粉飾決算の王道 「在庫操作」

 

中小企業の粉飾決算の大半は「在庫」を操作する手口です。
銀行が企業から決算書を受け取って分析する場合、必ず在庫金額の推移に不自然さがないかをチェックします。

当然、粉飾決算を指南するつもりはありませんが、「在庫」の特性を理解する上では、粉飾の仕組みを確認することが役に立ちます。

「在庫」はなぜ操作しやすいのか。
➀ まず実際に在庫を棚卸しても、1円も間違えずに数えることは至難の業です。
つまり在庫金額には必ず不確実性がつきまとう、少しいい加減な科目なのです。
➁ 在庫は捨てることが出来ます。
腐ったり売れなくなったりした在庫は処分します。
この人為的な判断で在庫を減らすことが出来る、めずらしい科目なのです。
➂ 減らすことが出来るということは、増やすことが出来るということ。
在庫は「仕入」と「売上」がめまぐるしく発生する中でその残高が動いています。
上の②のように意図的に減らすことが出来るのであれば、少し多めに計上しておいても大丈夫、ということ。
なぜなら、捨てることでいつでもアジャストできるのですから。

「在庫」を使った粉飾を貸借対照表で考えてみます。
貸借対照表上の「在庫」を100万円増やしたらどうなるか。
貸借対照表の左側(借方)が100万増えるわけですが、これをバランスさせるためには、左側のどれかを100万減らす、もしくは右側(貸方)のどれかを100万増やすしかありません。
しかし他の科目をヘタに増減させるとすぐに矛盾が起きてしまいます
例えば右側の「買掛金」を増やしてしまうと、支払う先のない買掛金になってしまい、ずっと帳簿に残ってしまいます。
例えば左側の「預金」を減らしても、すぐにつじつまが合わなくなってしまいます。
そんな感じで結局、在庫100万増の相対で動かすことが出来るのは、右側(貸方)の資本の部、繰越利益剰余金の中の「当期利益」しかないわけです。
左側の「在庫」と右側の「当期利益」が直結しているのです。
つまり、在庫が100万増えれば当期利益が100万増える、在庫が100万減れば当期利益が100万減る。
至ってシンプルな関係です。

粉飾決算はしてはいけないことですが、在庫と利益が直結していることはしっかり認識しておかなければいけない事実です。
在庫を管理することは、利益を管理すること、なのです。

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