中小企業の社員向けに、その会社の決算書を使って財務勉強会を開くことがあります。
役員や幹部社員ではなく、現場を実際に動かしているマネージャーや一般社員が対象です。
社員に決算書を見せることは経営側からするといろいろ懸念されることもあり躊躇しがちです。
であれば無理にすべてをオープンにする必要はありません。
差し障りのないところだけ使えばOKです。
一般的に貸借対照表は損益計算書に比べてその仕組みが理解しにくいので、勉強会も損益計算書に比重を置きがちです。
しかし私は逆に貸借対照表に7〜8割の時間を割きます。
かといって流動比率や固定比率など、現場を切り盛りする社員に必要のないことはまったく触れません。
時間をかけるのは、固定資産の科目を一つずつ確認することです。
土地は全部でいくら、その内訳を付属明細で確認します。
建物や構築物、什器備品は減価償却資産台帳で中身を確認します。
これをやると、社員たちは自分たちがいる店や工場、使っている備品が一つずつ帳簿で価格管理されていることを知り、その価格に興味を持ちます。
例えば、
本社の敷地って2,500㎡もあるのかー、とか。
あのフォークリフトって18年前に買ったとき350万だったんですね、とか。
店舗内装の耐用年数ってすごく長いんですね、とか。
ここで期待したいことは、
①自分たちが商売するため、モノづくりをするために使っている一つ一つの物がすべて購入価格-減価償却=現在価格で管理されていることを知ること。
②無くしたり壊したりすると損失が発生し、代わりに新しいものを買うとまた高い金額から償却費用が発生すること。
現場の社員たちは、自分たちの周りにある店や工場や什器やフォークリフトや溶接機に毎日コストが発生していることが実感として分かっていないんです。
それを数字で確認することで、周囲の物の見え方が変わってきます。
是非お試しください !