新しいチャレンジに、「障害」がつきまとう理由

 

何をやってもスッとは行きません。

新工場建設で基礎工事を始めたとたん、予期せぬ岩がゴロゴロ出てきたり。
ようやく決まった不動産売買の契約直前、なぜか持ち主のおばあちゃんの気が急に変わったり。
追加注文が来たと同時に、仕入先から材料の値上げ通告。
海外に雑貨を買い付けに行き、いいセレクトが出来たと思いきや、届いたときには半分近くが破損。
イベントの日に大雨。
などなど。

何かにチャレンジしたら、必ずそれを邪魔する「障害」が発生します。
簡単だと思った案件にも、用意周到に進めた案件にも。
小さな障害だったり、大きな障害だったり。
「なんて自分はツイていないんだ」
と嘆きたくなることもあります。
しかし、これは自分だけに起きていることではないでしょう。
障害は、「アクションを起こした」人に必ず、等しく起きるのです。

なぜチャレンジには、必ず障害が発生するのか。
シンプルに考えれば、事を起こす前にその障害発生を予測できなかったから
しかしこれだけ何をやっても障害が発生するということは、これもシンプルに考えれば、「障害の事前予測なんてできない」ということでしょう。
アクションを起こしてみないと分からないことが、たくさんあるのです。
つまり、「障害の発生」こそがアクションを起こした証なのです。

何かにチャレンジするとき、私たちは100メートル走やマラソンをイメージしてはいけません。
イメージするなら、何が出てくるか分からない「障害物競走」。
障害物をクリアすることこそが、タスクの「中心」です。

ところでこの「障害」は、悪いことばかりではありません。
それをクリアすれば、他社の参入障壁として機能するからです。
自社のチャレンジが成果を出し始めた頃、ライバル会社がそれを見てマネをしようとするかも知れません。
しかし大体において、ライバル会社には、こちらがクリアしてきた「障害」が見えていないものです。

日本版GPSを、工場で活用する

 

今月19日、人工衛星「みちびき」3号機の打ち上げが成功しました。
「みちびき」は全4基体制で、日本版GPS(全地球測位システム)の構築を目指すプロジェクトです。
来年春、4号機が打ち上れば、4基体制になります。
そうなれば、4基のうち少なくとも1基は常に日本の上空にとどまるため、GPSの精度が格段に上がるそうです。
常時、位置誤差は10cm以内になると期待されています。

これは使えます。
新聞には利用例として、自動運転向けの利用、三次元地図の作成、農機の自動運転などが挙げられています。

先日たまたま、近隣のソフトウェア開発会社の方とお話をする機会があり、この日本版GPSの話題になりました。
その会社は早くから、この日本版GPSの利用を取り込んだ、工業用・商業用業務ソフト開発を進めているとのこと。
その利用例として、私たちの工場を例にとって説明してくださいました。

利用例 ➀ 在庫管理と移動履歴管理
私たちの工場には、大手メーカーから預かった大きな半製品(1個10m以上)が、常時100個以上あります。
その100個の半製品はすべて型が違い、それぞれに付いてくるオーダーに従って加工をします。
ですから、次にとりかかるオーダーを決めたら、そのオーダー番号の半製品を保管場所から持ってこなければいけません。
しかし、なぜかそれがときどき行方不明になってしまいます。
そうなると1万坪以上ある敷地内を探し回ることになります。
→ 今後その半製品をGPSで個別管理するようになれば、半製品が今どこにあるか一発で分かり、探し回ることはなくなります
また、工場内の移動履歴を見れば、加工に要した時間も記録することが出来ます。

利用例 ➁ フォークリフトの効率利用
上の例と似ているのですが、工場内でフォークリフトを探し回ることがあります。
フォークリフトをいざ使おうと思うと、所定の場所に置いていない。
少し待っても返ってこない。
フォークリフトがすぐに使えないことは工場の効率低下に直結します。
それに探し回る時間が加われば、本当に効率を下げてしまいます。
→ 今後GPSで管理できるようになれば、使いたい人がスマホで位置を確認し、探さずに取りに行くことが出来ます
もっと進めば、自動で所定の場所まで戻ってくることも期待できるでしょう。
ルンバみたいに。

この2つの例は、皆さんにとってはピンとこない話かも知れません。
しかし私たちにとっては、非常に有益な話です。
ある人にとっては無益だけど、ある人にとっては非常に有益。
そのギャップこそが、この日本版GPSの可能性を示しているのではないでしょうか。
つまり、精度が高くなることで、自社の敷地内という狭い範囲でのデータ利用が可能になり、利用者それぞれがそれぞれの目的で衛星を使うようになるのです
日本版GPSの利用のルール、またそのコストがどれくらいか、まだハッキリしていませんが、非常に楽しみなプロジェクトです。

ゆとり教育の成否はまだ出ていない

 

ゴルフの松山英樹プロが、メジャー全米プロの優勝を惜しくも逃しました。
それでも現在、米ゴルフの賞金ランキング1位、世界ランキング2位と大活躍しています。
これまで日本人が成し得ないどころか、想像すらしなかったところに立っています。
彼は25歳、ゆとり教育真っ只中の世代です。

世界ランキングと言えば、テニスの錦織圭選手。
現在世界9位、トップ10を守っています。
これも日本人がそこまで行くなんて、かつては想像すらできませんでした。
彼は28歳、ゆとり教育の世代です。

フィギュアスケートの羽生結弦選手も23歳、「ゆとり世代」です。

ゆとり教育を受けた世代は、現在14歳から29歳くらいの子たち。
一般的に「ゆとり教育」「ゆとり世代」と聞くと、少し「失敗」のニュアンスを感じます。
経営雑誌にも、「ゆとり世代をどう育てるか」というような連載があったり。
それを推進した文科省でさえ、教育改革の名の下、「ゆとり教育からの脱却」を必死になって進めているように見えます。

しかしスポーツの世界では、ゆとり世代の人たちが、世界で大躍進しています。
50代の私たちの時代の部活は、みんなで坊主にして、あれだけ走って、あれだけ声出しして、あれだけうさぎ跳びして、あれだけ先輩にいびられて、
そんな私たち世代からは、世界トップを狙えるスポーツ選手は出ませんでした

ゆとり教育が、ゆとり世代の人たちに、どのような影響を与えたかは分かりません。
しかし、スポーツの世界では素晴らしい結果を出しています。
「スポーツが良くても、ビジネスではダメだ」
と決めつけるのも、根拠のない感情論に思えます。
今は20代の彼らが30代になると、ビジネス界でも世界トップを狙える人材が出てくるかもしれません。
40代になると、ノーベル賞候補の研究者がズラリと出るかもしれません。

「ゆとり教育」が良かったのか、悪かったのか、その結果はまだ出ていないのです。
時代の大きな変わり目に誕生したこの「ゆとり世代」は、新しい時代の価値観をいち早く身につける世代にも思えます。
もしかすると将来の日本を牽引する世代になる可能性だってあります。
そんな期待感をもって、彼らと付き合っていきたいものです。

儲からない売上

 

以前、アイスクリームブランドの立ち上げに携わっていた時の話です。

東京に1号店を出店し、半年後には都内の商業施設に2号店を出しました。
2年目には大手百貨店から、「お中元カタログ」への掲載を提案されました。
私はその提案にすぐ乗っかりました。
というのも、実は1号店、2号店の売上が計画の半分もいかない状況で、売上がほしくてしょうがない状況だったのです。
とにかく売上がほしい、どんな売上でもいいからほしい。

6月に入り、百貨店の中元がスタート。
産地直送形式なので、商品はアイスクリーム店から直接発送します。
百貨店からアイスクリーム店舗には、記入済みのヤマトの発送伝票が送られてきます。
中旬になり、伝票が日に2、3枚来るようになりました。
初めて掲載したのに、結構買ってくれる人がいるんだなと喜んでいました。
下旬になり、伝票は日に50枚になり、100枚になり、200枚になりました。

慌てました。
1セットが、カップアイス12個入りで5,000円。
12個のうち4個はパティシエメイドの手が込んだアイスになっています。
それなりの在庫はストックしていたのですが、このまま増えて行けば絶対に足りなくなる。
百貨店のギフトだけに、「足りない、送れない」は絶対許されません。
パティシエたちは毎日深夜までアイスを作りつづけました。

人海戦術でなんとかなるものは良いのですが、困ったのは在庫の保管場所です。
厨房の冷凍庫も店舗の冷凍庫もいっぱいになり、入れるところがありません。
それでも作り続けなければ品切れになる恐れがあります。
それで仕方なく、外部の冷凍倉庫に預けることにしました。
店舗スタッフが段ボールにカップアイスとドライアイスを詰め、冷凍運送業者に依頼して倉庫に搬入。

結局その夏、百貨店からもらった注文は1ヵ月半で、1,600セット、売上にして800万、通常の何倍もの売上が立ちました。
どれくらい利益が出るんだろう、期待しながら試算表を待ちました。
結果、損益はトントン、期待外れの数字でした。
百貨店の歩率は分かっていたことですが、人件費、倉庫代、運送費など、予想していなかった経費が大きく膨らんでしまったのです。
あの忙しさは何だったのか・・・。

この件で学んだことは、
➀モノを動かしたら儲からない
➁社外に仕事を出したら儲からない
ということ。
単価の安い商品を、「あっちに動かしこっちに動かし」してしまうと、すぐに儲からなくなってしまうのです。
製造や発送が増えることに伴う人件費増は、変動費として売上増で吸収されるので、問題ありません。
しかし冷凍倉庫代・往復の冷凍急便代、それにかかる人件費は、売上に対する変動費にはなりません
まったく余計な費用です

自社の物理的なキャパシティーを超える売上は、儲からない売上なのです。

ゴルフ、シングルとアベレージとの一番の違い

 

ゴルフのシングルプレーヤーと、私たちアベレージ(平均レベルの)プレーヤーとの一番の違いは、コースマネジメントではないでしょうか。

アベレージプレーヤーは、どんなところからでもピンを狙います。
ティーショットが大きく曲がって、ボールが急斜面に止まっても、そこからピンを狙います。
フェアウェイバンカーのあごに近いところに止まっても、そこからピンを狙います。
林の中に入っても、木と木のわずかな隙間からピンを狙います。
深いラフにスッポリ入ったボールが見えない状況でも、ピンまでの距離のクラブでピンを狙います。

そんな時、シングルプレーヤーはピンを狙いません。
まずボールのライ(状態)をしっかり見て、どんなクラブで打てば確実にそこを脱出できるか考えます。
そのクラブで、次の3打目を打ちやすい場所に向かってショットします。

シングルプレーヤーはなぜ、ピンを狙わないのか。
それは、そこからピンを狙うことがどれだけ難しいかを知っているからです。
ボールのライを見て、スタンスの傾きを見て、ピンまでの障害物を見て、少し曲がった時に入りそうなバンカーや池を確認する。
この状況からピンを狙っても、失敗して傷口を広げる確率が70%以上ある、と判断したからピンを狙わないのです。

逆にアベレージプレーヤーは、自分が打とうとしているショットがいかに難しいことか分かってないのです。
シングルプレーヤーが傷口を広げる確率を70%以上と予測しているライであれば、アベレージプレーヤーなら90%以上の確率でドツボにハマるでしょう。
なのに「何とかなる」で打ってしまうのです。

結局、一番ゴルフが上手な人が一番「難しさ」を認知出来て、一番ヘタな人が一番「難しさ」が分からないのです。

これは仕事でも同じではないでしょうか。
例えば、デキる管理職は、あるプロジェクトを誰かに任せる時、その仕事の難易度を正確に測り、その難易度に合った部下を担当にします
少し苦労するかもしれないけど、何とかやれるであろう部下を選ぶのです。
そうすればプロジェクトも完遂し、部下も成長します。

デキない管理職は、プロジェクトの難易度を正確に計測することなく、立候補したヤル気のある部下に任せてしまいます
「がんばれ」と。
結果、プロジェクト半ばで先輩社員が尻拭いすることに。

ゴルフも仕事も、結果を残す人は、「難易度」を測れる人なのです。