仕事の「上流」と「下流」

仕事の「上流」と「下流」

 

私たちの会社の工場は、すべての製品がお客のオーダーを受けて作り始める、受注生産工場です。
設計 → 成型(切ったり曲げたり) → 製缶(溶接でくっつける)
→ 組立(最終製品の形に組みつける) → 塗装 → 出荷
と流れます。

この上流から下流に流れる受注生産ラインには、リスクがあります
それは上流の仕事が停滞すると、下流がすべて「待ち」になるということです。
例えば、、
設計が止まると、その下流の60名が「待ち」になります。
成型が止まると、その下流の50名が「待ち」になります。
製缶が止まると、その下流の40名が「待ち」になります。
組立が止まると、その下流の25名が「待ち」になります。
こんな感じで止まる場所が上流であればあるほど、「待ち」になる人数が増えます。
その分、会社の機会損失が増えるのです。

こういう状況は工場に限ったことではありません。
事務所の中でも起こります。
例えば、毎朝、前日の営業成績が本部からメールで配信されるとします。
大切な速報数字なので、営業担当者は外出前に確認したいと考えています。
しかし発信する本部担当者が自分の業務の都合で、9時に送ったり9時半に送ったり、たまに10時になってしまったり。
それでは営業担当者に「待ち」が発生してしまいます。
これも会社の機会損失です。

自分の業務の後工程にどれだけの人がいるか、ということを意識して仕事をすることは非常に大切です。
上の例でも分かるように、上流が上司で下流が部下というわけではありません
ですから、若い社員にもこの大切さを理解させておく必要があります。
社員全員が自身の業務を、下流で人が待っているもの、待っていないものに選別して、優先順位をつけて仕事をする
社員全員にそれが定着すれば、会社全体の生産性はさらに高まるはずです。

東芝ショック、上場企業に強権社長が出現する不思議

東芝ショック、上場企業に強権社長が出現する不思議

 

なかなか東芝の行方が定まりません。
思えば一昨年の不正会計あたりから、同社周辺には不穏な空気が立ち込めていました。

上場会社が不正会計で業績をかさ上げするケースでは、その陰に強権的な社長の存在を想像してしまいます
実際東芝の不正会計の時には、社長の「チャレンジ」と称する目標設定が原因の一つになっていました。

強権的な社長は本来、中小企業の専売特許ではないでしょうか。
なぜ大企業のサラリーマン社長が強権社長になってしまうのか。
本当に不思議です。

率直に言えば、中小企業と大企業では人材の素養が違います。
(人間性・人間力ではなく、仕事上の理解力に関してです)
ですから必然的に中小企業での教育は、体に教え込むスタイルになります。
強権発動、「已む無し」です。
しかし大企業は、話せば分かる社員ばかりです。
少なくとも十分議論を尽くせる人たちばかりでしょう。
強権を発動する必要はないのです。

日本の上場企業には、日本の上位何%かの優秀な頭脳が集まっています
そんな人間を集めておいて、議論の余地なく強権発動するなら、日本の資源の無駄遣いです。

東芝に限らず、あちこちの上場企業で強権的な社長が出現します。
日本の上場企業で、なぜそのような強権発動とリーダーシップを混同するトップが出現するのか
そのプロセスを解明することは、日本の上場会社にとって非常に大切なことのように思えます。
第二、第三の東芝ショックを起こさないためのガバナンスチェックです。

これから繁盛するゴルフ練習場は 「アスリート・ファースト」

ゴルフ練習場

 

「そない簡単に上手くなられたら、うちの商売上がったりやわ」
これは(関西の)ゴルフ練習場のオーナーが、なかなか上手くならないと嘆く常連さんに向かって言うセリフです。

しかしこのオーナーの言葉、本当にそうでしょうか。
練習場のお客は、上手くなったら練習場に来なくなるでしょうか。
答えはNOです。

ゴルフ練習場に来なくなるお客は、上手くならないお客です。
少し上手くなっていい当たりが出るようになると、練習が楽しくなります。
いいスコアが出れば嬉しくて、もっと練習しようと思います。
ハンデが20を切る頃からもっともっと練習したくなります。
ハンデが10を切ってシングルプレーヤーになったら、さらに練習します。
上手くなればなるほど、熱心に練習するのです。
上手くなったら練習をしなくなる、なんてことはありません。

つまりゴルフ練習場がお客を増やすためには、お客を上手くしてあげる方法を考えればよいのです。
ヘタな人をいっぱい集めることではありません。
ビギナーはビギナーなりに、中級者は中級者なりに、シングルの人はシングルなりに、その練習場に行けば上手くなれるヒントがたくさんある、と思われるようになれば、間違いなくお客は増えていくでしょう。

使いやすくて清潔な施設に、「上手くなる」ソフトが盛り込まれたゴルフ練習場。
これから繁盛するゴルフ練習場は、「アスリート・ファースト」です。

巨人12連敗に考えさせられること

巨人12連敗に考えさせられること

 

巨人ファンではありません。
しかし11連敗目と12連敗目の試合はBS放送で観ました。
こんな状況で巨人はどんな試合をするのか、興味があったのです。

それにしても2試合ともハンパない緊張感でした。
負けたら今日で終わり、の甲子園の試合を観ている感じでした。
プロ野球は勝って負けて、負けて勝って、終わってなんぼ、のはず。
だけどここまで追いつめられると、「この試合」になってしまうんですね。

会社経営も似たようなものです。
勝って負けて、負けて勝って、最後に締めてなんぼ残るかです。
全部勝とうと思うと、社内的にも取引先との関係もギスギスしてきます。
負けが立て込んで資金繰りに窮してくると、勝つことしか考えられなくなります。
だから大切なのは十分な資金をいつも確保しておくことです。
20連敗くらいしても全然平気なくらいの資金を。
もちろん20連敗はしてはいけません。
しないために十分な資金をもって、余裕をもって「勝ち」と「負け」を配置するのです。

野球もビジネスも「絶対」はありません。
やる前に今日は、この試合は、絶対勝てる、なんていうことはないのです。
だからこそ、優勢に進んだ試合は確実に勝つ、明らかに負けそうな試合は戦力を温存する、ことが大切なのだと思います。

巨人ファンではないので、巨人にどんな戦力があるのか知りません。
しかし無責任なことを言わせていただくと、連敗を止めるためにもう一試合負けてみるのはどうでしょう。
負けてもいい、と覚悟して思い切った選手起用をするのです。
この2試合、責任感のあるベテランがガチガチです。
ちょっと休ませて、この連敗にあまり責任感を感じる立場にない選手を入れてみるのもよいと思います。
戦況によって途中からでも出場できるのですから。
負けてもいいと割り切った試合が、勝ち試合になることもよくあることです。
余計なお世話でした。

人工知能(AI)に勝てる脳

人工知能(AI)

 

Googleの人工知能(AI)「アルファ碁」が中国の世界最強棋士に3連勝したそうです。
この種のニュースは時々流れます。
囲碁以外でも、将棋やチェスやオセロなど、最近は最強プロがAIに勝てなくなってきました。
そういうニュースを見ると、「感心する」というよりも、つまらない世の中になってしまうのではないか、とちょっとドンヨリした気持ちになってしまいます。

ただ、そのようなボードゲームは、AIが最も得意な分野でしょう。
明確なルールがあって、「勝つ」という明確な目的がある。
途中に打てる「手」が何万あろうと、AIにはへでもないこと。
「勝ち」を競うなら、人間に勝ち目はなくなるでしょう。

AIにとって手ごわい相手は、例えば「勝つ気がない」人です。
碁盤を挟んで向かい合ってはいるけど、無理やり連れて来られた、囲碁なんてしたくない、勝ちたいとも思わない、興味ない、ウザい、という人です。
そんな人を前にするとAIは無力です。
「ソウイワズニ、イッショニ、ゴヲタノシミマショウ」
対戦の前に、ヤル気にさせないといけないのです。
現在のAIのレベルではこの強敵をヤル気にさせることはまだ難しいでしょう。

今後AIが発達していく過程で、最後まで手こずる相手は、「変わり者」です。
それも一見して「変わり者」ではなく、私たち一人一人の中にある「変わり者」の部分
自分では認めたくない部分だったり、隠したい部分だったりするところです。

AIがこれからどこまで私たちの生活に入り込んでくるかは分かりませんが、私たちの内側の「変わり者」を正確に認識するようになるには、まだまだ時間がかかるのではないでしょうか。
最強棋士に勝ったことは、ようやくスタートラインに立ったという感じでしょう。