新規事業は川べりで始める

新規事業は川べりで始める

 

新規事業にチャレンジするときには、
「自分のアイデアを世に出せば、お客が集まってくる」
と考えてしまいがちです。
それくらいの自信とヤル気と少々の勘違いが無ければ、新規事業の立ち上げは出来ないかも知れません。
しかし、それは
「世の中の流れがどうであろうと関係ない、流れは自分が作る」
と考えているのと同じです。
とてつもなく難しいことを自分に課してしまっているのです。
ただでさえ難しい新規事業の立ち上げを、さらに難しくするわけですから、成功確率はドンと下がってしまいます。

以前、アパレル大手W社の専務からアドバイスを受けたことがあります。
「商売するときは、川がどこを流れているかをよく見て、その川べりでせなあかん。
流れのないとこでは、何やっても、なんぼ頑張ってもムダや
当時絶好調だったW社でさえ、川を探して、川べりまで商品を持って行って、商売をしていたのです。
一番売れやすい場所を探し、売りやすい方法で売る。
自分が流れをつくる、なんて考えていません。
考えているのは、商売を出来るだけ簡単に、簡単に、簡単に

冒頭のように「お客が集まってくる」と考える人ほど、事業開始後の現実に慌てふためきます。
この慌てふためくことが、事業を迷走に向かわせます。
ですから、新規事業に取り組むときは、
「どんなにいいアイデア・いい商品であっても、世の中の人にはなかなか伝わらない
というところからシナリオを書くくらいでいいのではないでしょうか。
そうすれば、一番売りやすい場所、一番売りやすい方法をたくさん考えるようになるでしょう。
「最初の2、3か月はほとんど売上は見込めない」
そう考えていれば、事業開始後しばらく売上が立たなくても、迷走することはないでしょう。

考えてみれば、本当に優れたアイデア・優れた商品であれば、あとはお客にアプローチするだけのはず。
お客が集まるのを待つまでもなく、こちらから持って行けば良いのです。
お客に知ってもらい、手に取ってもらい、体験してもらう仕組みを地道に構築していけば、着実に売上は上がります。
慌てる必要はありません。

繰り返しになりますが、
アイデア・商品に対する過度の自信 → お客が集まるという妄想 → 現実は売れず → 焦り → アイデア・商品への自信喪失 → 迷走
という「負の連鎖」に陥ってはいけません。

人材バブルの今、ムリな採用はしない

採用

 

先月末、5月30日に厚労省から発表された、「一般職業紹介状況」によると、4月の有効求人倍率は1.48倍
最高は福井県の2.06倍、最低は北海道の1.13倍。
最低の北海道でさえ、1.0倍以上です。
正社員有効求人倍率も0.97倍と、ほぼ1.0倍近くまで上がってきています。

先日書いた通り、地方の高卒求人倍率は実質2倍、内定率も99%以上。

< 2017/5/23  地方の高卒採用事情、求人倍率2倍の異常 >

こうなると完全に、「人材バブル」です。
内定率がほとんど100%ですから、選考で落とされる人がいないということ。
悪い言い方ですが、どんな商売でも売れ残りが数パーセント発生して当然です。
売れ残りがまったく無いのは、バブルの証拠。

30年前のバブル時代、どんな不動産でも売れました。
路地の奥にある、草ぼうぼうの小さな空き地、隣のアパートの浄化槽の臭いがひどい物件でさえ数千万で売れて行きました。
バブルは、みんなが実需の無いものを手に入れようとするから起きるのです。
今、手に入れなければ損をする、と。
しかしバブルが崩壊すれば、なんであの時あれだけ焦って手に入れようとしたのか、となります。

現在の求人もそんな状態に見えます。
今そこまで逼迫していないのに、「今採っておかないと、将来大変なことになる」と考えている会社が相当な割合あるのではないでしょうか。
こういうバブルに乗っかるのは危険です。
とくに新卒は限られた数からの取り合いですから、中小企業がいい人材を採れる可能性はグッと下がっています。

私たちの会社も、新卒採用活動を頑張りますが、いい学生と出会えなかったら「採用ゼロ」で良し、と考えることにしました。
2、3年待ってみる、という戦略もあります。

グループウェアの「罪」

グループウェアの「罪」

 

グループウェアを導入する会社が増えてきました。
パソコン内(サーバー内)のグループウェアソフトを使って、スケジュールや情報の共有、「既読確認」付の社内メッセージ、社内稟議など、非常に便利になりました。
おかげで机から机に回されるリアルな回覧板が一切なくなりました。
以前は、「あの稟議書、どこまで回ってる?」と大騒ぎしながら、管理職の机の上を探したものです。
そんなオフィスの光景もなくなりました。
グループウェアは一度使い始めると、その便利さで、すぐに無くてはならないものになってしまいます

しかし本当は、無くても全然大丈夫です。
私たちの関連会社には、グループウェアが導入されている会社と導入されていない会社があります。
両方の会社で仕事をしていると、グループウェアの「罪」も見えてきました。

一番の罪は、過度な情報共有でムダなコストが発生すること。
例えば、退職者が「社内メッセージ機能」を使って退職の挨拶を全社員100人に送ったとします。
「本日をもって退職いたします。在職中はみなさんにたいへんお世話に・・・・」
このメッセージを100人が開いて確認します。
そして100人のうち30人が、
「お疲れさまでした。新しい環境でのご活躍を・・・・」
というメッセージを返します。
その30人のメッセージをまた100人が開いて確認します。
これだけのやり取りにどれだけの時間を使ってしまうか。
100人の社員が確認するメッセージは、のべ3,100件。
メッセージを開いて閉じるまで、1件当たり20秒かかると仮定したら、
3,100件✕20秒=1,033分=17時間13分
社員100名の平均時給が1,800円とすると
17時間✕1,800円=30,600円
実に会社全体で17時間、3万円を浪費したことになります。
一人の退職の挨拶に。

また、このような情報共有が増えると、社員は何か情報が来ていないか頻繁にグループウェアをチェックするようになります。
プライベートな時間に頻繁にスマホをチェックするのと同じように。
便利なグループウェアも使い方を間違えると、「情報共有」という御旗のもとに社員の時間を盗み、不要なコストを発生させてしまうのです。
グループウェアを使っていて業績が上がらない会社は、使い方のルールを徹底するか、思い切って一度やめてみるのも良いのではないでしょうか。
きっといいことがありますよ。

蒸し返さない 「税務調査」

税務調査
税務調査が、ようやく終わりました。
調査期間中、調査官に教えてもらったことがあります。
それは数年前に実施された、「税務調査に関する手続き明確化」についてです。
事前通知の内容や方法、資料の持ち帰り、調査完了の手続きなど、いろいろルールが整備されたとのこと。
これは民主党政権時に、「納税者保護」を目的に、それまで曖昧だった税務調査の手続きを明確化したのだそうです。
民主党、グッドジョブです。
 
調査官によると、「前回の調査より前のことは、再調査できない」ということも基本ルールになっているようです。
もちろん重大な状況の変化があった場合は別でしょうが、原則、調査対象期間は前回調査以降だけ。
それより前のことは「蒸し返さない」のです。
これもグッドです。
何事につけ、蒸し返して幸せになることなんてありません。
 
残念ながら、税務調査には暗いイメージが付きまといます。
調査の通知が来ると、脱税などしていなくても、「何を調べに来るんだろう」と不安になります。
調査が始まり、調査官とあれこれ会話をしても、「本当の目的は何なんだ」と懐疑的になってしまいます。
これは調査を受ける側の率直な感覚です。
 
逆に調査官はどうでしょうか。
調査官も人の子、会社側がそんな感覚で調査官と接するなら、精神的にはしんどいでしょう。
真偽は定かではありませんが、精神を病む人も多いと聞いたことがあります。
調査の目的や手続きをクリアにすることは、税務調査官の負担も減らすことになるでしょう。
 
これからの税務調査は、悪質な脱税会社には、これまで以上に厳しく。
そして大半のちゃんとした会社には、「税務指導の行政サービス」という感じになれば理想的ですね。
調査官に気持ちよく帰ってもらうために、何か適当な「おみやげ」が必要、などという都市伝説もなくなってほしいものです。

今が不動産屋の転換点

今が不動産屋の転換点

 

先日、付き合いのある不動産屋に行ってきました。
市内で一番取り扱い件数の多い老舗の不動産屋です。
そこの店長の話によると、最近は賃貸の飛び込み客がめっきり減ったとのこと。
3年前の半分くらい、とか。

「人の動きが減っているんですかね」と尋ねると、そうではなく「SUUMO(スーモ)」の影響が大きいということです。
リクルートが運営する不動産物件の紹介サイトですね。
この2、3年の間にお客の動きが、「とりあえず不動産屋に行って」から「まずはネットで調べて」に変わったのです。

SUUMO以前は、どこかに引越しするとき、とりあえず引越先の最寄駅に行って、駅前の不動産屋を巡るのが基本動作でした。
たくさんの物件を見るにはそれしかなかったのです。
これはお客にとっては大変な負担でした。
転勤で引越しするケースでは、業務の引継に並行して転勤先の不動産屋巡りですから、不動産選びに実質半日くらいしかかけられません
奥さんも一緒に内見、なんてとても無理でした。
そう考えるとSUUMOなど紹介サイトの登場で、現住所にいながら転勤先の不動産を探せる、それも家族で一緒に探せるというメリットは大きいです。
不動産屋の飛び込み客が減るのも当然です。

今がちょうど不動産屋の転換点かも知れません。
いくら良い物件を抱えていても、お客が来ないのではその強みを発揮できません。
「管理物件は握りこむよりも公開した方が良い」
不動産屋の考え方の転換点です。
そうなると、これから先は一気に掲載物件が増えるはずです。

不動産屋の賃貸部門は、ネットショップになるのです。