試算表の評価基準を決めてみる

「純資産合計」は、これまでの頑張りの凝縮

 

ほとんどの会社で、月の半ばには前月分の試算表が出てきます。
その試算表を見て、前月の損益状況をどのように評価すればよいか
「黒字だから良かった」「赤字だから悪かった」という大雑把な評価で終わってしまっては残念です。
かと言って、「どれくらい良かった」「どれくらい悪かった」ということを表現するのは結構難しいことです。
試算表を読み込む力も人それぞれ、「どれくらい」についてはバラバラな認識になってしまいます

そこで、「どれくらい良かった」「どれくらい悪かった」も分かるように、業績の評価基準をつくってみてはいかがでしょう。
例えば、損益状況を学校の通信簿のように、A・B・C・D・Eの5段階で評価するのです。

<評価基準の例>
A 大変優れている  キャッシュフローが300万円以上プラス
B 優れている    キャッシュフローがプラス
C ふつう      経常利益がプラス
D 努力を要す    営業利益がプラス
E 大変努力を要す  営業利益がマイナス
(※キャッシュフロー = 経常利益-借入金返済+減価償却 = 現預金の増減)

このA〜Eの中で、合格点はCです。
毎月継続してBが取れれば、現預金が減っていないので、資金不足に陥ることはありません。
損益は良好な状況と言えるでしょう。
逆にEであれば大問題です。
営業利益ベースで赤字になるということは、「経費(インプット) > 粗利(アウトプット)」ですから、事業が商売として成立していないこと。
このEが続くようだと根本的な事業の見直しが必要です。

このように、全社統一の基準で毎月損益を判定すれば、
➀ 関係者全員が、同じ判定を共有するので、問題意識も共有しやすくなる
➁ 判定が上下するのを見ることで、業績推移を感知しやすくなる

経理が手間ひまかけて作った試算表、それを効果的に社員にフィードバックしたいものです。

「ふるさと納税」で、忘れてはいけないこと

 

ふるさと納税は、制度の良し悪しは置いといて、地方が主役になる全国イベントとしては、大変な盛り上がりです
国が仕掛けた制度でこんなに盛り上がるのは珍しいことです。

しかしこの「ふるさと納税」で気になることがあります。
高価な「返礼品」についてではありません。
市や町の立場になれば、これまで入ってこなかった新規の税金を獲得するために、返礼品で競争する、というのは理解できます。

気になるのは、以前から普通に多額の住民税を納めている高額納税者です。
返礼品が無くても、何十年も数百万の住民税を納め続けている人たち
そういう高額納税者は、港区だけにいるわけではありません。
どんな地方の市町村にもいるでしょう。
市役所が、こういう人たちをケアすることなく、ふるさと納税の返礼に必死になるのに違和感を覚えます。

市や町は、住民税をたくさん納めている人にも、お礼を出してはいかがでしょうか。
お礼といっても大したものではありません。
県立美術館のチケットだったり、市営駐車場の回数券だったり、町主催のイベントの招待券だったり。
そんな市町村にとってコストのかからないものでいいのです。
通常、住民税をたくさん納めている市民には、お礼がないどころか、逆に児童手当など各種手当が減額されたり不支給になったりします。
社会保障の観点からは仕方のないことですが、だからこそ「大したものでない市営施設のチケット」などをお礼として贈ればよいと思うのです。

高額納税者はそんなものは要らないでしょう。
でもそれでいいのです。
「〇〇様、いつも市政にご支援ご協力いただきありがとうございます。
昨年度は、おかげさまで市民の念願だった市民プールの改修を行うことが出来ました。」
という手紙をつけて贈るのです。
高額納税者が喜ぶのは返礼品ではなく、そんな気遣いです。

ふるさと納税が盛り上がっている今、本当にお礼すべき人へのケアも忘れてはいけません。

東芝が「半導体部門売却を急がない理由」の憶測

 

東芝の半導体部門の売却に進展がありません。
日経新聞は、この件について厳しい意見を書いていました。
「混迷を深める交渉過程であらわになったのは、社長を筆頭とする首脳の見通しの甘さと、決断できない組織体質だ」

確かに、何度も決算発表を見送って、切羽詰まった状況になっているにもかかわらず、報道で見る限り、売却交渉にスピード感を感じられません
「東芝は実は、半導体部門を売る気が無いのではないか」
と思えてくるくらいです。

しかし今、東芝が上場を維持したまま再建を目指すためには
➀米原発子会社の損失を確定する
➁半導体部門を売却して、その損失を穴埋め、債務超過を解消する
➂監査法人の適正表明がついた決算発表をする。
しかないはず。
もう「売らない」選択肢は無いのです。

それでも➁の売却を急がないとすれば、➀と➂が目途が立たないからではないか、売却よりも難しい問題があるのではないか、と勘繰ってしまいます。
➀と➂が出来ないのであれば、上場維持は出来ません。
半導体部門の売却だけ出来ても仕方ないのです。

真偽は分かりませんが、時間が経てば経つほどこんな憶測が飛び交います。

ネットショップの独壇場、「駆け込み注文」

 

「あす楽(あすらく)」とは、楽天市場の翌日配送サービスです。
モール運営側は、出店者にできるだけ「あす楽」商品を増やすように推奨しています。
単純にその方が、売上が上がるからです。

知り合いが出店している楽天内のスイーツショップは、売上の9割が誕生日用のケーキです。
「ひかるちゃん、おたんじょうびおめでとう」
お客さんが希望するメッセージをチョコプレートに書いたりするので、原則、注文日の翌々日発送です。
「あす楽」対応はしていません。
ところが翌日発送や当日発送を依頼してくるお客がどれだけ多いか

誕生日は毎年動きません。
バースデーケーキであれば、いくらでも計画的に探して、選んで、注文できるはずです。
それが駆け込み注文になってしまう。
どんな事情かは分かりませんが、ズルズルズルと日にちが経ち、ギリギリの注文になってしまったのでしょう。

ある人は、デパ地下巡りをしてベストなケーキを選ぼうと考えていたのに、1、2店回ったところで中断。
続きは来週と考えていたけど、結局行けずじまい。
結果、誕生日ギリギリになってネットで注文。

またある人は、最初からお取り寄せでケーキを用意しようと考えて、ネットサーフィン。
気合を入れて一つずつレビューを読み込み情報収集。
しかし情報が増えるとその分迷いも増える。
結果、誕生日ギリギリになって、検索上位のケーキをネットで注文。

こんな感じでしょうか。
一つ確かなことは、どちらもケーキを探しているお客の中に、「最後はネットショップで何とかなる」という心理があるのだと思います。
逆に言えば、「駆け込み注文」への対応は、ネットショップの独壇場の強みにもなるのです。

変容する「設備投資」、今年が重要な転換点かも

 

日経新聞によると、2017年度の国内の設備投資計画は、全産業合計で13.6%増、リーマンショック後で最高の伸びとのこと。

「設備投資」と聞いてイメージするのは、「増産」「事業拡張」「新分野進出」です。
しかし今の設備投資は違います。
セブンイレブンの改装、ヤマトの物流施設投資など、目的は「人不足」に対応するための設備投資です。
老朽化した工場を「スマート工場」に置き換えるのも、少人数で高効率な生産体制をつくるためでしょう。
人が採用しにくい都心部から、比較的採用しやすい地方に工場やオフィスを移転するのもそう。
どれも人不足に対応するための、「せざるを得ない」投資なのです。

人手不足の根幹にあるのは、「人口減少」や「少子高齢化」。
かつては、その「人口減少」によって経済全体も縮小する、と言われてきました。
働き手が減って、消費する人も減るのだから、経済は当たり前に縮小すると。
しかし最近は、「そうではない」という見方も出てきました。
「経済を成長させるのは人口ではない、技術革新だ」という見方です。

確かに、経済の「供給サイド」に関して言えば、ヘタに人間が作業するより、AIを備えたロボットの方がはるかに生産性の高い仕事をするでしょう。
そこまで一気に転換しないとしても、働き手が徐々に減る間に、技術革新でその穴埋めくらいはできるでしょう。
「需要サイド」はどうか。
人が減ると、食べるゴハンの量が減ります。
ディズニーランドの入園者数も減るかも知れません。
しかしロボットだって何も食べずに仕事をするわけではありません。
つまり中身は違うけど、新たな「需要」が生まれ、必ずしも縮小するとは言えないのです。

私たちの未来の豊かさは技術革新に支えられるのです。
決して人口が減ると、その分だけ残った人間に過重労働が課されるわけではありません。
逆に将来は、技術革新によって人間はほとんど働く必要がなく、それでいて収入が入ってくる、なんていう見立てまであります。
5年前までそんな話を聞いても、バカげた話として流していたでしょう。
しかしAI、IoT、自動運転、などが現実的になった今、そんな世界も想像できるようになりました。

人手不足 → 採用難 →、効率化投資
これが今の設備投資ですが、現段階では対処療法的な投資に見えます。
しかしこれは、人に代わっって機械やAIが付加価値を生み出す、という未来への転換点なのかも知れません。