財務担当者が、「売上計画」に信ぴょう性を与える

財務担当者が、「売上計画」に信ぴょう性を与える

 

今後3年間の経営計画を立てるとき、「売上」の数字は通常、「営業担当者」が入れます。
しかしその数字に根拠・信ぴょう性・実現可能性を裏付け・肉付けしていくのは「財務担当者」です。

営業担当者は、「売上を伸ばしたい」「伸ばさなくてはいけない」という思いをベースに売上計画を立てます。
その最たるものは、昨年対比5%売上増、2年目・3年目も同様に5%増、みたいな昨対上乗せ計画です。
この上乗せには、ほとんど根拠がありません。
結果、3年後に達成してもしなくても、「計画比〇〇%でした」で終わってしまいます。

営業責任者が売上計画を立てる前に、財務担当者は今後3年間の「売上予測」を立てなければいけません。
過去数年の部門別・商品別の売上傾向(上昇度合・下降度合)から、今後3年間の部門別・商品別の売上予測を立てるのです。
これまでの部門別・商品別の売上実績グラフをそのまま3年分延ばすだけですから、財務担当者にとっては簡単な作業でしょう。

その「売上予測グラフ」をベースに、営業担当者は売上計画を立てます。
今までの延長線上の売上を、営業施策でどれだけ増やせるか。
それは結局、部門別・商品別の予測グラフの線を、どれくらい上に持ち上げるかを計画することになるのです。

もし部門別・商品別の「売上予測」が無かったら、この営業担当者は、ほっといても6%増えるはずの部門・商品に5%増の目標を設定してしまったかもしれません。
逆に毎年3%減の予測が出ている部門・商品にも、5%増という無謀な目標を設定してしまうかもしれません。

売上計画に根拠・信ぴょう性・実現可能性を与えるのは財務担当者の「売上予測」なのです。

中小企業の「実践的」財務分析 ②

中小企業の「実践的」財務分析

 

財務分析は、会社の「健康診断」です。

私たちが毎年受診する健康診断では、受診後に「結果表」が送られてきます。
その結果表には、検査項目ごとに自分の数値と、判定結果が記載されています。
白血球数 54.4      判定A (基準値32〜86)
中性脂肪 230  判定E (基準値30〜149)
γ-GDP         22       判定A (基準値0〜50)
などなど。
私もそうですが、結果表が届くと、このABCDE判定に一喜一憂します。
昔、夏休み前に通知表が配られ、そっと開いたときと同じように。

しかし、この判定は必ずしも正しいものではありません。
正しいのは「中性脂肪230」という数値であって、それが本当に「E」と判定されるほど悪い状態なのかどうかは分かりません。
人それぞれ個人差と個性があります。
基準値・平均値から離れていても、その人にとっては必ずしも異常値ではないかも知れません。
尿酸値がずっと9.0以上あっても、まったく痛風を発症しない人がいます。
逆に基準値内でも、発症する人もいます。

ですから、「判定」は参考程度にしておいて、注視しなければいけないのは、数値がどう変化しているかです。
それぞれの数値がいい方向に動いているのか、良くない方向に動いているのか。
「中性脂肪」は去年179だったから、悪い方に行ってるな。
最近、食生活が荒れているからかな。
酒を減らして、もっと野菜とらなきゃ。

大切なのは数値の変化をウォッチすること。
そしてその変化の原因を見つけ改善のアクションを起こすことです。
中小企業の「財務分析」もまったく同じなのです。

中小企業の「実践的」財務分析 ①

中小企業の「実践的」財務分析

 

「財務分析」と聞くと、貸借対照表や損益計算書の数字から、「自己資本比率」や「流動比率」を算出することをイメージします。
しかし、それは中小企業にとっては、「学問的」な財務分析です。
中小企業では、「学問的」財務分析の前に、「実践的」財務分析をしなくてはいけません。

中小企業の「実践的」財務分析は、貸借対照表や損益計算書を、時系列に並べることから始めます。
並べた数字をじっと眺め、科目ごとに増減をチェックします。
どの科目が増えて、どの科目が減っているか。
数字の並びを穴が開くくらい見るのです。
そうやって、数字の変化から会社の状態を読み解きます。

例えば、損益計算書を5年分並べる。
エクセル上に並べた数字を眺めて、増減している科目を探す。
「売上」は毎年着実に上がってる、4年連続増収だ。
「外注費」は3年前まで増加傾向だったのに、それ以降は減ってきている。
「広告宣伝費」は2年前から急増している。

増減している科目を見つけたら、その変化はなぜ起きたのかを考えます
さらにじっと数字を眺めながら考えるのです。
「売上」が増えたのはネット販売が増えた分だな、店の売上はそんなに増えていないから。
「外注費」は、売上が増えればそれにつれて増えるものだけど、3年前から内製化を進めたからこの動きになっているんだな。
「広告宣伝費」が急増したのは、間違いなくネット販売の「クリック広告」だ。
という感じです。

この「数字の変化」と「会社でやったこと・起きたこと」を一つずつ結びつける作業こそが、「実践的」財務分析です。
それを進めると、逆に「何をすれば、数字が変化するか」が明瞭になってきます。
何に取り組めば、数字が良くなるのか。
何をやめれば、数字が良くなるのか。
この財務分析は「会社のアクション」に直結しています。
だから「実践的」なのです。

売上を分解する

売上を分解する

 

よく使われる「売上の公式」
売上=客数×客単価
この式は、売上を上昇させる要素が2つあり、売上を上げるためには、「客数」を増やすか、「客単価」を上げる必要がある、ということを表しています。

この公式はもっと分解できます。
② 売上=客数×買上点数×物単価
これは①の「客単価」を「買上点数×物単価」に分解しています。
買上点数はお客一人当たりの平均購入点数です。
この式は、売上を上昇させる要素が3つあり、それらのどれかを上げる必要があることを表しています。

もっと分解できます。
③ 売上=入店客数×買上率×買上点数×物単価
これは②の「客数」を「入店客数×買上率」に分解しています。
買上率とは入店したお客の中で実際に買ったお客の割合です。
この式は、売上を上昇させる要素が4つあり、それらのどれかを上げる必要があることを表しています。

もっと分解できますが、やめておきます。
大切なことは、売上を分解して小さな要素にすれば、その要素に具体的な目標や対策を設定しやすくなるということです。
例えば漠然と「売上を上げる」よりも、
もっと具体的に、「客数を増やす」
さらに具体的に、「買上点数を増やす」
の方が対策を打ちやすくなるのです。

金融庁の叱咤激励で、地銀のバラマキが始まる

銀行

 

最近、日経新聞で金融庁と地方銀行に関する記事が続きました。
<5/25 朝刊> 金融庁、健全地銀に人材を派遣
<6/8 朝刊> 地銀の運用依存是正

最初の記事は、地元企業への融資を積極的に増やしていこうとする地方銀行には、金融庁が有能な人材を「お手伝い」として派遣しよう、というもの。
「有能な人材」とは具体的に、メガバンクOBで金融ノウハウをもっている人や、大手企業OBで企画・人事の専門知識をもっている人など。
これまで金融庁が銀行に人を送り込むのは、経営危機に瀕した場合に限っていたので、「健全」な地銀に対しては今回が初めてです。

次の記事は、マイナス金利の状況下で、地銀が高い利回りを狙って国債や外債での運用を増やしていることに対して、金融庁がストップをかける、というもの。
一定の保有制限を設けて、それ以上に運用残高が増えないように。

この二つの記事のテーマは同じ、
「地銀は、もっと地元企業にしっかり融資しろ!」
という、金融庁の叱咤激励です。
地銀の本分は、金融で地域経済を支えること。
地域で将来性のある会社を発掘・資金投下して大きく育てる。
破たんしそうな会社は、早めにテコ入れして再生させる。
再生が出来ないなら整理して、地域経済に与える影響を最小限にする。
それを金融庁は求めているのです。

もっともです。
地方銀行は、その地域から逃げられません。
地方に出店しているメガバンクは、その店をたためば逃げることも出来ます。
しかし地銀はそうはいきません。
その地域にあるから地銀なのです。
長い目で見れば、地域経済が活性化しない限り、そこの地銀も永続できません
地銀はその地域にある金融を、清濁併せ吞まなくてはいけないのです。
美味しいとこどりはできません。
パイがどんどん小さくなっているのですから。
地銀は今、その覚悟を迫られているのです。

いずれにしてもこの金融庁の叱咤激励で、地銀は貸出増のために必死に営業活動することになるでしょう。
そしてバラマキ融資が始まります。
しかしこれは必ずしも悪いことではありません。
地方の景気上昇に唯一欠けているピースは、「銀行の貸出増」なのですから。

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