「分かった!」という勘違い

「分かった!」という勘違い

これまでに何度、「正しいゴルフスイングがついに分かった!」と思ったことか。
ラウンドで絶好調になり、ナイスショットが連発、ベストスコアを大きく更新したとき。
練習場で、気まぐれに試した打ち方が、なぜかしっくりきたとき。
YouTubeのレッスン動画で、自分の悩みにピッタリ対応する動画に出会ったとき。

でも、その「分かった!」を引っさげて意気揚々と臨んだラウンドで、思うような結果が出ることはまずありません。
むしろ、スイングは崩壊、スコアはいつも以上にひどく、心はボロボロ、というのがたいがいです。
結局、「分かった!」というのは勘違いで、実は何も分かっていなかったのです。

人間社会でうまくいかない事柄のほとんどは、「分かった!」「気づいた!」という勘違いが原因になっているように思えます。
この仕事は自分しかできない、という勘違い。
逆に、この仕事は自分にはできない、という勘違い。
あの部下は何をやらせても失敗ばかり、という勘違い。
あの人が助けてくれるはずがない、という勘違い。
あの商品がヒットしたのは、この新機能を追加したから、という勘違い。
大きな会社と取引すれば安泰、という勘違い。

「勘違い」は「思い込み」とセットです。
「勘違い」と「思い込み」は、ものごとがうまく行くのを邪魔します。
なぜか。
それは、「勘違い」「思い込み」は、いろんな可能性を排除するからです。
排除して、「分かった!」の一点に賭けようとするからです。

ゴルフも仕事も、唯一絶対の「答え」があればラクです。
それを発見すれば、らくらくベストスコア、らくらく最高益ですから、みんな必死に「答え」を探そうとします。
しかし皮肉なことに、必死な思いが拙速な「分かった!」を生み、それが悪い方に作用するのです。

ものごとをうまく行かせるために大切なことは、「分かった!」を排除すること
そうすれば、手放していたいろんな選択肢が、自分の中に戻ってくるでしょう。
ものごとを確実に前進させるためには、「ベスト」ではなく「ベター」を探すことです。
そもそも「ベスト」なんてあるかどうかも分からないのですから。

ゴルフ、シングルとアベレージとの一番の違い

 

ゴルフのシングルプレーヤーと、私たちアベレージ(平均レベルの)プレーヤーとの一番の違いは、コースマネジメントではないでしょうか。

アベレージプレーヤーは、どんなところからでもピンを狙います。
ティーショットが大きく曲がって、ボールが急斜面に止まっても、そこからピンを狙います。
フェアウェイバンカーのあごに近いところに止まっても、そこからピンを狙います。
林の中に入っても、木と木のわずかな隙間からピンを狙います。
深いラフにスッポリ入ったボールが見えない状況でも、ピンまでの距離のクラブでピンを狙います。

そんな時、シングルプレーヤーはピンを狙いません。
まずボールのライ(状態)をしっかり見て、どんなクラブで打てば確実にそこを脱出できるか考えます。
そのクラブで、次の3打目を打ちやすい場所に向かってショットします。

シングルプレーヤーはなぜ、ピンを狙わないのか。
それは、そこからピンを狙うことがどれだけ難しいかを知っているからです。
ボールのライを見て、スタンスの傾きを見て、ピンまでの障害物を見て、少し曲がった時に入りそうなバンカーや池を確認する。
この状況からピンを狙っても、失敗して傷口を広げる確率が70%以上ある、と判断したからピンを狙わないのです。

逆にアベレージプレーヤーは、自分が打とうとしているショットがいかに難しいことか分かってないのです。
シングルプレーヤーが傷口を広げる確率を70%以上と予測しているライであれば、アベレージプレーヤーなら90%以上の確率でドツボにハマるでしょう。
なのに「何とかなる」で打ってしまうのです。

結局、一番ゴルフが上手な人が一番「難しさ」を認知出来て、一番ヘタな人が一番「難しさ」が分からないのです。

これは仕事でも同じではないでしょうか。
例えば、デキる管理職は、あるプロジェクトを誰かに任せる時、その仕事の難易度を正確に測り、その難易度に合った部下を担当にします
少し苦労するかもしれないけど、何とかやれるであろう部下を選ぶのです。
そうすればプロジェクトも完遂し、部下も成長します。

デキない管理職は、プロジェクトの難易度を正確に計測することなく、立候補したヤル気のある部下に任せてしまいます
「がんばれ」と。
結果、プロジェクト半ばで先輩社員が尻拭いすることに。

ゴルフも仕事も、結果を残す人は、「難易度」を測れる人なのです。

ゴルフに見る、「プロとアマの違い」

ゴルフに見る、「プロとアマの違い」

 

知人から、プロゴルファーと一緒にゴルフラウンドをした話を聞きました。
と言ってもプロのトーナメントの前、水曜日に行われるプロアマではありません。
地方で時々行われる、地元のプロを招待したオープンコンペです。
アマチュアには商品、プロには少額ですが賞金も用意されています
参加費を出せばどんなレベルのアマチュアでも参加できるので、ルール的にはアマチュアに合わせて「オール6インチリプレイス(打つたびに打ちやすいようにボールを置きなおしてよい)」が採用されていたそうです。

「プロは動かさないんじゃないの?」
と私は知人に聞きました。
私くらいのアベレージゴルファーでも、「あるがままのボールを打つ」というゴルフの大原則を大切にしているからです。
しかし知人からは、意外な答えが返ってきました。
「それがうっとうしいくらい毎回置きなおしてたよ。
動かす必要のないくらいいいライでも、毎回ボールを持ち上げてた。
ボールに描いた線を目標にまっすぐ向けたりしてね」

なるほど。
私たちはプロゴルファーのことを、「プロテストをパスしたゴルフの上手な人」と考えます。
しかしプロゴルファー自身は、職業として「ゴルフで稼がなければいけない人」なんですね。
私のようなアマチュアは稼ぐ必要がないので、ゴルフに神聖さやカッコよさや気持ちよさや健康や、その他何を求めてもいいのです。
しかしプロは稼ぐことが第一であり、そのために出来ることはすべてやる、カッコなんか二の次、なんですね。
少しでもいいスコアを出すために、少しでも打ちやすい状態にボールをリプレイスする、それを全ショット手を抜かずにやる。

私たちが毎日している仕事、その仕事については私たちはプロです。
プロとしてやっている仕事で、いつの間にか「最優先すべきこと」を間違えて、中途半端な美学に偏ったりはしていないでしょうか
あらためて考えさせられるエピソードでした。

ゴルフ練習場でハンディキャップを取得する

ゴルフ練習場

 

私たちのグループ会社のゴルフ練習場では今、お客さんにハンディキャップを取得してもらうことに注力しています。
JGA(日本ゴルフ協会)認定の公式なハンディキャップです。

JGAのハンディキャップは、ゴルフコースの会員さんが、「公式ハンデは15です」と言っているアレですが、手続きをすれば、すべてのゴルファーが取得できます。
高価な会員権を持っていなくても、取得できるのです。
例えばゴルフダイジェスト・オンラインを通じてスコアカードを提出する方法。
または各県のゴルフ協会の会員になって、そこを通じてスコアカードを提出する方法もあります。
どの方法をとっても、スコアカードのデータがJGAに行き、JGAが認定証を発行してくれるのです。

ところで、ゴルフの練習場に通うお客の一番のニーズは「ゴルフが上手くなりたい」こと。
「上手くなりたい」が強いほど来場回数が増えます。
ですから練習場の販売促進は、お客の「上手くなりたい」気持ちを盛り上げることです。

私たちの練習場では、近場のゴルフ場と提携して、いろんなレッスンラウンドを企画しています。
例えば、まだゴルフ場でラウンドしたことがない人だけが参加できるコンペ「デビュー杯」。
数回のレッスンとハーフラウンドをセットにして、初ラウンドではインストラクターがルールやマナーを教えながらプレーします。
また、100を切ったことのない人を対象にしたレッスンラウンド「ターゲット99」など、レベルごとの「上手くなりたい」をサポートしています。

公式ハンディキャップ取得もその一環です。
コースの会員権は持っていなくても、JGAのハンディキャップを取得することで、JGAに認定されたゴルファーになれます。
それだけでも少しゴルフに対する思いが強くなるでしょう。
ハンディを減らすことを目標にして、人によってはシングルプレーヤーを目指して、「もっと上手くなりたい」と思う。

そうやって「上手くなりたい」人を増やすことは、ゴルフ練習場の来場者数を増やし、ひいては地域のゴルフ人口を増やすことにつながるものと考えています。

これから繁盛するゴルフ練習場は 「アスリート・ファースト」

ゴルフ練習場

 

「そない簡単に上手くなられたら、うちの商売上がったりやわ」
これは(関西の)ゴルフ練習場のオーナーが、なかなか上手くならないと嘆く常連さんに向かって言うセリフです。

しかしこのオーナーの言葉、本当にそうでしょうか。
練習場のお客は、上手くなったら練習場に来なくなるでしょうか。
答えはNOです。

ゴルフ練習場に来なくなるお客は、上手くならないお客です。
少し上手くなっていい当たりが出るようになると、練習が楽しくなります。
いいスコアが出れば嬉しくて、もっと練習しようと思います。
ハンデが20を切る頃からもっともっと練習したくなります。
ハンデが10を切ってシングルプレーヤーになったら、さらに練習します。
上手くなればなるほど、熱心に練習するのです。
上手くなったら練習をしなくなる、なんてことはありません。

つまりゴルフ練習場がお客を増やすためには、お客を上手くしてあげる方法を考えればよいのです。
ヘタな人をいっぱい集めることではありません。
ビギナーはビギナーなりに、中級者は中級者なりに、シングルの人はシングルなりに、その練習場に行けば上手くなれるヒントがたくさんある、と思われるようになれば、間違いなくお客は増えていくでしょう。

使いやすくて清潔な施設に、「上手くなる」ソフトが盛り込まれたゴルフ練習場。
これから繁盛するゴルフ練習場は、「アスリート・ファースト」です。