「雨乞い」のような経営会議

 

黙って聞いていると、「雨乞い」をしているような経営会議があります。

ある会社の月例の経営会議。
試算表の損益計算書で先月の損益を確認。
その後、「資金繰表」で現在の資金状況と3ヵ月先までの資金予定を確認します。
そこで、3ヵ月後の月末返済が相当厳しいことが分かります。
一番大きな銀行借入が3ヵ月ごとの元利金返済になっているからです。

そもそもこういう3ヵ月ごとに返済するような借入を起こしてはいけません。
3ヵ月ごとの返済のほとんどは、固定金利借入です。
銀行は固定金利で貸すと、貸出実行時に手数料が入ります。
支店にとって「おいしい手数料」。
もし銀行が貸付するときに「固定金利」を提案しても、断れば良いのです。
「固定金利でなければ貸さない」とは、銀行は言ってはいけないのですから。

なぜ3ヵ月ごとの返済にしてはいけないのか。
それは単純に、会社は1ヵ月のサイクルで仕事をしているからです。
どんな商売であれ、売りも買いも月末で締めて、翌月の決まった日に入金・支払があります。
もちろん給料支払いも。
借入返済もこのリズムでこなしていかなければいけません。
3ヵ月ごとにドーンと大きな返済が入ると、どんな会社でも資金繰りが難しくなってしまいます。

まあ、すでに借りてしまったものは仕方ありません。
返済の無い月にきちんと資金を積み立てて置くほかありません。
しかしこの会社の損益状況は、必要額を積み立てることが出来ていない状況です。
そこで財務担当の役員が、
「このままでは3ヵ月後の返済は相当厳しいです。
それまでに各部門とも売上をしっかりとってください
何の根拠もなく売上増を待ち望む。
まるで雨乞いです。
こんな雨乞い発想になるのも、ヘタに3ヵ月という猶予があるからでしょう。

他のことはともかく、資金繰りだけは「雨乞い」になってはいけません。

中小企業は、「CFO(最高財務責任者)」をチョイ借りする

 

上場企業には必ずCFO(最高財務責任者)がいます。
CEO、COOと共に経営を担う、重要なポストです。
それぞれの役割は、
CEO (最高経営責任者) ・・・ 経営戦略立案
COO (最高執行責任者) ・・・ 事業戦略の立案と実行
CFO (最高財務責任者) ・・・ 経営検証、財務戦略の立案と実行
プラン(CEO) → ドゥ(COO) → チェック(CFO) → プラン
のサイクルを回すためにも、それぞれの機能が必要です。

一方、中小企業では、社長や常務が実質的にCEOとCOOとなっています。
しかし、CFOはいません。
経営戦略を立てる人、それを実行する人はいるのですが、検証する人がいないのです。
上場企業・大企業と中小企業の経営体制を比べたとき、最大の違いが、この点にあるのではないでしょうか。
プラン → ドゥ の後のチェックが十分になされない。
十分にチェックされないまま、次のプラン → ドゥ。
とにかく一所懸命、プラン → ドゥ。
ちゃんと検証できる、それをしっかり主張できるCFOがいたら、余計なプラン → ドゥを繰り返さなくて済みます。

とは言え、規模が小さい中小企業では、役員レベルでCFOを抱えることは難しいでしょう。
また逆に、CFOが常勤するほど、財務の仕事量は多くないでしょう。
そこで、おすすめしたいのは、CFOのシェアです。
今後は「働き方改革」で社員の副業が当たり前になります。
中堅以上の会社で財務を担当している社員・役員をチョイ借りするのです。
今はまだ一般的ではありませんが、あと2、3年もすれば人材のシェアは当たり前になります。
CFOは難しい仕事ではありませんが、専門性が必要です。
今バリバリやっている人をチョイ借りするのが最も確かで、最も安上がりです。
今のうちに取引先や知り合いの会社でCFO候補を物色しておくといいでしょう。

CEOとCOOは自前、CFOは借り物、が中小企業に合っています。

試算表の評価基準を決めてみる

「純資産合計」は、これまでの頑張りの凝縮

 

ほとんどの会社で、月の半ばには前月分の試算表が出てきます。
その試算表を見て、前月の損益状況をどのように評価すればよいか
「黒字だから良かった」「赤字だから悪かった」という大雑把な評価で終わってしまっては残念です。
かと言って、「どれくらい良かった」「どれくらい悪かった」ということを表現するのは結構難しいことです。
試算表を読み込む力も人それぞれ、「どれくらい」についてはバラバラな認識になってしまいます

そこで、「どれくらい良かった」「どれくらい悪かった」も分かるように、業績の評価基準をつくってみてはいかがでしょう。
例えば、損益状況を学校の通信簿のように、A・B・C・D・Eの5段階で評価するのです。

<評価基準の例>
A 大変優れている  キャッシュフローが300万円以上プラス
B 優れている    キャッシュフローがプラス
C ふつう      経常利益がプラス
D 努力を要す    営業利益がプラス
E 大変努力を要す  営業利益がマイナス
(※キャッシュフロー = 経常利益-借入金返済+減価償却 = 現預金の増減)

このA〜Eの中で、合格点はCです。
毎月継続してBが取れれば、現預金が減っていないので、資金不足に陥ることはありません。
損益は良好な状況と言えるでしょう。
逆にEであれば大問題です。
営業利益ベースで赤字になるということは、「経費(インプット) > 粗利(アウトプット)」ですから、事業が商売として成立していないこと。
このEが続くようだと根本的な事業の見直しが必要です。

このように、全社統一の基準で毎月損益を判定すれば、
➀ 関係者全員が、同じ判定を共有するので、問題意識も共有しやすくなる
➁ 判定が上下するのを見ることで、業績推移を感知しやすくなる

経理が手間ひまかけて作った試算表、それを効果的に社員にフィードバックしたいものです。

「純資産合計」は、これまでの頑張りの凝縮

「純資産合計」は、これまでの頑張りの凝縮

 

貸借対照表の右下にある
「純資産合計」は経営者にとって非常に重要な数字です。
なぜなら会社設立以来あれこれ頑張ってきた成果が、そこに凝縮して表現されているからです。

例えば、資本金1,000万で設立した会社が10年後、
➀純資産合計が3,000万であれば、
10年間で元手1,000万を3,000万に増やしたことになります。
➁純資産合計が1,000万であれば、
10年間で元手1,000万を全然増やせていないことになります。
➂純資産合計が300万であれば
10年間で元手1,000万のうち、700万を食いつぶしてしまったことに。
➃純資産合計が-500万であれば
10年間で元手1,000万を使い果たした上に、他人のおカネまで500万使い込んでいることになります。

このように元手の「資本金」を、これまでの経営でどれだけ増やせたかを「純資産合計」で確認するわけです。
売上や利益の伸びには敏感な社長も、この「純資産合計」には関心を持たない方が多いです。
いざ確認してみると、
「あれだけ売上は伸びたのに、これだけしか元手を増やせてないのか」
ということも。

中小企業の一番の弱みは、この「純資産合計」が小さいこと。
これを着実に増やしていくことが強い会社に近づくことです。
そのためにやるべきことはいろいろあるのですが、まずは「純資産合計」をチェックすることから始めましょう。

三途の川を豪華客船で渡る

三途の川を豪華客船で渡る ?

 

老後資金はいくら用意すればよいのか。
これを難しくしているのは、「自分が何歳まで生きるか分からない」こと。
理想は、亡くなった時に、自分の資金を遣い切っている状態でしょう。
いろいろあったけど、プラスマイナス合計すれば、最後はゼロ。
おカネに関してはゼロサムな人生がベストです。
(思い出はたくさん抱えて逝きましょう)

しかし日本で多いのは、最期の瞬間が人生でもっとも資産を抱えた状態になっているケース。
家のローンも完済し、退職金と年金を節約しながら遣い、その間に保有する株や不動産が値上がりしたりして。
ところで、三途の川は6文銭あれば渡れるそうです。
今のお金で言えば120円。
いっぱいお金があっても、お金持ち用の豪華客船があるという話も聞きません。

最期が資産ピークになってしまう最大の要因は、ローンを完済した自宅を保有していることです。
70歳になったら自宅を売って現金に替え、賃貸住宅に住めば、遣えるお金は相当増えます。
しかし住み慣れた家を売って新しい環境で再スタートする決断は、高齢者にとって簡単なことではありません。

そこで家に住み続けたい人にピッタリなのが、「リバース・モーゲージ・ローン」
銀行が自宅を査定して、その評価額以内であれば、いつでもいくらでも借入をすることが出来ます。
元金返済も利息支払いもナシ、亡くなった時に家を売って精算することになります。
欧米では一般的な「リバース・モーゲージ・ローン」ですが、日本ではまだ一部の金融機関しか取り扱っていません。

日本で浸透しない理由はおそらく、日本人が欧米人に比べて、極めて心配性だからでしょう。
このローンにも「借入限度額」があるので、うんと長生きした時のことを考えると安心して借入出来ません。
心配性の日本人に浸透させるためには、このリバース・モーゲージ・ローンと生命保険をセットにして、長生きしても安心しておカネを遣える商品にしてあげる必要があると考えます。

三途の川では豪華客船に乗れないので、出来れば生きている間に乗っておきたいものです。