「時間を買う」ことが、常に正しいわけではない

 

知人が経営している運送会社では、高速道路の利用を禁止しています。
単純に高速料金を節約するためです。
その会社は、20台ほどの中型トラックで、比較的近距離の輸送を請け負う中小企業です。

このような運送会社が多いせいか、高速道路があるルートでも一般道をトラックがバンバン走っています。
「事故や渋滞の原因になるから、商用のトラックは高速道路を走ってくれたらいいのに」、
と私たち一般ドライバーは思います。
「高速代をケチっても、一般道をゆっくり走ってちゃ、時間がもったいないじゃないか。
トラックの運転手不足なんだから、もっと高速を使って効率を上げればいいのに」
とも。

しかし、冒頭の運送会社の社長は言います。
「高速道路を使えば確かに早いけど、それで1、2時間早く帰ってきてもねー。
その時間で出来ることは何もないよ。」
なるほど。
高速道路を使って往復、2千円のコストをかけて1時間短縮したところで、その1時間が次の売上を生まないのなら、ただ経費が2千円増えてしまうだけです。

社長は続けます。
「高速を使うかどうか、都度決めたり、判断を運転手に任せたりすると、運転手が迷ってしまうから、『使わない』と決めた方がいいんだよ」
なるほど。
「高速は使わない」と決めてしまえば、ルートが決まり、所要時間が決まり、運転手が迷う余地はありません。
同時にコストも確定するので、仕事単位の利益も確定します。
その仕事単位の利益を1ヶ月積み上げて、会社が十分利益が出ているなら、それでOKというわけです。

ビジネスでは、「時間」「スピード」が何よりも大切、ということが喧伝されます。
「時間をカネで買う」ことは、常に正しいことのように。
しかしそれは、その結果浮いた時間で何らかの成果を上げれることが前提です。
コストをかければ、キャッシュが確実に出ていきます
しかしそれによって浮いた時間で、キャッシュを稼げるかは、極めて不確実です

中小企業では、不確実な利益を求めず、確実にコストを抑える方が、最終的に利益を残す可能性は高いでしょう。
一(いち)ドライバーから起業した運送会社の社長は、経験則でそれを知っているのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)