実現可能性の高い「中期経営計画」をつくる ①

実現可能性の高い「中期経営計画」

 

一般的に中期経営計画の「中期」は5年です。
ですから今後5年間の
①損益計算書
②貸借対照表
③キャッシュフロー推移
の計画を数字で並べることになります。
 
一般的には、まず損益計算書を5期分並べることから始めます。
この時、一番最近の期(直近期)の損益をもとに、毎期数%ずつ売上が上昇するような計画を立てる会社が結構多いです。
「経営計画」となると何か上向きになる要素を盛り込まなければいけないと考えてしまうからです。
 
しかし最初にしなければいけないのは、単純に直近期の損益計算書の数字をそのまま5期分並べてみることです。
この最初に作らなければいけない表を現状維持計画と呼ぶことにします。
これは非常に大切な表です。
なぜなら、経営計画を立てる上で、現状を認識すること、足元を知ることが不可欠だからです。
現状維持が5年続いたら、キャッシュフローはどうなるか、また銀行返済は問題なく進めていけるか。
現状維持が5年続いたら、貸借対照表はどう変化するのか、自己資本比率はどの程度になるのか。
現状維持計画を認識しないと有意義な経営計画を作ることは出来ません。
 
例えば、現状維持計画で5年後に十分な利益とキャッシュの積み上げができることが分かれば、売上増よりも設備更新や新事業への投資などに注力した計画になるかも知れません。
また例えば、現状維持計画で4年目にキャッシュ不足になることが分かれば、その対策を計画に織り込まなくてはいけません。
 
現状維持計画を基準にすることで、自社のテーマを盛り込んだ戦略的な中期経営計画を作ることが出来るんですね。
最初から数%ずつの売上増計画を作ってしまうと、それだけですべてが解決してしまい、自社の抱えている課題が置き去りになってしまうのです。

銀行との付き合い方③ 「何もないときに敢えて波風を立てる」

銀行との付き合い方③ 「何もないときに敢えて波風を立てる」

 

毎月の運転資金の一部を銀行から借りる会社があります。
当座貸越や手形割引などの短期借入ですね。
そうでない会社が銀行からお金を借りるのは、何年かに一度大きな設備投資をするときくらいでしょうか。
そうすると前の借入から45年経っていたり
場合によっては銀行の担当者が2回替わっていたりします
 
何かあった時に銀行に頼らなくてはいけない会社であれば、何もないときに銀行相手に予行演習しておくことをおすすめします。
 
具体的には、23年に一回、担当者が替わって少しなじんだ頃に、借入申し込みをしてみることです。
銀行が自社をどう見ているのか確認しましょう。
 
例えば次のような借入です。
A. 法人税支払いや賞与のタイミングで、6ヵ月返済の短期借入
この場合のポイントは、保証協会の保証や担保設定なしの条件で申し込むことです。
B. 自社にとって影響のない程度の金額を5年返済する長期借入
目的は手元資金(当座・普通などの流動性預金)を積み増すため、でいいでしょう。
これも保証協会・担保なしで申込みます。
 
①スパッと決裁されればそれで良し。
 安心してください、信用されています
②ちょっと審査に時間がかかってしまったけど決裁されたら、それはそれで良し。
 銀行が引っかかったところを知っておくことも有意義です。
 改善する努力を見せれば、信用されるでしょう。
③保証協会や担保の条件付きで決裁されたら、それはそれで良し。
 銀行の見方が分かっただけ意味がありました。
 借入申し込みは取り下げましょう
④審査が万一NGになってしまっても、それはそれで良し。
 とは言えませんが、それを現実と割り切れば、本当にお金が必要な時のために、他行を含めた銀行取引見直しのきっかけになります。
 
何もないときこそ、敢えて波風を立てるのも、銀行との付き合いにおいては必要なことです。

儲からない会社の外注費、「コスト計算の落とし穴」

儲からない会社の外注費、「コスト計算の落とし穴」

 

ほとんどの会社で「外注費」は発生します。
会社によって業種によって、「外注加工費」であったり、「委託外注費」であったり。
いずれにしても外部の業者に仕事を依頼した際の費用ですね。
 
「外注費」という言葉には、
「自分たちでもできるけど、何らかの理由で業者に依頼する」
という意味合いがあるように感じます。
製造業なら部品の加工、小売業やサービス業なら店舗の清掃などのように。
業者に頼んだ方がいいのか、自分たちでやった方がいいのか。
この判断で間違ってしまう会社が結構多いです。
自社でも業者でも品質と納期に差がないのであれば、コストで比べることになります。
 
製造業での部品加工を例に。
①自社で製造したときのコスト  時給2,000円×10時間= 20,000
  (時給換算2,000円の社員が10時間かかる作業,)
②業者に外注したときのコスト  見積り17,000
 
この時に安いからといって、何の確認もせずに外注してしまうのは間違いです。
なぜなら外注に出している間に、社員が「遊んでいる」かも知れないからです。
社員は遊んでいても、給与が発生します。
そんな状況で外注に出すと、給与と外注費が同時に発生してしまいます。
これが外注費をめぐる「コスト計算の落とし穴」です。
「遊んでいる」は極端な表現ですが、フル稼働状態でないなら他の仕事をちょっとずつ詰めれば、自社でできる仕事かも知れません。
それが出来ればコストはゼロです。
つまり自社の製造現場がフル稼働しているのであれば外注するのが正解で、していない状態(余剰工数がある、といいます)であれば、自社でやるのが正解です。
 
小売業では、POPやチラシなどの「広告宣伝費」に大きなコストをかけています。
「広告宣伝費」の中には自分たちでできること、自分たちでやった方がいいことも混じっているかもしれません。
そういうものは実質的に「外注費」ですから、もう一度、自社でやるか、業者に頼むか、検討の余地があります。
 
儲からない会社、儲からない店には、安易に仕事を外に出す傾向があります
これは外部の才能を活用する、今どきの「アウトソーシング」とはまったく違います。
出来ることはすべて自分たちでやる、そうすれば会社の人・設備がフル稼働に近づきます。
どんな業種であれ、現場がフル稼働すれば利益は出やすくなります。
繰り返しになりますが、「自分たちで出来ることはすべて自分たちでやる」を徹底することが、儲かる会社への最短ルートです。

税務調査官が重点チェックする「納品書」

税務調査官が重点チェックする「納品書」
10年ぶりに税務調査が来ました。
ゴールデンウィークまでの延べ7日間、少し長い調査でした。
 
結果、いろいろ指摘をいただきました。
その指摘事項について調査官と話をしていて、再認識したことがあります。
それは、「調査官は納品書を重点チェックする」ということです。
 
「納品書」は通常、納入業者が発行します。
複写の1枚を納入業者、1枚をこちらで保管します。
納入業者側には、納品を確認したこちらの担当者の受領印が押されています。
こちらが保管する「納品書」は、納入業者から請求書が来た時に、確認資料として使います。
請求書の内容が、「納品書」の内容とちゃんと合っているか。
この経理の基本的で大切な仕事には「納品書」が不可欠です。
しかし一度その確認作業が済むと、「納品書」は半ば用済み帳票になってしまいます。
見積りや請求書、領収書がメインで、「納品書」はサブな感じです。
 
税務調査官は違います。
一番大切なのは「納品書」なのです。
なぜなら、「納品」というモノが動いた事実を唯一証明する帳票だからです。
見積り・請求書・領収書は、モノの動きを証明していません。
調査官いわく、「請求書や領収書はいつでも作れる」とのこと。
納品書にはモノと日付と「担当者の受領印(納入業者側)があります。
これが取引の事実を証明する唯一のものという理由です。
もしこの「納品書」が偽造であれば、それはそれで大変な問題に発展します。
 
私たちの会社の調査でも、決算月の設備購入などで納品書を重点的にチェックされました。
減価償却資産を減価償却するための必須条件は、「事業の用に供している」ことです。
買っただけ、運び込んだだけでは償却できません。
調査官は納品書で納品日を確認し、実際に稼働していたかをチェックするのです。
 
私たちも、「納品書」にもっとスポットを当てる必要がありますね。

かんたん説明、「信用創造」➁

かんたん説明、「信用創造」

 

信用創造は「銀行が貸出をすると、世の中全体のおカネが増える」ことです。
繰り返しになりますが、銀行ではないAさんがBさんにお金を貸しても、世の中全体のおカネは増えません
 
ところで信用創造の反対は「信用収縮」です。
だいたいお分りかと思いますが、銀行が貸出を回収すると世の中のお金がそれだけスッポリなくなってしまいます。
ブラックホールにお金が吸い込まれるように
沼に札束を投げ入れたイメージでも良いかも知れません。
これが銀行ではないAさんがBさんからお金を返してもらったのであれば、世の中全体のおカネは減りません
 
このように、銀行の貸出・回収は世の中全体のおカネの量に大きな影響を与えるのです。
 
30年前のバブル景気の頃は、銀行が思いっきり信用創造をしていました。
その後、国主導で銀行が一気に信用収縮に動いてしまったために、日本経済はズタズタになってしまいました。
銀行の信用創造・収縮機能が日本経済を壊すほどの作用をしたんですね。
 
今でも銀行の信用創造の影響力は相当大きいと考えます。
銀行貸出が増えなければ世の中のおカネが増えません。
中小企業をとりまく景況感が今一つ上がってこない要因は、銀行貸出が伸びていないことが大きな要因ではないでしょうか。
 
最後に「信用創造」に関する小さな提案を一つ。
最近銀行は貸出をしたくても、案件を見つけられない状況にあります。
一方中小企業の貸借対照表の中には、親会社からの貸付やオーナー個人からの貸付が結構あります。
そういう貸付を片っ端から銀行が肩代わりしてはどうでしょうか。
親会社やオーナーからの貸付では世の中のおカネは増えません。
銀行が貸出すれば信用創造で世の中のおカネが増えます。

その恩恵として、親会社やオーナーの手元に資金が入り、何かを買ったり投資したりする余力が生まれるのです。