EC(オンラインショップ)は実店舗より効率的か

EC(オンラインショップ)は実店舗より効率的か
雑貨店の実店舗とオンラインショップ、両方に関わったことがあります。
もともと全国の大型ショッピングセンターで雑貨店を展開している会社が、オンラインショップを立ち上げECを始めたのです。
 
始める前は、私を含め関係者全員が、オンラインショップは実店舗に比べて
人件費・家賃・在庫負担などランニングコストが少ない
店舗を作る費用が安い
だから効率的な運営ができる
と考えていました。
ところが実際にオンラインショップを始めると、全然違いました。
逆に、実店舗は実は効率的なんだ、と気づくことが多かったです。
 
オンラインショップは実店舗の1/3以下の1000アイテムでスタートしました。
各メーカーのカタログから商品をセレクトして発注します。
ここまでは実店舗と同じなのですが、商品が届いてからが大違いです。
 
<オンラインショップの場合>
①検品する
②写真撮り
③サイトにアップ
④商品別に棚に収納
注文が入ったら
⑤確認メール送信
⑥商品を探して棚から取り出し、在庫表に記入
⑦サンキューレターを手書き
⑧梱包
⑨ヤマトを呼んで発送する
⑩発送メール送信
 
<実店舗の場合>
①検品する
②店舗什器にディスプレイする
③お客さんがセルフで選んでレジに持ってきてくれるのを待つ
④会計をしてラッピングして渡す
 
モノの流れ(物流)という点では、実店舗の方がはるかに合理的で効率的です。
在庫を例に取れば、実店舗はディスプレイ自体が在庫置き場になっています。
それに対し、オンラインショップでは在庫棚を1000棚用意します。
在庫が1500アイテムに増えたら即、在庫棚も1500棚になります。
探す手間も、在庫管理も増えます。
 
アマゾンが当初物流の壁に突き当たったように、オンラインショップは規模に関わらず必ず在庫を含めた物流の課題が発生します。
つまりリアルの物理的な課題です。
オンラインショップの成功は、この物流の効率化が不可欠なんですね。

損益計算書(P/L)を見るポイント

コスト
小売業の損益計算書(例)です。

 

                (千円)
売上 120,000
 原価 48,000
粗利 (売上総利益) 72,000
 経費 (一般管理費販売費) 

 人件費、外注費、広告宣伝費、

 地代家賃、旅費交通費など  

68,000
営業利益 4,000
 営業外収益 500
 営業外費用 1,500
経常利益 3,000

※赤文字は原価や経費などの支払(マイナス)科目

損益計算書を見る時、通常上から下に眺め、一番下に利益が出ているかどうかを確認するでしょう。

でもそれで終わってはいけません。

損益計算書で最も大切な数字は、「粗利(売上総利益)」と「経費(一般管理費販売費)」です。
損益計算書を上から下に眺めると、先に「粗利」があって、その後に「経費」が出てきます。
しかし本当は順番が逆です。
会社が商売をする時、店舗用の物件を借りて、人を採用し、広告宣伝をします。
それらの「経費」をかけた後で、ようやく売上が上がり粗利が残るのです。
「経費」が先で、「粗利」があとです。
つまり「経費」をインプットして、「粗利」をアウトプットするのです。
この視点をもって、損益計算書の「粗利」と「経費」をじっくり比較検討しなければいけません。

中小企業の損益計算書を見ると、営業利益ベースで赤字を何年も続ける会社があります。
営業利益 = 粗利 - 経費
ですから、営業赤字を続けるということは、インプットよりアウトプットが小さい状況が続いているわけです。
50円稼ぐために60円投入し続けているのです。
そういう会社は、「経費」がインプット、「粗利」がアウトプットという視点が無いのです。

その視点さえあれば、営業赤字が続くことはないでしょう。
なぜなら、「経費」も「粗利」も、その気になれば相当部分コントロール出来るのですから。

革新的事業に必要なこと

革新的事業に必要なこと
最近の新聞で、国内カーシェアリング業界1の会社が
業績を伸ばしているという記事を読みました。
駐車場運営大手のパー〇〇4です。
 
私も3年くらい前から会員になって利用しています。
特に東京では至る所に車が置かれていて、便利この上ないですね。
予約から利用、返却まですべてスマホと会員カードで完結。
一度返却後に忘れ物に気づいたときも、その対処が自動でされるのを体験し、そのシステムに本当に感心しました。
 
今から3年近く前にその会社の担当者と話をしたことがあります。
その会社は当時、本業の駐車場事業ではしっかり利益を出していました。
しかし、カーシェアリング事業は始まったばかり、将来性はまだまだ不透明でした。
その時に担当者から聞いた話は非常に興味深いものでした。
「私たちの強み、得意としているのは、『無人のオペレーション』。
例えば、私たちの駐車場にある飲料自販機にも意味があるんです。
その自販機業者は、飲料補充時に駐車場周辺とシェアカーの状況確認をする、
そういう取り決めになっているんです。」
ほったらかしに見える時間貸駐車場も、エリア担当者・エリアマネージャー・ベンダー業者で一日23回チェックしているとのこと。
 
私はITを使ったカーシェアのシステムにだけ目が行っていましたが、
実は現場を無人で管理するという目に見えないノウハウもあったんですね。
カーシェアリングは米国などで先行したビジネスモデルとは言え、
神経質で保守的な日本人の中にこれだけ急速に浸透するとは思いませんでした。
それを成し得た背景には、その会社のITとアナログの相互補完のノウハウがあることは間違いありません。
 
世の中に広く急速に浸透する革新的事業は
IT + 培ってきたアナログ = 革新的事業
なのではないでしょうか。
ITだけでもなくアナログだけでもなく。
逆に、IT関連事業を起業したものの、それが革新的事業に育たないのは、ユーザーと事業をつなぐアナログ技術が不足しているのかも知れません。

究極のキャッシュフロー経営

究極のキャッシュフロー経営
私が子供のころ、1970年代の商店の軒にはザルがぶら下がっていました。
八百屋や魚屋で、売上金や釣り銭を入れるためのザルで、
確かゴム紐みたいなもので、ぶら下がっていたような気がします。
普段は比較的高い位置にあるザルを、お金を出し入れするときだけ
引っ張って下げるという便利グッズです。
売れた時だけでなく、営業中に集金に来た業者さんには、
このザルのお金で支払いをしてしまいます。
 
テレビドラマや漫画の世界では、不良な店主がたまに店に来て、
そのザルの中のお金をつかみ、またギャンブルに向かう、という
昭和的なシーンの小道具でもありました。
 
しかし当たり前ですが、普通の八百屋さんは夜お店を閉めると
そのザルのお金を数え、明日の釣り銭をザルに残し、
それ以外を今日の売上として袋に入れます。
翌朝はその袋を持って市場に行き、その現金の範囲内で仕入をします。
 
究極のキャッシュフロー経営です。
いつもキャッシュ残高を把握しているので資金繰りを考える必要もなく、
突然の倒産なんて絶対ありません
 
同じような話を聞いたことがあります。
関西の大手のアパレル企業の元事業部長の話。
その方のお父様も50年近く尼崎で女性服の専門店を経営されていて、
亡くなる直前まで細々とではありますが営業されていたそうです。
その仕入れ方法は一貫していて、一つ売れたら一つ仕入れる、というもの。
 
いかにも古風でいかにも小規模ゆえのエピソードです。
しかし、われわれ財務基盤が盤石でない中小企業にとっては、
覚えておかなければいけない商売の原点ではないでしょうか。

顧客満足の現物支給

顧客満足の現物支給
財務研修を請け負うことがあります。
対象は会社の経営陣や幹部候補の人たち
 
中小企業の幹部には、経営数値に疎い人が結構多いです。
疎いだけならいいのですが、数字を軽視する人もいます。
大切なのは「顧客満足」だと。
経営に携わる立場の人であればこれは問題です。

なぜなら経営は、企業活動のすべてを数字にしていくことだからです

どんなにお客が満足していても、それだけでは経営になりません。
利益が出る値段で買ってもらい、期日に入金をしてもらう。
つまり「顧客満足」を「売上の数字」にし、自社の口座の「預金の数字」にしていくわけです。

こうして数字にしていかなければ、給与も支給できません。
「顧客満足」を数字に出来なければ、給与の振込が出来ないので、
「顧客満足」を現物支給するしかありません。
給与明細に書かれているのは「数字」ではなく、
「給与振込するお金はありませんが、お客さんはとても満足して感謝していますよ」の言葉。
数字軽視の幹部はこの現物支給を受け入れてくれるでしょうか。