IoT+サイバー攻撃=「壁に耳あり障子に目あり」

 

ウクライナが国レベルで集中的なサイバー攻撃を受けているとのこと。
変電所へのサイバー攻撃で、都市への電力供給が停止するなど、映画で見た危険が現実になってしまっているのです。
真偽は定かではありませんが、それらのサイバー攻撃は敵対する国の傘下のハッカー集団が仕掛けているとのこと。
そのレベルのハッカー集団がその気になれば、小国のシステムに入り込むことなど、さほど難しいことではないのでしょう。

ところで、先日の日経新聞に、「IoT 安全性に公的認証を」という記事がありました。
セキュリティレベルの高いIoT機器に公的認証を与え、その機器を使うことでサイバー攻撃を受けるリスクを下げよう、というものです。
しかしこの記事とウクライナの記事を並べた時に、今後間違いなく私たちの生活に浸透する「IoT」は、果たして安全に運用されるのか、非常に心配になってきます。

今後、家電メーカーや住宅設備メーカーは、次世代のメシの種として、IoT機器をバンバン投入してくるでしょう。
当然私たちの身の回りの機器のIoT比率は急増します。
テレビを買うときも、ほしくなくてもIoT機能がもれなくついてくるでしょう。

あらゆるモノがネットでつながる「IoT」
それは、あらゆるモノがサイバー攻撃を受ける危険性がある、ということ。
例えば、これから普及する「AIスピーカー」も、サイバー攻撃でそのまま「盗聴器」に。
人の表情を読み取る犬型「ロボット」の目も、サイバー攻撃で「監視カメラ」に。
IoT+サイバー攻撃=「壁に耳あり、障子に目あり」
となる恐れがあるのです。

このようなサイバー攻撃に対する最も有効な防止策は、「ネットにつなげない」ことでしょう。
家電メーカーや住設メーカーは、機器にIoT機能を付けるのであれば、同時に「つなげない」機能も充実させてほしいものです。
何事にもアクセルとブレーキが必要です。

「時間を買う」ことが、常に正しいわけではない

 

知人が経営している運送会社では、高速道路の利用を禁止しています。
単純に高速料金を節約するためです。
その会社は、20台ほどの中型トラックで、比較的近距離の輸送を請け負う中小企業です。

このような運送会社が多いせいか、高速道路があるルートでも一般道をトラックがバンバン走っています。
「事故や渋滞の原因になるから、商用のトラックは高速道路を走ってくれたらいいのに」、
と私たち一般ドライバーは思います。
「高速代をケチっても、一般道をゆっくり走ってちゃ、時間がもったいないじゃないか。
トラックの運転手不足なんだから、もっと高速を使って効率を上げればいいのに」
とも。

しかし、冒頭の運送会社の社長は言います。
「高速道路を使えば確かに早いけど、それで1、2時間早く帰ってきてもねー。
その時間で出来ることは何もないよ。」
なるほど。
高速道路を使って往復、2千円のコストをかけて1時間短縮したところで、その1時間が次の売上を生まないのなら、ただ経費が2千円増えてしまうだけです。

社長は続けます。
「高速を使うかどうか、都度決めたり、判断を運転手に任せたりすると、運転手が迷ってしまうから、『使わない』と決めた方がいいんだよ」
なるほど。
「高速は使わない」と決めてしまえば、ルートが決まり、所要時間が決まり、運転手が迷う余地はありません。
同時にコストも確定するので、仕事単位の利益も確定します。
その仕事単位の利益を1ヶ月積み上げて、会社が十分利益が出ているなら、それでOKというわけです。

ビジネスでは、「時間」「スピード」が何よりも大切、ということが喧伝されます。
「時間をカネで買う」ことは、常に正しいことのように。
しかしそれは、その結果浮いた時間で何らかの成果を上げれることが前提です。
コストをかければ、キャッシュが確実に出ていきます
しかしそれによって浮いた時間で、キャッシュを稼げるかは、極めて不確実です

中小企業では、不確実な利益を求めず、確実にコストを抑える方が、最終的に利益を残す可能性は高いでしょう。
一(いち)ドライバーから起業した運送会社の社長は、経験則でそれを知っているのです。

マツダは新型エンジンで、逆張り戦略を手に入れた

 

マツダが来年投入する新型エンジンは、どえらいエンジンです。
今流行りのハイブリッドやディーゼルではなく、もちろんEV(電気自動車)でもない、ガソリンエンジンです。
「HCCI燃焼」という究極の高効率燃焼理論を、世界で初めて実用化したのです。
この新型エンジンで、燃費は従来比30%アップするとのこと。
小型のデミオクラスで、燃費は24.6 → 32.0km/Lに伸びます。
ハイブリッドのアクアが37 km/L、フィットが33.6 km/Lですから、ガソリン車でありながらかなり近い数字を叩き出しているのです。

それにしても毎日のように新聞紙上に、自動車業界がEVに向かっている記事が載っている今、なぜ新型ガソリンエンジンなのか。
非常にタイミングの悪い開発のようにも見えます。
しかしこのマツダのHCCI実用化には、重要な意味があります。
それは究極のガソリンエンジンに辿り着いたという意義です。

今、欧州各国は、EVへの転換競争を始めています。
フランスでは2040年までに純粋なガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの生産・販売を禁止するとの声明を出しています。
つまりEVやハイブリッドなど、モーターを積んだ車しか認可しないのです。
そういう国の方針に沿って、ボルボなど自動車メーカーもEVへの完全移行を計画しています。

このEVへの完全移行を目指す目的は、環境負荷の軽減と、排ガスによる健康被害の抑制。
確かにその目的に照らして車1台を比べれば、EVに分があります。
しかしそもそも、その電気がどう作られて、どう運ばれてくるかが決まらなければ、EVへの転換が環境負荷を軽減するかどうかは分かりません。
発電所でバンバン石炭や石油を燃やして、その電気でEVを走らせては、目的から外れてしまいます。
つまり、世界がEVへの転換に向かうのは間違いないのですが、100%EVになるのがベストかどうかは、まだ誰にも判断できないのです。

20年後のエネルギーのベストミックスの状況によっては、ガソリン車も一定割合で残る可能性もあります。
もし一定割合でガソリン車を残すなら、それはマツダが実用化したHCCIでしょう。
どの会社も実用化を目指していたHCCI。
それをいち早く手に入れたマツダは、EV化の逆張り戦略も手に入れたと言えるかも知れません。
大成功の可能性もアリです。

TSUTAYA、目標売上が取れる店と取れない店

レンタルビデオとスマホが取り合う「時間」

 

「レンタルビデオ店で、目標売上が取れる店と取れない店の違いは何か」

この質問を、例えば大学生にしてみると、
「品揃えじゃないですか」
と返ってきます。
しかしTSUTAYAなどでは、揃えるべき作品はすべて本部が決めるので、どの店も違いはありません。

「商圏の良し悪しではないですか」
それは、出店検討の段階でTSUTAYA本部が入念に商圏調査をしているので、売上の目標はそれに合わせたものになっています。
1,500店近い店舗網をもつTSUTAYAの商圏調査は国内トップクラスの精度があります。

「スタッフの接客ですか」
確かにそれもある程度売上に影響するでしょう。
しかし決定的な要因にはなりません。

答えは、「オペレーション力」です。
具体的には、返却されたビデオをどれだけ早く処理して棚に戻すか、です。
「そんな当たり前のことか」と軽く考えてはいけません。
例えば、レンタルで一日50万円の売上を取る店舗では、一日何本のビデオが貸し出されるか。
レンタル単価を1本350円とすると、1,428本です。
毎日1,428本貸し出すということは、毎日1,428本返ってくるということ。
つまり毎日1,428本の返却処理をして、棚に戻す作業が発生するのです。

棚に戻さなければ、次の売上は立ちません。
お客が借りたいと思う作品があっても、棚になければ(貸出中であれば)、借りることはできません。
ですから、この返却処理を2時間で出来る店と、半日かかってしまう店では、まったく違う売上になってしまうのです。
機会損失の違いと言ってもいいでしょう。

これはレンタルビデオ店に限ったことではありません。
他の小売店でも、いくらバイヤーがいい商品をセレクトしても、店舗スタッフがタイムリーに商品を店に出さなければ売上は立ちません
お客がバックヤードの段ボールの中を探してくれはしないのです。

売上が思ったように上がらない店は、まずオペレーション力をチェックする必要があります。

「米トイザラス、破産申請を検討」で再認識すること

 

米国のトイザラスが破産申請を検討しているとのこと。

1991年、トイザらスが日本に上陸してきた時のことを鮮明に覚えています。
それは、流通の「黒船来航」という騒ぎだったからです。
当時のトイザらスに関して、2つのキーワードがありました。
「大店法」「カテゴリーキラー」です。

1991年当時は、まだ現在の「大店立地法(大規模小売店舗立地法)」はなく、「大店法(大規模小売店舗法)」の時代でした。
大店法は一言で言えば、大きな商業施設の出店を規制するものでした。
地元の商店を守るために。
日本でのトイザらスの店舗展開は、先陣を切って大店法に切り込む戦いでもありました。
2000年に、大きな商業施設を実質的に容認する「大店立地法」が施行され、大店法は廃止されました。
その後は、トイザらスと比べ物にならない大きなショッピングモールが全国に次々とつくられました。
今考えれば、この日本の流通業の大きな転換点をつくったのがトイザらスでした。

トイザらスは「カテゴリーキラー」という考え方も日本に持ち込みました。
「おもちゃ」という単一カテゴリーで大きな店をつくる。
人口50万以上の市の郊外、幹線道路沿いの大きな敷地に、大きな店舗と大きな駐車場をつくる。
大きな店舗と駐車場には、広い商圏から集客する吸引力がある。
そして商圏内の同業者から根こそぎ客を奪う、という考え方です。

あれから四半世紀、日本の流通に大きなインパクトを与えた「トイザらス」が、新しい潮流に飲み込まれる立場になりました。
どの時代も、その時に新しく起きたことが永遠に続くように思いこんでしまいます。
しかしトイザらスの記事を読んで、「永遠はない」ことを再認識しました。
今の新しい潮流「ネットショップ」も、例外ではないのです。