さよなら、メガバンク

さよなら、メガバンク

メガバンクの国内店舗統廃合のニュースが飛び交っています。

三菱東京UFJ銀は、フルバンク型500店舗を2023年までに半減。
みずほ銀も先日から、「地方での住宅ローンから撤退」、「全国800店舗の半分を小型店舗に切り替え」など、国内業務の縮小方針が明るみになっています。
当然両行とも万人単位の人員削減を目論んでいるのでしょう
そんな話と並んで、メガバンクがこぞってベトナム・タイ・インドネシア・フィリピンなど東南アジア諸国で攻勢をかけている、との記事もあります。
今や、メガバンクの利益の半分は海外で稼いでいるのだとか。
「儲からない国内は捨てて海外に」、がメガバンクの考え方のようです。

しかしメガバンクの国内でのヤル気のなさは今に始まったことではないでしょう
少なくとも2、3年前には中小企業向けの融資に関しては積極さが感じられなくなっていました。
出口が見えないゼロ金利政策のもとでも、逃げ場のない地方銀行は融資のボリュームを上げて、何とか収益を上げようとしてきました。
一方メガバンクの担当者からは
「融資なんてしても儲からないでしょ、やるだけムダ。
やるならフィービジネスですよ」
という雰囲気が露骨に出ていました。

最近、私たち中小企業にとっても、メガバンクの存在意義が何なのか分からなくなってきました
その昔、今のメガバンクが都市銀行と呼ばれていたころ、中小企業にとって都市銀行との取引は「ステータス」でした。
会社案内の「取引銀行欄」のトップには、都市銀行の名前をもってきたものです。
請求書に記載する振込口座に都市銀行の口座を書くのも、相手先が振り込むのに便利だから、という理由だけではないでしょう。
それよりも何よりも、都市銀行に当座預金を開設して、小切手や手形を振り出すことは名実ともに自社の信用度を誇示するものでした。

しかしネットバンキングが当たり前の今、小切手を受け取ること自体、迷惑以外の何物でもありません。
約束手形の慣行も見直され、手形流通量も激減、「カッコイイ」手形が必要ではなくなりつつあります。
都市銀行取引のもう一つのメリット、「貸出金利の低さ」も、今や地方銀行との差はありません。

都市銀行がメガバンクになり、その資産規模は世界トップクラスになりました。
三菱UFJフィナンシャルは269兆で、中国工商銀行に僅差で次いで2位、みずほが13位、三井住友が16位。
しかしその過程で、私たち中小企業のメガバンクに対する「ステータス感」「ロイヤルティ」は、激減しました。

メガバンクが今、本気で検証しなければならないのは、その点ではないでしょうか。
なぜ顧客は「ステータス感」「ロイヤルティ」を持たなくなったのか。
まだ利益の半分は国内で稼いでいるのですから。

お布施ローン

お布施ローン

 

大学を卒業して、銀行に入社した1年目のこと。
融資関係の帳票が入っている棚を整理していると、
「〇〇提携ローン申込書」
というのを見つけました。
○○は宗教法人名です。

先輩に「この申込書は何ですか」と尋ねました。
先輩は「あまり使うことはないけど、お布施ローンだね。
信者さんが、お布施したいけど手元にお金がないときにローンを組むんだ。
上限は200万。
宗教法人が保証してくれるから、銀行も貸し倒れになるリスクはないんだよ」
と教えてくれました。

新入行員の私には、ちょっとしたカルチャーショックでした。
世の中、こんなことが行われているのかと。
と同時に、「うまいこと考えるなー」と感心してしまいました。
先輩の説明の通り、銀行にとっては大きな宗教法人の保証があるのでノーリスク。
宗教法人にとっても、入ってくるお金について保証するだけなので、ノーリスク。
途中で信者さんが返済できなくなっても、残金を宗教法人が代わりに払えばすべてまるく収まります。
返済が進んだところまでが実質的なお布施になるのです。

他人の「連帯保証」は絶対してはいけない、と言われます。
私もそう思います。
しかし「お布施ローン」方式なら、連帯保証しても良いかも知れません。
例えば、誰かにお金を貸していてなかなか返してくれないケース
相手に銀行から借り入れをさせて、そのお金で返してもらう。
その銀行借入だけは連帯保証する。
金融機関を間に入れることで、返済の強制力が強くなり、最終的に回収する可能性が高くなるのです。

冷蔵庫がスカスカ、だから銀行融資が増えない

冷蔵庫がスカスカ、だから銀行融資が増えない

 

景気が悪くなると、家の冷蔵庫の中もスカスカになるそうです。
ムダなものは極力買わないように。
冷蔵庫の奥で賞味期限切れを発生させないように。
今日要るものだけ今日買う。
明日要るものは明日買う。
バブルの頃、冷蔵庫をパンパンにしていた主婦も、在庫を減らして筋肉質な家計を構築しようとするのです
 
この20年間会社もできるだけ在庫を減らし、ムダな資産は処分して筋肉質な財務を目指してきました
そういえば昔は余分な在庫どころか、保養所やクルーザー、ベンツにマセラッティ、本業にまったく必要のないものもあちこちの会社の決算書に載っていました。
そのせいもあり、銀行借入も必要以上にありました。
 
なぜすべての会社が筋肉質を目指したのか。
何がライザップのような役割をしたのか。
やはり銀行です。
ある時から銀行が急に、「債務償還年数10年」というモノサシを企業に当てるようになったのです。
「全ての借入を10年で返済できない会社は借入過多」だと。
返済がキツくなって追加融資か期間延長を頼むと
「リスケ(リスケジュール)したら問題先に区分されるぞ」と騒ぎ立てる。
まったく根拠のない「10年」が、絶対ルールとなってしまったのです。
そんな状況のもと、企業は極力余分な借入をしない、できるだけ借入
を減らすという考えが定着しました。
 
それがここに来て、銀行は「もっと借りて」と言ってきます。
あの「10年」の話はどこに?
あれだけ「筋肉質になれ」と言っていたのに、今度は「少しぽっちゃりした方がいい」と。
そんな勝手な話にこちらも、「はい、そうですか」とは言えません。
俳優さんみたいに、急に痩せたり太ったりはできません。
 
銀行の貸出が伸びない原因は、他でもない銀行と金融行政にあるのです。

銀行との付き合い方① 「追えば逃げる、逃げれば追う」

銀行
追えば逃げる、逃げれば追う。
これは恋愛話ではありません。
私たち中小企業と銀行との関係です。
 
「銀行は晴れの日に傘を差し出し、雨の日に傘を取り上げる」
昔からよく使われる表現ですが、銀行もそこまで殺生ではないでしょう。
しかし銀行を「金貸し」と割り切って考えるならば、金貸しのスタンスとしては傘の話も納得できます。
 
私たち個人レベルでも、知り合いから
「今度ウチの会社、上場するんだ。今のうちに
10万円で株を買っとかない?
と勧誘されたら、非常に警戒します。
逆に、投資を勧誘されることもなく「上場話」を聞けば、何とか今のうちに10万でも株を買えないかと考えます。
勝手なものです。
銀行も同じでしょう。
 
ですから、会社が銀行を追うのではなく、銀行に追いかけてもらわなければいけません。
そのためには
① 少しその銀行から逃げる(距離を置く)フリをする
② 他の銀行から大切にされていることを匂わせる
ことが大切です。
 
会社が一つの銀行をメインバンクと位置付けるのは自由ですが、
銀行取引の中でそれを主張することは、効果的な方法ではありません。
「この融資はメインバンクの貴行に是非お願いしたい」なんて言われたら、銀行は「重たいなあ」と引いてしまうかも知れません。
 
恋愛では、二股三股は厳禁です。
逆に銀行取引では「あなた一筋」が厳禁です。
上手に二股三股しましょう。