恨み節、「事業再構築補助金」

事業再構築

先日の日経新聞によれば、「事業再構築補助金」の今年9月採択分5,200件の中に、ゴルフ関連が79件、エステ関連が59件あり、ゴルフ関連ではシミュレーションゴルフへの業態転換など似たようなプランが数多く採択されているとのこと。
過去には「フルーツサンド販売店」の申請が相次いだこともあったとか。

本当に残念で無念です。
というのもこの9月の採択に向けて私たちも申請したのですが、不採択になったから。
ここからは、恨み節。
今年4月、地元のドライブインの株式を譲り受け、従業員もそのままに経営を引き継ぎました。
50年以上前にオープンしたそのドライブインは、「昭和レトロ」なドライブインとして今でも結構な人気があります。
しかし「昭和レトロ」でこの先何十年もやっていけるわけありません。
その昔、高速道路が網羅されていない昭和の時代、全国の幹線道路沿いに乱立したドライブインは、これまでにほぼ淘汰が完了しました。
しかし、生き残ったドライブインもまた、「ドライブイン」から脱却しなければならない時に来ています。
幹線道路相手の商売ではなく、その地域に密着した商売にローカライズしなければなりません。
私たちが申請した「事業再構築」は、その趣旨に沿ったものです。
ドライブインから4.5kmの距離に、県内随一のスポーツ強豪校があり、広大なグランドに充実した競技施設が集積しており、週末ごとに中国・九州、遠くは近畿地方の中学高校の野球やサッカーのチームが遠征してきます。
その強豪校の先生からは、相手校の宿泊受け入れを以前から要請されています。
というのも現在は、30㎞以上離れた宿泊施設を利用しており、相手校に申し訳ないとのことでした。
この超ローカルで、かつ私たちしか対応できない「地元ニーズ」に取り組むには、水まわりを中心に施設の改修が必要です。
そこで「事業再構築補助金」を利用して対応したいと考えました。
しかし申請後、何度も差し戻しされました。
革新的でないと。
もともと宿泊機能もあったのだから業態転換ではないと。
差し戻されるたびに、「ドライバーの宿泊施設」から「地元ニーズに即した団体宿泊施設」への転換、「ドライブイン」から「地元密着施設」への転換であることを重ねて訴えました。
でも、ダメでした。

恨み節は続きます。
じゃあ流行りのグランピング施設を併設したり、インドアゴルフを新設すれば採択されたのでしょうか。
そんな一か八かの計画でなければ採択されないのでしょうか。

そもそも地方の中小企業の再生を考えるとき、「革新的経営」を求めすぎではないでしょうか。
経営がうまくいっていない会社の多くは、設備や店舗や顧客を細やかに扱えていない会社です。
不具合が起きている設備に手を入れず使い続け、穴が開いた壁を放置、使った道具は置きっぱなし、要らないものはとりあえず何かの後ろに隠す、入口のドアはギィギィ。
うまくいかないのは、決して業態だけの問題ではありません。
そんな会社の社長が起死回生を狙って突飛な事業計画を申請しそれが採択されるなら、その補助金は倒産を早める促進剤になりかねません。

補助金採択の審査は非常に大変な作業だとは思いますが、補助金は自力で地道に再生を目指す中小企業の背中を少しだけ押してくれるようなものであってほしいと考えます。

ジュエリー・ロンダリング

ジュエリー・ロンダリング

ジュエリー・ロンダリングなんていう言葉は、グーグル検索でも出てきません。
知り合いの貴金属会社の社長から出た言葉です。
「ウチの仕事のメインは、ジュエリー・ロンダリングかな」

「ロンダリング」と言っても、マネーロンダリング(資金洗浄)のような犯罪まがいの商売ではありません。
お客から買い取った宝石を磨き、傷をとり新品同様にし、場合によってはリフォームして別のお客に売る。
今では珍しくもなんともない商売です。

その社長が言いたいのはこうです。
例えば、親から子に、義母から嫁に、祖母から孫に、高価なジュエリーが引き継がれるとします。
それは形見分けであったり、生前贈与であったり。
そういう話を聞くと私たち素人は、「受け継がれる永遠の輝き」みたいな宣伝広告をイメージしてしまいます
だけど現実は違います。
殆どの場合、受け取る側は、ジュエリーは受け取りたいけど、前の持ち主の「思い」まで受け取りたくありません
重すぎます。
だからそれを売って、自分好みの別のジュエリーを買う。
または、ルース(石)だけ残して自分好みの一品モノのジュエリーに作り替える。

社長の言う「ロンダリング」とは、ジュエリーにまとわりついた「思い」や「物語」を洗い流すこと、そうしてシンプルに価値ある「自分のモノ」に変えていくことなのです。
社長曰く、ジュエリーを「物語」と一緒に引き継いでいくのはロイヤルファミリーだけだと。

確かに。
そう考えると、ジュエリーに限らず、その他のリサイクル業態も、要らない「思い」や「物語」をロンダリング(洗浄)する商売と言えるかもしれませんね。

日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

以前、「日本橋三越本店」の地下食品売り場に催事出店したときのこと。
一週間催事の初日開店前、バイヤーさんから印象的な話がありました。

「すべてのお客様に等しく丁寧に接客してください。
お客様の印象だけで接客を変えることが決してないように。」

このバイヤーさんの丁寧な言葉を言い替えると、
「絶対にお客さんを見た目で判断するな。
どこにどんなVIPがいるか分からないんだから。」
ということでしょう。

資産家が常にパリッとしたお仕立てスーツを着ている、とは限りません。
総菜売り場で100gを少しオーバーした分を減らせと言う客が、実はその百貨店で年に何百万も遣っている上顧客かもしれません。
見た目で判断することはできません。
ましてや、販売する側のこちらは「庶民」です。
お客を見た目でランク付けするなんて無理でしょう。
無理だから、リスクヘッジの意味でも、どのお客にも等しく丁寧に接客しなくてはならないのです。

小売やサービス業のスタッフに、「平等で丁寧な接客」を指導するとき、このバイヤーさんの話は有効です。
なぜすべてのお客様に等しく丁寧に接客しなくてはならないか、の理由付けになるからです。
スタッフの納得度が上がります。
国内トップクラスのVIPを数多く抱える「日本橋三越」のバイヤーの言葉だけに、使えます。

中小企業の後継者問題を緩和する、副業転化型「継業」 

中小企業の後継者問題を緩和する、副業転化型「継業」

「継業」とは、地域に移住してきた第三者に事業を承継すること、と定義されています。
もともと農業や林業の承継を想定した言葉でしょう。
単に都会から人を呼び込んで人口を増やすのが目的ではなく、移住者ゆえの視点で地域の魅力を再発見してもらう、それを地域の再生につなげる、という効果も期待されているようです。

よく分かります。
ただ、徐々に増えてきたとはいえ、地方移住する人たちはまだまだレアな存在
地方の後継者、特に待ったなしの中小企業の後継者問題を緩和するには、到底間に合わないでしょう。
では、どうすれば緩和できるのか。
提唱したいのは、副業転化型「継業」です。

後継者を求めている会社は、副業で働ける仕事・ポストを用意し、後継者候補を募集する。
リアルもリモートも可とすれば、全国から募集できます。
マッチングアプリ的なものを活用するのも良いでしょう。
期間は1クール半年、状況次第で継続可。
報酬は低め設定、可能なら複数人採用する。

今は大手企業中心に副業が推奨されるようになってきました。
自分で会社を経営したいと思っているサラリーマンはたくさんいます。
勤務先の副業制度を利用して、承継する会社を探せるならメリットは大きいでしょう。
いきなり地方移住するのではなく、半年、一年、場合によってはそれ以上会社と関わることで、承継に関するハードルは相当下がります。
その間に夏休みを利用して家族で会社のある地域に旅行してみたり。

今地方の市町村はいろんなニンジンをぶら下げて移住者を求めています。
しかしそれは人口対策になっても、中小企業の後継者問題対策にはなりません。
副業を通じて候補者の心理ハードルを下げることが出来れば、事業承継実現の数も増えるでしょう
その結果移住が決まれば、そのときニンジンが後押しとして効いてきます。

TDBとTSRの評点

TDB TSRの評点

中小企業の財務担当者は、帝国データバンク(TDB)東京商工リサーチ(TSR)とのコミュニケートを大切にしなければなりまぜん。
それは自社に関するTDB・TSRの「評点」を上げる必要があるからです。

TDBやTSRの「評点」は大切です。
中小企業は上場企業のように有価証券報告書を開示しません。
ですから第三者がどこかの中小企業の信用状況を調べたいとき、ほとんどの場合TDBかTSRの「企業情報」を見て「評点」を確認するからです。
今は誰でもネットで簡単にTDB・TSRの「企業情報」を見ることができます。
自社に製品・サービスを納入しているサプライヤーは定期的に見ているでしょう。
回収懸念はないかと。
自社が製品・サービスを納入している先が大企業であれば、その大企業も定期的に見ているでしょう。
将来の調達懸念はないかと。

でも一番見ているのは、意外に感じるかもしれませんが、銀行です。
それもすでに自社に融資をしている銀行
すでに融資をしているのであれば、決算書類も提出しているし直接ヒアリングもしているので、わざわざTDBの企業情報を見る必要はなさそうですが、現実は違います。
常にTDB・TSRの評点を確認し、それを貸出稟議の拠り所にしたりもします。
銀行自体も銀行担当者も、融資が焦げ付いた時の責任回避のために、「評点」を拠り所にするのです。
ですから、中小企業の財務担当者は、良い決算書をまとめて満足するのではなく、それをTDB・TSRの評点に反映させるところまでやらなければなりません

では、中小企業はどのくらいの点数がついていれば良いのか。
中小企業であれば、50点以上あれば「懸念なし」と見なされるので、まずはこれをクリアしたいところです。
60点もあれば優良企業です。
70点以上あるのは上場企業に準じた超優良企業です。
逆に多くの中小企業の評点は、50点未満です
50点未満は、「企業情報」では数字ではなく、記号で表記されます。
TDB : D1 (49~47点)  D2 (46~44点)  D3 (43~40点)
D4 (40点未満)
TSR : W (49~47点)   X (46~44点)   Y (43~41点)
Z (40点以下)

以前、地方銀行の融資課長から、D1点、W点なら十分融資対象になると聞いたことがあります。
また上場企業(製造業)の調達担当から、60点以上の会社であれば信用管理を別扱いにするとも聞いたことがあります。

ですから財務担当者は決算後に毎年TDB・TSR担当者とコミュニケートし、自社の「評点」を上げることに努めなければなりません。
しっかりコミュニケートして情報開示するだけでも、評点は上がります。
間違ってもTDB・TSRからの調査依頼書をゴミ箱直行にしないように!