トイレのチェックリストは有効か

トイレのチェックリストが必要な理由

ファストフード店やパチンコ店などのトイレの壁に、「チェックリスト」がぶら下がっているのを見かけることがあるでしょう。
便器は汚れていないか、洗面台に水が飛び散っていないか、トイレットペーパーは切れていないか、など店舗スタッフが一定時間ごとに確認してチェックマークを入れるやつです。

あれは有効(役に立っている)でしょうか。

先日、私たちが運営するゴルフ練習場のお客から、トイレのチェックリストについてクレームが入りました。
「あんなもの下げていても、スタッフは適当にチェックマークを入れとる。
決まった時間にチェックしないで、2回分まとめてチェックしとった。
チェックリストなんか何の役にも立っとらん

ゴルフ練習場の昼間のお客の多くはシニア層で、かつては管理職だった方も多いでしょう。
そのような方にとっては、毎日通う練習場の「運営」や「スタッフ教育」などがとても気になるようで、ときどきそのような指摘をいただきます。
ただ、今回のクレームの中には、トイレが汚れているとか、ペーパーが切れているとか、実際のトイレに関する不満は出てきませんでした。
つまるところ、トイレに関する不満ではなく、スタッフに対する不満を訴えたかったのでしょう。

チェックリストは有効、と考えます。
今回のクレームのお客は、「チェックリストがあっても、スタッフは決められた回数の半分しかチェックしていない」、と言います。
しかし、チェックリストがあるから、半分はチェックするのです。
その半分のチェックがあるから、何とかトイレがきれいな状態に保たれている。
お客が主張するようにスタッフが不真面目で、その上チェックリストも無ければ、トイレはきれいな状態にはならないでしょう。

ところで、件のお客、少し内政干渉的ではありますが、そのようなお客もチェックリストが有効に機能するために必要なファクターかも知れません。
経営者に代わってチェックリストの運用を見届ける目として。
そのためにお客の見えるところにぶら下げてあるのです。

コンビニと魚屋

コンビニと魚屋

近くの町で、非常に流行っている「鮮魚店」があります。
「コンビニエンスストア」の駐車場の一角にあるその店は、一年前までは百貨店の地下(デパ地下)で営業していました。
地方あるあるで、一年前百貨店がまるごと閉店してしまい、やむなく百貨店に近いその場所に移転したのだとか。

魚屋の大将を知る人からの情報では、その場所でもデパ地下と変わらない売上をとっているとのこと。
なぜその魚屋はそれだけの売上をとれるのか。
もともとデパ地下でも、「刺身」や「寿司」が美味しいと定評のある店だったのですが、それだけではないようです。

その店の立地に、大将も予測しなかった二つのマーケティング効果があったのです。
一つは、百貨店がなくなったことで近隣の住民が「買い物難民」になったこと。
「買い物難民」は、農村地域の専売特許ではありません。
高齢化が進む地方の中心市街地で、百貨店がなくなると、足をもたない高齢者は一気に「買い物難民」化します。

もう一つは、「コンビニ」との相性の良さ。
近くに商業施設がなければ、コンビニで買い物するしかないのですが、コンビニに決定的に欠けているのは「生魚(なまざかな)」なんですね。
これをその魚屋が補完しているのです。
高齢者の消費パターンを想像すると、魚屋で「刺身」か「寿司」を買って、コンビニでちょこっと総菜や甘いものを買う
このパターンがあれば、それなりに満足度を維持して生活していけます。
ちなみにこれが、「魚屋」ではなく「肉屋」だったらそこまでの満足度はないかもしれません。

「コンビニ」と「魚屋」の相性なんて考えたこともありませんでしたが、マーケットによっては強力な組み合わせになるんですね。
気づきのある事例でした。

最低賃金と初任給の関係

最低賃金と初任給の関係

「最低賃金」はパートさんなどの時給を決めるときに参考にするもので、正社員の給与とは関係ないものと思っていました。
社員の給与水準は全然上なんだからと。

しかし最近、状況が変わってきました。
今年の最低賃金の引き上げで、恥ずかしながら、私たちの会社の高卒新入社員の給与が引っかかってしまったのです。

今年10月に改定された県の最低賃金は829円
製造業の多くは、この「最低賃金」ではなく、業種ごとに決められた「特定最低賃金(特定最賃)」が適用されます。
私たちの業種は936円、12月15日、即日適用です。
ちなみにこの特定最賃、5年前は822円でしたから、5年で13.8%、114円上昇したことになります。

私たちの会社の高卒初任給は158,000円。
地方では他社と比べて悪くないのですが、これが特定最賃936円にわずかに届いていません。
給与水準は他社に遜色ないのに、特定最賃に抵触するのはなぜか。
「所定労働時間」が長いからです。
完全週休二日制になっていない中小製造業は、時給計算の分母である「所定労働時間」が大きいのです。
分母が大きいから時給は低くなってしまいます。
特定最賃が年々引き上げられ、中小製造業の高卒初任給が特定最賃に引っかかりやすい状況になっているのです。

それに関連するデータがあります。
厚労省の賃金構造基本統計調査の「平成30年企業規模別にみた初任給」。
それによると、高卒男子の初任給(全国平均)は、「大企業」167.0千円、「小企業」168.9千円。
このデータを初めて見たとき、「小企業」は知名度がない分、初任給を上げて人を集めようとしているのだと思いました。
しかし自社の初任給を修正する作業を通じて、この「大企業」と「小企業」の初任給の逆転は、「所定労働時間」の差によるものと思えてきました。

最低賃金引き上げは、「給与」だけの問題ではなく、「労働時間」の問題でもあるのです。

「厳しい社長」と「優しい社長」

「厳しい社長」と「優しい社長」

「厳しい社長」と「優しい社長」、
良い会社をつくるには、社長はどちらのタイプが良いでしょう。
これは、「掃除道」で有名な経営コンサルタント、今村暁氏の講演で、講師から出た問いかけです。

トップダウンでみんなをぐいぐい引っ張る「厳しい社長」
包容力でみんなのヤル気を引き出す「優しい社長」
どちらにも長所・短所があるなあ、と考えを巡らせ、決めかねていると、
今村氏は、
「ごめんなさい、答えはどちらでもいいんです。社員全員が規律を守ることができていれば
氏曰く、
「良い会社」を数多く見てきた経験から言えば、そこには「厳しい社長」も「優しい社長」も「普通の社長」もいる。
ただすべての「良い会社」に共通しているのは、社員全員が「規律」を大切にして行動していること。
時間を守り、ビジネスマナーを守り、業務上の秘密を守り、就業規則を守る。
社長がいようがいまいが、他人の目があろうがなかろうが関係なく。

私も社会人になって30年余り、銀行員時代を含めこれまで何千もの会社を訪問しました。
その中で、社員の振る舞いが印象的だった(感動した)会社が2社あります。
神戸の「ワールド」本社と、東京の「セブン&アイ・ホールディングス」本社です。
30年前、銀行員としてワールド本社を訪問した際、たまたまエレベータに乗り合わせた4、5名の社員の振る舞いは、とてもスマートで気遣いを感じられるものでした。
私をどの部署の誰の客、というのではなく、「ワールドの客」として丁寧に扱ってもらいました。
どう丁寧に扱われたかを説明するのは難しいのですが、お客がいれば無駄話はせず、適度な距離を保ち、自然な目線や落ち着いた声のトーンなど、もろもろの所作にそれを感じたのでしょう。
とにかく、「さすがワールド!」と思ったのをいまだに覚えています。

15年前、ショッピングモールへの雑貨店出店の打ち合わせのため、セブン&アイ本社を訪問した際も、エレベータで同じ体験をしました。
いろんな流通大手にも通っていたので、その接客レベルの違いに、「さすがセブン!」と思ったのを覚えています。

どこかの会社を訪問したとき、訪問先の担当者ではなく、もちろん社長でもなく、たまたま乗り合わせた社員に感動し、その会社を「さすが!」と思う
社長が厳しかろうが優しかろうが、それを確認しなくても、エレベータに乗り合わせた数名の社員を見れば、その会社が良い会社であることは分かります。

この2社は言わずと知れた業界を代表する会社ですが、中小企業であってもお客の感じ方は同じはず。
会社が目指すべきところも同じでしょう。

中小企業の「社長の報酬」と「借入返済」の関係

中小企業の「社長の報酬」と「借入返済」の関係

中小企業の社長の役員報酬について、その額はいくらが妥当か考えるとき、再認識しておくべきことがあります。
それは、中小企業の社長にとって、「借入返済も報酬の一部」という認識です。

大多数の中小企業では、社長がその会社の「株式」を大半保有しているでしょう。
そんな社長にとっては、毎月の「銀行借入返済」が進めば、会社の財務状態が良くなり、株式の資産価値が上がります。
また、会社の銀行借入に個人保証しているなら、借入返済に伴い保証債務が減ります。
このように銀行借入の返済は、大株主である社長の「資産・負債」に直結しているのです。

ですから、そのような大株主社長は、役員報酬の額を決めるとき「常務が80万なら社長の自分は100万」などと単純に考えてはいけません。
例えば、会社の経常利益が月間100万、借入返済が月間70万とします。
この会社では、経常利益が100万あっても、毎月の資金繰りにそれほど余裕はないでしょう。
ならば、社長は役員報酬を50万にして、会社に資金を残すことを考えるべきです。
そのとき株式を持っていない常務が80万取っていようと関係ありません。
社長の報酬は、50万+借入返済70万、計120万ですから、決して報酬の逆転現象は起きていないのです。

当の社長本人がこのような認識を持てれば、役員報酬に関してスッキリ決定できるようになるでしょう。
また、毎月の借入返済についてもポジティブに受け止めることができるでしょう。
返済は、銀行に取られているのではなく、自分の資産を増やしている、と。