世界経済で一番大切な指標、「米国雇用統計」

 

世界の金融マーケット(外国為替、金利、株価など)の動きを予測するうえで、一番重要な統計は、「アメリカの雇用統計」です。
と教えてくれたのは、銀行時代の上司です。
 
二十数年前、銀行本店のスワップ・オプションなど金融商品を取り扱う部署に、研修員として3か月ほど在籍していました。
それまで支店で中小企業担当として外回り営業ばかりしていたので、為替や金利の動きにそんなに詳しいわけありません。
それなのに着任2週目から、支店に毎日配信する「本日のマーケット情報」を書くよう命令されました。
それからの1ヵ月間、毎朝前日のチャートを見ながら、毒にも薬にもならない説明文を作り、FAXで全店に配信していました。
チャートを見れば誰でも分かるようなことを、もっともらしい文章にして。
それでも300店舗以上ある支店からは一回もクレームらしいものが来ませんでした。
それは、いかに支店の人間がまともに見ていないか、という証拠でしょう。
 
ただ一度だけ、その部署の副部長に呼ばれ指導を受けたことがあります。
それが「アメリカの雇用統計」です。
月に一度発表される雇用統計の日に、それに触れることなく文章を作って配信してしまったのです。
副部長いわく、
「アメリカの雇用が改善すれば、アメリカ国内の消費が拡大、輸入増、ドル高、世界経済安定推移、となる。
雇用が悪化すればその逆の動き。
アメリカの雇用統計は世界中のアナリストが一番注目している数字だ」
とのこと。
 
それ以来、新聞やニュースで「米国雇用統計発表」とあると、反射的に注視してしまいます。
 
今月5日発表された4月の米国雇用統計は、失業率が4.4%と10年ぶりの低水準、かなり良い数字になりました。
さっそくマーケットに反映されているようです。
 
最後に、私の疑問ですが、なぜ日本では国内の雇用統計を大々的に発表しないのでしょう。
(こっそりと発表はされています)
米国雇用統計のような世界への影響力はありませんが、国内の個人消費には直結するはずです。
企業や投資家が「雇用統計」にもっと注目し、個人消費の先行指標として共有するなら、現在のような失業率の低い好ましい状況では、もっと積極的な投資行動に出るはずです。
「雇用統計」には、そういうアナウンス効果もあるのです

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