モノづくり大国の根っこにあるもの

 

モノづくり大国「日本」という言葉は、何となく日本人のプライドをくすぐります。
モノづくり、技術が日本を世界有数の経済大国に押し上げた、と。
 
旧財閥系グループの会合でも、製鉄や重工が一番上座で、次に化学とかがあって、銀行が一番下座という序列があると聞いたことがあります。
日本を引っ張ってきたのは製造業なんだ、と言わんばかりに。
 
私たちの会社は典型的なモノづくりの会社です。
鉄やステンレスの大きな板を切って、曲げて、吊って、溶接して、製品にして、塗装して。
そんな会社にいると、「モノづくり」の別の面も知ることになります。
 
一番つらいのは労災事故です。
切れたり、挟まれたり、巻き込まれたり。
何かが起きた時は、会社中が異様な緊張感でいっぱいになります。
 
環境や人体への影響も気になります。
設計が悪いのか、現場が間違えたのか、大きな失敗作が外に並べてあるのを見ると、これは資源の無駄遣いだなーと思います。
また製造過程で出る、アルミの粉や塗装の排水も基準を守っているとはいえ、環境や体にやさしいものではありません。
 
夏の食堂はとにかく汗の臭いでいっぱいです。
しかし空調もない40℃をはるかに超える工場で、バンバン溶接をする彼らのおかげで会社は利益を上げることができるのです。
 
こういう危険や環境汚染や健康被害や汗のにおいが、モノづくり大国「日本」の根っこにあるものです。
いわゆる3Kですね。
私はこれからも日本がモノづくり大国であり続けるためには、これらのKをすべてなくしていく必要があると考えます。
今の私たちの会社は、この3Kを引き受けているからこそ、仕事が来ているのだと思います。
しかしそんなことを言っていたらこの先確実に働き手がいなくなります。
 
モノづくり大国の根っこにある問題を、モノづくりの力で解消していく、それこそがモノづくり大国を未来につないでいくのに不可欠なことだと思います。

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