、資本金1,000万で設立した会社が10年後、
➀純資産合計が3,000万であれば、
10年間で元手1,000万を3,000万に増やしたことになります。
➁純資産合計が1,000万であれば、
10年間で元手1,000万を全然増やせていないことになります。
➂純資産合計が300万であれば
10年間で元手1,000万のうち、700万を食いつぶしてしまったことに。
➃純資産合計が-500万であれば
10年間で元手1,000万を使い果たした上に、他人のおカネまで500万使い込んでいることになります。

このように元手の「資本金」を、これまでの経営でどれだけ増やせたかを「純資産合計」で確認するわけです。
売上や利益の伸びには敏感な社長も、この「純資産合計」には関心を持たない方が多いです。
いざ確認してみると、
「あれだけ売上は伸びたのに、これだけしか元手を増やせてないのか」
ということも。

中小企業の一番の弱みは、この「純資産合計」が小さいこと。
これを着実に増やしていくことが強い会社に近づくことです。
そのためにやるべきことはいろいろあるのですが、まずは「純資産合計」をチェックすることから始めましょう。