考える現場、考えない現場

 

工場にしろ、店舗にしろ、現場の人が考えて行動することは、当然悪いことではありません。
「考える現場」と「考えない現場」のどちらが好ましいかと問われたら、誰でも「考える現場」と答えるでしょう。
しかし、この問いについては、もう少し深く考える必要があります。
「考えない現場」の方が儲かるケースがあるからです。

モノづくりで利益を出す一番オーソドックスな方法は、同じモノを作り続けることです。
三角の製品を作った後に四角を作り、丸を作って、また四角、という作り方では効率は上がりません。
三角をずっと作り続ける方が、はるかに効率が上がり、儲かる仕事になるのです。
この「三角を作り続けている」状態では、現場はほとんど何も考えていません
考えなくても体が自然に、スピーディーに動いている状態。
これが一番儲かる状態です。
一個一個考えながら作るようでは儲かりません。

私たちが考えるべきは、三角・四角・丸の製品の製造計画をどう工夫して、同じ製品を作り続ける状態に持ち込むか、です。
これを私は、「得意パターンに持ち込む」と言います。

これは製造業に限らず、小売業やサービス業にも当てはまります。
小売店で、あるアイテムを大量に売りさばきたい時、得意なセール方法があればそれに乗っければよいでしょう。
スタッフも一回ずつセール方法を考える必要はありません。
何度もやっている「得意パターン」なので、考えなくても精度の高い準備が出来ます。
肉屋で売れ残りそうな牛肉を、「手作りハンバーグ」に変える得意パターンがあれば、その都度その都度、在庫処分に考え悩む必要はないでしょう。

「考えない現場=儲かる現場」は自社の得意パターンです。
得意パターンをつくるために、考えるのです。

マツダスタジアム+ダ・ゾーンなら最高

 

先日、久しぶりにマツダスタジアムに行ってきました。
高校時代のクラスメートがチケットを取ってくれ、ミニ同窓会を兼ねた観戦でした。
近年の「カープ女子現象」に加え、現在セ・リーグ首位ということもあり、今はチケット入手がかなり困難だそう。

マツダスタジアムは、2009年、広島駅東側の貨物ヤード跡に完成、当初こそ集客に苦戦したそうですが、アメリカのボールパークコンセプトを完全導入した施設・フード・アトラクションは、すぐに人気になりました。
マツダスタジアム、コストコ、レジデンス(マンション)など、一帯を三井不動産が複合開発しました。
このエリアは(失礼ながら)、昔からごちゃごちゃ・ドンヨリしたイメージだったので、今の明るい雰囲気には隔世の感があります。

ところで、今日の日経新聞に、「DAZN(ダ・ゾーン)がJリーグサッカー場にWi-Fiを整備する」という記事がありました。
DAZNはJリーグの放映権10年分を2,100億円で買った英国の動画配信サービス会社です。
Wi-Fiが整備されれば、観客はスタジアム専用アプリを使って、試合中に相手チームの情報やいろんなデータにアクセスしながら観戦することが出来ます。

マツダスタジアムで久しぶりに観戦すると、慣れていないせいか大切なところをいっぱい見逃しました。
枝豆→ビール→焼き鳥→ビール→トイレ→ビール、を繰り返していると、すべての得点シーンを見ることは結構難しいです。
野球でも、スタジアムの中で自分が欲しい情報をチェックしたり、見逃したシーンを再生したり出来たら、もっともっと楽しめそうな気がします。

そういえば昔の閑散とした「広島市民球場」には、一人で来場して自由席の端っこに座り、イヤホンでラジオを聴きながら観戦する、そんな「野球通」のおじさんがいました。
今考えれば、あのおじさんは野球観戦の「先駆者」だったのかも知れません。

松浦輝夫さんを偲ぶ

 

これまで数々の失敗をしてきましたが、その中で群を抜いてマヌケで、忘れられない失敗があります。

私が会員になっているゴルフ場では、8年前まで毎年女子プロのトーナメントが開催されていました。
今からちょうど10年前の大会、私はボランティアで「スコアラー」を担当しました。
スコアラーというのは、特定の組について回り、その組3選手のショット一打一打の記録を、ハンディターミナルに打ち込む役割です。
打数だけでなく、打球がフェアウェイに行ったのか、ラフやバンカーに行ったのかも打ち込みます。
そのデータは大会のスコアボードにリアルタイムで反映され、同時に「日本女子プロゴルフ協会」の管理データとして蓄積されるのです。

その年、会員の中でもう一人スコアラーをした人がいました。
70過ぎで、色白で、細くて、ひょろっと背の高いおじいさん。
屈強な感じの方ではないので、私は
「(1ラウンドずっと歩きになりますが) 大丈夫ですか」
と声を掛けました。
するとその方は、ニコニコとやさしい笑顔で、「大丈夫ですよ」と返事をされました。

後で知ったのですが、その方は日本で初めてエベレストの登頂に成功された「松浦輝夫さん」だったのです。
1970年5月、日本山岳会エベレスト登山隊で、西稜ルートリーダーとして、植村直己さんとともに登頂された方です。

エベレストに登った方に、1ラウンド歩くのが大丈夫か、訊いてしまうとは‥‥。
後日、私はそのことを松浦さんに謝ったのですが、いつものやさしい笑顔で、「いえいえ」と応えていただきました。

それ以来、松浦さんは会うたびに少しずつ、山についての話をしてくださいました
一緒にラウンドした昼食で、
「8,000メートルでの呼吸ってどんな感じなんですか」
と率直に尋ねると
「そうねえ、子供の頃プールで、息継ぎしないで泳げるとこまで思いっきり我慢して泳いだことあるでしょ。
それでもうこれ以上無理っていうところで顔を上げようと思ったら、友達に頭を押さえられて水の中でもがいてる、って感じやねえ」
と答えていただきました。

私がいつも興味深そうに聞いていたせいか、
「こんな話で良かったら、会社でもどこでも話をしに行くよ」
とも仰っていただきました。
「いつかお願いしよう」、と思いつつその機会をつくれないまま、2年前に松浦さんは他界されました。

謙虚で穏やかで親しみやすい人柄と、「偉業」とのギャップがとても魅力的な松浦さんでした。

高野山の先生の「ありがたい話」

 

もう何年も前に高野山の偉い方(だったと思います)の講演を聴いて、印象的だった話があります。

こんな話でした。
大勢の前で説法をしても、全員に同じように聞こえているわけではない。
実際、同じ話を同時に聞いたにもかかわらず、聞き手によって心に残った部分はさまざま。
ある人は「悲しい話」と受け取り、別の人は「恥ずかしい話」と受け取り、また別の人は「痛快な話」と受け取る。
またある人は、その話から何も受け取っていない。

それはちょうど、ラジオに似ている。
私たちの周りには、目に見えないけど、たくさんのラジオの電波が飛び交っている。
でもそれはラジオのスイッチをオンにしなければ聞こえない
説法を聞いても何も受け取っていない人は、ラジオをオフにしているのだ。
ラジオをオンにしている人たちも、自分がどこにチューニングしているかで、聞こえるものが違うのだ。」

私たちは、自分が話したことは全部とは言わないまでも、7割程度は相手に伝わっていると考えてしまいます。
しかしどれだけ伝わったかは、聞き手のラジオ次第なのです。
本当に相手に何かを伝えたいなら、相手のラジオがオンになっているかよく確認する必要があります。
話しながら相手のスイッチの場所も探さなくてはいけないのです。
見つけたら、こちらからそのスイッチに手を伸ばしてオンにできたらいいのですが・・・・。

フランチャイズ加盟の前に、絶対に、何度も、しっかり確認しておくこと

コスト

 

私たちのグループ会社では、これまでいろんなフランチャイズの商売にトライしてきました。
雑貨店、レンタルビデオ、百円ショップ、カフェ、教育、介護、リサイクル、幼児教育、などなど。
全部合わせると、数十店舗になります。
それらの店舗に勝ち負けを付けるとしたら、ザックリ「3勝7敗」もしくは「2勝8敗」くらいの感じでしょうか。
正直、なかなか儲かりません。

フランチャイジー(加盟店)になるかどうか検討する際、当然フランチャイザー(FC本部)から収支のシミュレーションが提示されます。
開業後15年間くらいの損益とキャッシュフローの表。
何年目で黒字になり、何年目で投資回収できるか、などを示す資料です。
加入する側は、売上が徐々に上がっていくシミュレーションを見て、
「本当にこんな感じに増えていくのかなあ」
と期待半分、不安半分の気持ちになります。

シミュレーションを見る時、どうしても「売上」、「利益」、「キャッシュフロー」ばかり見てしまいます。
しかし、本当にしっかりチェックしなければいけないのは、「経費」です。
特に「人件費」と「本部経費」。
本部経費には、「売上の5%」といったようなロイヤリティの他に、研修費や広告負担料など、FCごとの独自費用があります。

なぜ「費用」をしっかりチェックしなければいけないのか。
それは大概において、「売上」がシミュレーションのようには上がらないからです。
売上が上がらなければ即赤字になりますが、その赤字幅を決定するのは「費用」です。
私たちが過去にトライしたFCのシミュレーションでもっともタチの悪いものは、人件費が過少に見積もられていたケースです。
実際に事業をスタートしてみると、最初からシミュレーションの人件費には収まらないのです。
最初はスタッフも不慣れな状態なので、「人数多めでも仕方ないか」でスタート。
しかし数ヵ月たっても人手に余剰は発生せず、逆に売上が増えてくるとさらに人員が必要になったり。
結果、いつまでたっても人件費はシミュレーションから大きく上振れした状態になってしまいます。
後で検証しても、「どう考えてもそんな人数では出来ないよなあ」というシミュレーションだったのです。

FC本部がいくら出店ノウハウを持っているとしても、「売上」予測が外れることは、ある程度仕方がないことでしょう。
しかし、「経費」予測は絶対に外してはいけません
既存店のデータをたくさん持っているのですから、外すわけはないのです。
それをFC本部がエンピツをなめてシミュレーションを細工しているのであれば、大問題です。

売上が上がらない「赤字」も、経費が増えた「赤字」もすべてフランチャイジーの負担です。
FC本部が負担してくれることはありません。
ですからシミュレーションの段階で、「経費」の一つずつについてFC本部と妥当性を確認することをおすすめします。
特に人件費と本部経費については、「大きく上振れした場合は補償する」くらいの言質をとっておくべきです。
後で実際に補償できるかは分かりませんが、少なくとも過少見積もりは排除できるでしょう。