東芝ショック、上場企業に強権社長が出現する不思議

東芝ショック、上場企業に強権社長が出現する不思議

 

なかなか東芝の行方が定まりません。
思えば一昨年の不正会計あたりから、同社周辺には不穏な空気が立ち込めていました。

上場会社が不正会計で業績をかさ上げするケースでは、その陰に強権的な社長の存在を想像してしまいます
実際東芝の不正会計の時には、社長の「チャレンジ」と称する目標設定が原因の一つになっていました。

強権的な社長は本来、中小企業の専売特許ではないでしょうか。
なぜ大企業のサラリーマン社長が強権社長になってしまうのか。
本当に不思議です。

率直に言えば、中小企業と大企業では人材の素養が違います。
(人間性・人間力ではなく、仕事上の理解力に関してです)
ですから必然的に中小企業での教育は、体に教え込むスタイルになります。
強権発動、「已む無し」です。
しかし大企業は、話せば分かる社員ばかりです。
少なくとも十分議論を尽くせる人たちばかりでしょう。
強権を発動する必要はないのです。

日本の上場企業には、日本の上位何%かの優秀な頭脳が集まっています
そんな人間を集めておいて、議論の余地なく強権発動するなら、日本の資源の無駄遣いです。

東芝に限らず、あちこちの上場企業で強権的な社長が出現します。
日本の上場企業で、なぜそのような強権発動とリーダーシップを混同するトップが出現するのか
そのプロセスを解明することは、日本の上場会社にとって非常に大切なことのように思えます。
第二、第三の東芝ショックを起こさないためのガバナンスチェックです。

粉飾決算の王道 「在庫操作」

粉飾決算の王道 「在庫操作」

 

中小企業の粉飾決算の大半は「在庫」を操作する手口です。
銀行が企業から決算書を受け取って分析する場合、必ず在庫金額の推移に不自然さがないかをチェックします。

当然、粉飾決算を指南するつもりはありませんが、「在庫」の特性を理解する上では、粉飾の仕組みを確認することが役に立ちます。

「在庫」はなぜ操作しやすいのか。
➀ まず実際に在庫を棚卸しても、1円も間違えずに数えることは至難の業です。
つまり在庫金額には必ず不確実性がつきまとう、少しいい加減な科目なのです。
➁ 在庫は捨てることが出来ます。
腐ったり売れなくなったりした在庫は処分します。
この人為的な判断で在庫を減らすことが出来る、めずらしい科目なのです。
➂ 減らすことが出来るということは、増やすことが出来るということ。
在庫は「仕入」と「売上」がめまぐるしく発生する中でその残高が動いています。
上の②のように意図的に減らすことが出来るのであれば、少し多めに計上しておいても大丈夫、ということ。
なぜなら、捨てることでいつでもアジャストできるのですから。

「在庫」を使った粉飾を貸借対照表で考えてみます。
貸借対照表上の「在庫」を100万円増やしたらどうなるか。
貸借対照表の左側(借方)が100万増えるわけですが、これをバランスさせるためには、左側のどれかを100万減らす、もしくは右側(貸方)のどれかを100万増やすしかありません。
しかし他の科目をヘタに増減させるとすぐに矛盾が起きてしまいます
例えば右側の「買掛金」を増やしてしまうと、支払う先のない買掛金になってしまい、ずっと帳簿に残ってしまいます。
例えば左側の「預金」を減らしても、すぐにつじつまが合わなくなってしまいます。
そんな感じで結局、在庫100万増の相対で動かすことが出来るのは、右側(貸方)の資本の部、繰越利益剰余金の中の「当期利益」しかないわけです。
左側の「在庫」と右側の「当期利益」が直結しているのです。
つまり、在庫が100万増えれば当期利益が100万増える、在庫が100万減れば当期利益が100万減る。
至ってシンプルな関係です。

粉飾決算はしてはいけないことですが、在庫と利益が直結していることはしっかり認識しておかなければいけない事実です。
在庫を管理することは、利益を管理すること、なのです。

これから繁盛するゴルフ練習場は 「アスリート・ファースト」

ゴルフ練習場

 

「そない簡単に上手くなられたら、うちの商売上がったりやわ」
これは(関西の)ゴルフ練習場のオーナーが、なかなか上手くならないと嘆く常連さんに向かって言うセリフです。

しかしこのオーナーの言葉、本当にそうでしょうか。
練習場のお客は、上手くなったら練習場に来なくなるでしょうか。
答えはNOです。

ゴルフ練習場に来なくなるお客は、上手くならないお客です。
少し上手くなっていい当たりが出るようになると、練習が楽しくなります。
いいスコアが出れば嬉しくて、もっと練習しようと思います。
ハンデが20を切る頃からもっともっと練習したくなります。
ハンデが10を切ってシングルプレーヤーになったら、さらに練習します。
上手くなればなるほど、熱心に練習するのです。
上手くなったら練習をしなくなる、なんてことはありません。

つまりゴルフ練習場がお客を増やすためには、お客を上手くしてあげる方法を考えればよいのです。
ヘタな人をいっぱい集めることではありません。
ビギナーはビギナーなりに、中級者は中級者なりに、シングルの人はシングルなりに、その練習場に行けば上手くなれるヒントがたくさんある、と思われるようになれば、間違いなくお客は増えていくでしょう。

使いやすくて清潔な施設に、「上手くなる」ソフトが盛り込まれたゴルフ練習場。
これから繁盛するゴルフ練習場は、「アスリート・ファースト」です。

巨人12連敗に考えさせられること

巨人12連敗に考えさせられること

 

巨人ファンではありません。
しかし11連敗目と12連敗目の試合はBS放送で観ました。
こんな状況で巨人はどんな試合をするのか、興味があったのです。

それにしても2試合ともハンパない緊張感でした。
負けたら今日で終わり、の甲子園の試合を観ている感じでした。
プロ野球は勝って負けて、負けて勝って、終わってなんぼ、のはず。
だけどここまで追いつめられると、「この試合」になってしまうんですね。

会社経営も似たようなものです。
勝って負けて、負けて勝って、最後に締めてなんぼ残るかです。
全部勝とうと思うと、社内的にも取引先との関係もギスギスしてきます。
負けが立て込んで資金繰りに窮してくると、勝つことしか考えられなくなります。
だから大切なのは十分な資金をいつも確保しておくことです。
20連敗くらいしても全然平気なくらいの資金を。
もちろん20連敗はしてはいけません。
しないために十分な資金をもって、余裕をもって「勝ち」と「負け」を配置するのです。

野球もビジネスも「絶対」はありません。
やる前に今日は、この試合は、絶対勝てる、なんていうことはないのです。
だからこそ、優勢に進んだ試合は確実に勝つ、明らかに負けそうな試合は戦力を温存する、ことが大切なのだと思います。

巨人ファンではないので、巨人にどんな戦力があるのか知りません。
しかし無責任なことを言わせていただくと、連敗を止めるためにもう一試合負けてみるのはどうでしょう。
負けてもいい、と覚悟して思い切った選手起用をするのです。
この2試合、責任感のあるベテランがガチガチです。
ちょっと休ませて、この連敗にあまり責任感を感じる立場にない選手を入れてみるのもよいと思います。
戦況によって途中からでも出場できるのですから。
負けてもいいと割り切った試合が、勝ち試合になることもよくあることです。
余計なお世話でした。

人工知能(AI)に勝てる脳

人工知能(AI)

 

Googleの人工知能(AI)「アルファ碁」が中国の世界最強棋士に3連勝したそうです。
この種のニュースは時々流れます。
囲碁以外でも、将棋やチェスやオセロなど、最近は最強プロがAIに勝てなくなってきました。
そういうニュースを見ると、「感心する」というよりも、つまらない世の中になってしまうのではないか、とちょっとドンヨリした気持ちになってしまいます。

ただ、そのようなボードゲームは、AIが最も得意な分野でしょう。
明確なルールがあって、「勝つ」という明確な目的がある。
途中に打てる「手」が何万あろうと、AIにはへでもないこと。
「勝ち」を競うなら、人間に勝ち目はなくなるでしょう。

AIにとって手ごわい相手は、例えば「勝つ気がない」人です。
碁盤を挟んで向かい合ってはいるけど、無理やり連れて来られた、囲碁なんてしたくない、勝ちたいとも思わない、興味ない、ウザい、という人です。
そんな人を前にするとAIは無力です。
「ソウイワズニ、イッショニ、ゴヲタノシミマショウ」
対戦の前に、ヤル気にさせないといけないのです。
現在のAIのレベルではこの強敵をヤル気にさせることはまだ難しいでしょう。

今後AIが発達していく過程で、最後まで手こずる相手は、「変わり者」です。
それも一見して「変わり者」ではなく、私たち一人一人の中にある「変わり者」の部分
自分では認めたくない部分だったり、隠したい部分だったりするところです。

AIがこれからどこまで私たちの生活に入り込んでくるかは分かりませんが、私たちの内側の「変わり者」を正確に認識するようになるには、まだまだ時間がかかるのではないでしょうか。
最強棋士に勝ったことは、ようやくスタートラインに立ったという感じでしょう。