既存借入の金利をアップデート!

既存借入の金利をアップデート!

先日、取引のある地方銀行B行から、他の地方銀行A行の肩代わりをさせてほしいと持ち掛けられました。
対象の借入は、私たちの会社で一番大きな一本、10億を超す借入です。
特にA行に対して不満はないので、借り替えをする考えはなかったのですが、B行の担当者がとても熱心だったので、とりあえず貸付条件の提案だけはしてもらうことになりました。

後日、B行の支店長が来社、提案書をもらいました。
ビックリ !
今の借入の半分の金利でした。
元金が大きいだけに借り替えるだけで、年間500万を超える金利が軽減、全借入期間では5,000万以上の軽減です。

少しくらいの下げであればそのまま断ろうと思っていたのですが、さすがに金利が半分になる提案を無視することはできません。
今借りているA行を訪問、支店長に率直に状況を説明しました。
当然ですがA行も、「はい、そうですか」とは言いません。
本部と金利の見直しを協議して、後日条件変更の提案をしてくれることになりました。

一週間後、A行支店長と担当者が来社、金利を大幅に下げる提案を受けました。
ただ、B行より0.2%高い提案でした。
支店長いわく、新規貸出を目論むB行と違い、既存借入の引き下げなので、この金利が限界、とのこと。
その金利でも私たちにとっては十分ありがたい、納得できる水準でした。
A行が金利引き下げをするだけであれば、不動産担保を付け替えるコストもかかりません。
ですからA行の金利引き下げ提案を受け入れることにしました。
しかし、それでも0.2%、B行提案より高いのは事実。
ダメもとで、代表者の連帯保証を外すお願いをしてみました。
結局これについても、あっさり後日OKの回答をもらいました。
金利は大きく下がり、現在会社でテーマにしている、「連帯保証外し」も一気に進みました。
たった1枚のB行の提案書のおかげで。

最初に提案をくれたB行には丁重に謝罪して、また別の形で取引拡大することを約束しました。

それにしても今回の件で、改めて地方銀行の貸出競争のし烈さを知りました。
それと、しばらく長期借入をしていなかったので、その間の「貸出金利」や「連帯保証制度」の動向に疎くなっていたことを痛感しました。

とはいえ、手ぶらで銀行に行って、「金利下げてー」と頼んでも、大きな成果は得られないでしょう。
既存借入の金利・連帯保証条件をアップデートするのに、絶大な効果を発揮するのは、「他行の肩代わり提案書」なのです。

「部門別損益計算」では、無理に間接費を割り振らない

「部門別損益計算」では、無理に間接費を割り振らない

部門別もしくは製品別の損益計算書を作るとき悩ましいのは、「間接費」をどう取り扱うか、です。

会社の費用は、「直接費」と「間接費」に分けられます。
「直接費」は、明確に部門分けできる費用です。
例えば原材料費やその部門に所属する社員の人件費など。
一方、「間接費」は、複数の部門もしくは全部門にまたがっていて、明確に部門分けが出来ない費用です。
例えば本社・本部にかかる費用や、複数の部門が同居する工場の減価償却費など。
結局、部門別損益計算を難しくするのはこの「間接費」であり、その取扱いを間違えると間違った部門別損益を社内に発信してしまう危険性があります。

間接費を各部門に割り振るとき、安易に「売上案分方式」を使うのも危険です。
「売上案分方式」は、各部門の売上の大きさに応じて、間接費用を案分負担しようという方式です。
例えば、全社売上の60%を売り上げている部門には、間接費の60%を割り振ろうというものです。

この「売上案分方式」がうまく行かない例を紹介します。
ある会社で、部門A・部門B・部門Cがあり、売上・直接費・直接粗利が【表1】の状況だとします。
また、この会社の「間接費」を2.2億とします。

【表1】

売上 直接費 直接粗利 直接粗利率
全社 10億 7.0億 3.0億  
部門A 6億 4.2億 1.8億 30%
部門B 3億 2.4億 0.6億 20%
部門C 1億 0.4億 0.6億 60%

※直接粗利 = 売上 - 直接費用
※直接粗利率 = 直接粗利 ÷ 売上

ここに「間接費用2.2億」を売上案分方式で割り振ります。
【表2】 売上案分方式

直接粗利 売上割合 間接費 営業利益
全社 3.0億   2.2億 0.8億
部門A 1.8億 60% 1.32億 0.48億
部門B 0.6億 30% 0.66億 -0.06億
部門C 0.6億 10% 0.22億 0.38億

※営業利益 = 直接粗利 - 間接費

結果、「直接粗利」段階では各部門相応に利益が出ていたのですが、「営業利益」段階では部門間に大きな優劣が出ています。
この結果をそのまま社内で公表したらどうなるか。
➀部門Aの社員たちは、売上の大きい自部門が会社を牽引しているという自負があります。
それが、売上が1/6の部門Cと大差ない営業利益になっているのを見て、モチベーションはダダ下がりになるでしょう。
➁部門Bの社員たちは、自部門が営業赤字になっているのを見て、先行きに不安を抱くでしょう。
➂部門Cの社員たちは、実感のない自部門の営業利益に戸惑うでしょう。
➃軽率な役員は、「部門Bは廃止すべき」と考えるかも知れません。

これは非常に残念な話です。
この会社は売上10億、営業利益0.8億、中小企業としては優良な会社です。
会社をより良くするために作った「部門別損益計算書」が、社内を混乱させてしまうのです。
安易に割り振った「間接費」のせいで。

部門別損益計算をするとき、無理に間接費を割り振る必要はないと考えます。
無理に割り振って部門の「営業利益」まで出しても、割り振り方が恣意的なために、恣意的な営業利益になってしまいます。
ですから、【表3】のように、間接費用を部門に割り振らず、「全社の間接費用」として置いておきます。

【表3】

売上 直接費 直接粗利 間接費 営業利益
全社 10億 7.0億 3.0億 2.2億  0.8億
部門A 6億 4.2億 1.8億     
部門B 3億 2.4億 0.6億     
部門C 1億 0.4億 0.6億     

 

会社が利益を増やすためには、
➀各部門が「直接粗利」を増やす
➁本部が主導して、全社の「間接費」を減らす
しかありません。
それらの指標になる数字は、間接費を割り振らない【表3】でも確認できます。
間接費を無理に割り振ってしまうと、逆に間接費の管轄責任や削減効果が見えにくくなってしまいます。

表の精度をもっと上げたいなら、間接費の中をもっと細かく調べて、部門分けできるものを見つけて直接費に振替えるしかありません。
振替えれない間接費はそのままにしておく方が賢明です。

設備投資計画と「法定耐用年数」

設備投資計画と「法定耐用年数」

設備や機械に投資をすると、その投資額を「耐用年数」で減価償却することになります。
これは商法、法人税法で決められたルールです。
商法上の「減価償却」の目的は、
「設備の老朽化を、その設備の簿価を減額することで、貸借対照表をより会社の実態に近いものにする」
ということでしょう。
一方、法人税法上の「減価償却」の目的は、
「この耐用年数はよく調査して算出した標準的な年数だから、これより少ない年数で減価償却しちゃダメですよ、税金減っちゃうから」
ということでしょう。

会社の会計・税務では、この「法定耐用年数」を使わなくてはいけません。
逆に、会計・税務以外では、「法定耐用年数」に縛られる必要はありません
設備を導入したり管理したりするとき、自社独自の耐用年数を設定しても良いのです。
例えば2,000万の機械導入を検討するとします。

普通の会社A社は、何のためらいもなく「法定耐用年数」で投資回収計画を立ててしまいます。
機械代金 2,000万 ÷ 法定耐用年数 7年 = 年間減価償却 286万

それに対し、強い会社B社は、もっと早く投資を回収したいと考えます
4年で回収して、4年後にはまたその時点の最新鋭の機械に更新したいからです。
機械代金 2,000万 ÷ 自社設定耐用年数 4年 = 年間減価償却 500万

この違いは、機械導入の判断にどのような差を生むか。
A社は、年間286万の利益増を見込めるなら、「導入可」となります。
B社は、年間500万の利益増を見込めないなら、「導入不可」となります。
つまり、強い会社B社の方が投資に対して堅実な判断をすることになるのです。
そうすると、両社の優劣はさらに拡大します。

「法定耐用年数」は会社にとって理想の耐用年数ではありません。
特に新規の設備投資の際は、自社が目指す回収期間を耐用年数としてシミュレートすべきでしょう。

小規模店舗は、「賃料」を広告宣伝費と考える

日本橋の百貨店バイヤーから聞いたタメになる話

デパ地下やテナントビルで食品店を4、5店経営している知人がいます。
彼は以前から、「百貨店の(家賃に相当する)歩率が高くて儲からない」、とボヤいていました。
関西トップクラスのデパ地下にある彼の店は、よく流行っているのですが、トップクラスだけに、歩率も一段高いのでしょう。

高い賃料に懲りた知人は、次の出店は駅前のテナントビルを選びました。
しかしこれがなかなか思うような売上が取れず、苦戦しています。
一時は、百貨店から退店したいというような話をしていましたが、今は思いなおしているようです。
部外者であれば、「デパ地下にあるから売れるんだ」と当たり前に考えます。
しかし、毎月毎月大きな賃料を支払い続けていると、バカらしくなるのも分からなくはありません。

小規模の店舗にとって、「賃料」は「広告宣伝費」なのです。
全国チェーンの店舗を除けば、店単体の情報発信力=集客力はほぼゼロです。
「百貨店」や「イオンモール」や「楽天モール」に出店するのは、それを補うためでしょう。
売上に対して百貨店なら30%、イオンモールなら20%、楽天なら10%程度の賃料を取られます。
しかしそれは、単なる場所代ではなく、情報発信・集客のための「宣伝広告費」です。

ですから、自社の店舗のビジネスモデルを考える時、「賃料」を他の「広告宣伝費」と合わせて考えることをおすすめします。
例えば、売上を100としたとき
➀原価  40
②人件費  20
③賃料+広告宣伝費  25
というように。
これらは、①何を売るか ②誰が売るか ③どう売るか、に関する費用です。
この3つの費用だけで合計85ですから、これらをマネジメントすることは、ビジネスモデルをマネジメントすることなのです。

賃料は負担の大きな費用ではありますが、「どう売るか」の重要かつ戦略的な費用として扱う必要がありますね。

銀行取引で今やっておくこと、「連帯保証なし借入」

銀行

地方銀行の貸出意欲は依然旺盛です。
しかし私たち企業側に特段の資金需要がなければ、要らないお金を借りたくないので、ひたすら銀行の提案を断りつづけることになります。
ただ、こういう企業側に資金的余裕があり、借り手優位な状況で、試しておきたいことがあります。
それは「代表者の連帯保証」を付けない借入を起こすことです。

2013年に日本商工会議所と全国銀行協会が一緒に取り決めた「経営者保証に関するガイドライン」というものがあります。
日本商工会議所が「企業」を代表し、全国銀行協会が「銀行」を代表してまとめた「自主ルール」です。
その中では、中小企業が銀行から資金調達するとき、特別な理由が無ければ「代表者の連帯保証」を条件にしないことを謳っています。

30年前、私が銀行で融資業務をしていたころ、融資先の大半は中小企業で、代表者を連帯保証にとることは当然のことであり、それに疑問を持つことすらありませんでした。
入行2年目に、上場企業の子会社の短期貸付の稟議を書く機会があり、そのとき初めて「連帯保証人欄に斜線を引く」という経験をしました。
大企業は連帯保証人をつけなくてもいいんだ、と知りました。

前出の「ガイドライン」が出た後も、依然中小企業の「連帯保証」に関して取引銀行の態度に変化はありません。
銀行側から、
「御社の業績・財務を勘案すれば、連帯保証は必要ないということになりました」
とは言ってくれません。
ですから、こちら側から持ち掛けるのです。

銀行から借入してほしいと依頼があった時がチャンス。
「連帯保証をつけないなら、考えてもいいですよ」と答えます。
この時、欲張って既存借入をすべて「連帯保証なし」にしようと考えてはいけません。
ハードルが上がってしまいます。
大切なのは「実績づくり」です。
少額でよいので、新規借入を「連帯保証なし」にできれば、それは将来に向けての布石になります。