社員総出の「縁故採用」で有効なツールとは

社員総出の「縁故採用」で有効なツールとは

日本全国どこの会社も、採用難の状況です。
ハローワークに募集を出しても、反応はほとんどありません。
ただ実際には、私の周りにも「これから働きたい」という人が何人かいます。
決して「人」がいないわけではありません。
働きたい人がいても、「ハローワーク」に行く前に、身近なところで仕事が決まってしまっているように感じます。

A 「今仕事探しているんだ」
B 「そうなんだ、ウチの会社も募集してると思うよ。人事部に聞いてみようか」
A 「じゃあ、お願いしようかな」
後日、面接の上、採用決定。
こんな感じでしょうか。
ほぼ全ての会社が「人」を欲しがっている状況では、この手の「縁故話」はとんとん拍子に進むのです。

バブル時代の「不動産」もそうでした。
極度の「売り手市場」では、いい物件情報は表に出てきません。
すぐにさばける物件を、わざわざ不動産屋のガラスに貼り出しはしないのです。
表に出る前に、物件に近い人たちがサッサと片付けてしまいます。

今、私たち中小企業も、これまでのようなハローワークでの採用が難しいなら、「縁故採用」にも取り組まなければならないでしょう。
社員、出来れば全社員の「ツテ」と「クチコミ」を使って、人材を探すのです。
社員が、積極的にスカウトに奔走する必要はありませんが、自分の周囲に人材がいないかという意識くらいは持ってもらいたいものです。

この社員総出の「縁故採用」に有効なツールがあります。
携帯電話の「写メ」です。
社員たちに、自社の「募集要項」を印刷して手渡してもあまり活用されることはないでしょう。
その代わりに、各自「募集要項」を携帯で撮影して、写真として保存してもらうのです。
昨今、「LINE」「インスタグラム」「フェイスブック」その他SNSで、みんな写真の取り扱いに慣れています
誰かとの世間話の中で、職をさがしている人の話を聞けば、すぐに「募集要項写真」を話し相手に送ることができます。
その人に、職を探している本人への転送をお願いすることも容易にできます。

もともと中小企業は地元密着ですから、縁故採用に向いています。
ツールを上手に使えば、採用の可能性はグッと上がるでしょう。

採用にもある、「最少催行人数」

採用にもある、「最少催行人数」

 

「最少催行人数」という言葉を目にするのは、旅行業者のツアー募集のパンフレットくらいです。
最低〇〇人集まらなかったら、ツアーの企画自体が無くなるというやつですね。

最近、採用に関してもそれが出来たらいいな、と思うようになりました。
そのきっかけは、今年の新入社員が先日退職してしまったことです。
高校卒で入社、3ヵ月のジョブローテーション中でした。
その原因は、私たちの受け入れ体制にも、本人にもあります。
しかし最大の要因は、「新入社員がたった一人だったこと」だと思います。

ちょうど30年前、大学を出て社会人になった時のことを思い出してみると、同期入社の存在は大きかったです。
会社に入って右も左も分からない時、頼りになるのは上司でも先輩社員でもなく、同じように右も左も分からない同期でした。
不条理に先輩に叱られたときも、帰りに同期と吉野家でメシしながら愚痴を吐き出し、それでずいぶん救われました。
後で考えれば、当時は確かに稚拙な感覚で仕事をしていました。
上司や先輩から見ると、手がかかるお荷物な存在だったでしょう。
そんな時期を何とかくぐり抜け、徐々に社会人らしくなれたのは、一緒のレベルで一緒の目線で一緒に成長する同期がいたからだと思います。

ひるがえって先日辞めた新入社員のことを考えれば、高校卒業したばかりの18歳で、しかも普通科卒で慣れない工場の仕事で、職人さんに囲まれて。
この状況を一人で乗り切るのはとてつもなく難しいことだったのだと思います。
私たちが組んだ研修の仕方についても、大いに反省しなくてはいけません。

一般的に、会社がメンター(新入社員の精神的サポーター)をつけるケースもありますが、工場での仕事では実際無理でしょう。
であるなら、複数採用を徹底するしかありません。
複数人採用して一緒に研修を受けさせる。
複数人採用を目指して活動し、途中で一人しか採用出来ない見込みになれば、採用ゼロとする
採用にも、「最少催行人数」があるのです。

親のコネで入社しても、長続きしない理由

親のコネで入社しても、長続きしない理由

 

たまに取引先や知人から、自分の子供を雇ってくれないかという相談を受けます。
実際には、
「今募集はしてないか」
「一度面接だけしてくれないか」
という言い方です。
しかし結局は、「雇ってくれないか」ということです。

本当に親しい友人であれば、やめておいた方がいいと答えます。
それでも「是非」と言われれば、面接をして採用することもあります。
しかしそういう採用で入った子は、長続きしないことがほとんどです。
これには2つの理由が考えられます。
➀ もともと親が心配するくらいだから、本人に何らか足りないところがある。
親が選んだ仕事だから、本人がその仕事に執着心を持てない
どちらかというと➁の方が強いです。

ところで、心理学で「自己正当化の圧力」というものがあります。
これを「選択」に当てはめれば、「自分が選んだもの・ことに、間違いはなかった」と思いたい心理が働くのです。
自分が買った車はカッコいい車だ、選択に間違いはなかった。
自分の結婚相手は最高の人だ、選択に間違いはなかった。
自分が選んだ会社はいい会社だ、選択に間違いはなかった。
となるわけです。

自分が調べて、見つけて、選んで、応募した会社であれば、いい会社だと信じる力が自然に強くなるんですね。
この信じる力で2年もてば、仕事が面白くなる段階に入ります。

できるだけ自分で選ばせることが大切です。

採用面接の「基本ルール」

採用面接の「基本ルール」

 

新卒、中途問わず、採用面接で訊いてはいけないことがあります。
次の質問の中で、してはいけない質問はいくつあるでしょう。

➀生まれてからずっと、今の住所に住んでいるのですか。
➁あなたの両親は、共働きですか。
➂あなたは今の社会を、とう思いますか。
➃あなたはどんな人になりたいですか。
➄学生時代は自宅通学でしたか。

答えは5個、全部NGです。
これらは大阪労働局のHPからの抜粋です。

そのHPによると、下のような質問がダメとされています。
1. 本籍に関する質問
2. 住居とその環境に関する質問
3. 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
4. 資産に関する質問
5. 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
6. 男女雇用均等法に抵触する質問
この「基本ルール」は、私たちが就職活動した30年前にもありました。
目的は、本人の責任ではないことを排除して、あくまで本人の適性・能力で選考するように、というものですね。
これは合理的でもっともなことなので、大半の企業はこのルールに沿った適切な面接・選考をしているでしょう

しかし冒頭の質問例は、すんなり理解できません
私個人的には、④の「あなたはどんな人になりたいですか」は、むしろ積極的に訊いてみたいことです。
仕事を通じてどんな社会人、どんな大人になりたいか。
今時点での思い、考えを聞いて、本人の目標と自社の目標がどういう関係になるか、ミスマッチを予防するためにも確認したいものです。
➃の質問が、思想・信条を問いただすことになるなら、面接で少しも掘り込んだ話を聞けなくなってしまいます。

冒頭の質問例は、1から6の基本ルールをより具体的にしたものです。
しかしそれによって、かえって全体の精神が分かりにくくなっています
繰り返しますが、この就職差別をなくすための基本ルールについてはどの企業も理解賛同しています。
労働局はまず、企業がこの基本ルールに賛同してその精神に沿った採用面接をしていることを再認識して、それを大切にしてほしいものです
細かい質問例に縛られて、企業が生き生きとした面接ができなくなるなら、「ミスマッチを防止する」という面接の大目的も果たせません。
それは「求職者を守る」という意味でも本末転倒でしょう。

採用担当者を迷わせるような質問例は必要ありません。

人材バブルの今、ムリな採用はしない

採用

 

先月末、5月30日に厚労省から発表された、「一般職業紹介状況」によると、4月の有効求人倍率は1.48倍
最高は福井県の2.06倍、最低は北海道の1.13倍。
最低の北海道でさえ、1.0倍以上です。
正社員有効求人倍率も0.97倍と、ほぼ1.0倍近くまで上がってきています。

先日書いた通り、地方の高卒求人倍率は実質2倍、内定率も99%以上。

< 2017/5/23  地方の高卒採用事情、求人倍率2倍の異常 >

こうなると完全に、「人材バブル」です。
内定率がほとんど100%ですから、選考で落とされる人がいないということ。
悪い言い方ですが、どんな商売でも売れ残りが数パーセント発生して当然です。
売れ残りがまったく無いのは、バブルの証拠。

30年前のバブル時代、どんな不動産でも売れました。
路地の奥にある、草ぼうぼうの小さな空き地、隣のアパートの浄化槽の臭いがひどい物件でさえ数千万で売れて行きました。
バブルは、みんなが実需の無いものを手に入れようとするから起きるのです。
今、手に入れなければ損をする、と。
しかしバブルが崩壊すれば、なんであの時あれだけ焦って手に入れようとしたのか、となります。

現在の求人もそんな状態に見えます。
今そこまで逼迫していないのに、「今採っておかないと、将来大変なことになる」と考えている会社が相当な割合あるのではないでしょうか。
こういうバブルに乗っかるのは危険です。
とくに新卒は限られた数からの取り合いですから、中小企業がいい人材を採れる可能性はグッと下がっています。

私たちの会社も、新卒採用活動を頑張りますが、いい学生と出会えなかったら「採用ゼロ」で良し、と考えることにしました。
2、3年待ってみる、という戦略もあります。