実現可能性の高い「中期経営計画」をつくる ②

実現可能性の高い「中期経営計画」

 

中期(5年)経営計画を作成する際、まず「現状維持計画」を作ります。
現状維持が5年続いたら、キャッシュフローや貸借対照表はどう推移するかを確認しておこうというものです。
 
仮に、現状維持計画で4年目にキャッシュ不足になると分かった場合、その対策をどのように計画に盛り込むか
これも大切なポイントです。
 
ここで陥りやすい間違いは次のパターンです。
①キャッシュ不足にならないように売上予算を増やす
②キャッシュ不足にならないように経費予算を減らす
そのようにエクセルの表で、数字を入れ替えながらシミュレートするのは簡単です。
しかし実際に売上増・経費減することは簡単なことではありません
結局その予算は「希望的予算」です。
キャッシュ不足は会社の倒産原因になり得る重大な問題です。
その対策を、希望的予算で片づけては絶対ダメです
 
正しい対策は、
③キャッシュ不足にならないよう、4年目に新規借入をする
④もしくはそれまでに借入を組み替えて返済額を減らす
ことです。
もし①②の計画だけで済ませてしまうと、財務担当者がすべき確実な対策③④をしないで時間が過ぎてしまいます
③④をやったうえで、結果的に①②もできてかなりの資金余剰になったとしたら、それは素晴らしいことと評価したらよいのです。
 
キャッシュ不足の対策だけは、希望的予算に頼るのではなく、確実かつ能動的なものを必ず計画に入れておきましょう。

実現可能性の高い「中期経営計画」をつくる ①

実現可能性の高い「中期経営計画」

 

一般的に中期経営計画の「中期」は5年です。
ですから今後5年間の
①損益計算書
②貸借対照表
③キャッシュフロー推移
の計画を数字で並べることになります。
 
一般的には、まず損益計算書を5期分並べることから始めます。
この時、一番最近の期(直近期)の損益をもとに、毎期数%ずつ売上が上昇するような計画を立てる会社が結構多いです。
「経営計画」となると何か上向きになる要素を盛り込まなければいけないと考えてしまうからです。
 
しかし最初にしなければいけないのは、単純に直近期の損益計算書の数字をそのまま5期分並べてみることです。
この最初に作らなければいけない表を現状維持計画と呼ぶことにします。
これは非常に大切な表です。
なぜなら、経営計画を立てる上で、現状を認識すること、足元を知ることが不可欠だからです。
現状維持が5年続いたら、キャッシュフローはどうなるか、また銀行返済は問題なく進めていけるか。
現状維持が5年続いたら、貸借対照表はどう変化するのか、自己資本比率はどの程度になるのか。
現状維持計画を認識しないと有意義な経営計画を作ることは出来ません。
 
例えば、現状維持計画で5年後に十分な利益とキャッシュの積み上げができることが分かれば、売上増よりも設備更新や新事業への投資などに注力した計画になるかも知れません。
また例えば、現状維持計画で4年目にキャッシュ不足になることが分かれば、その対策を計画に織り込まなくてはいけません。
 
現状維持計画を基準にすることで、自社のテーマを盛り込んだ戦略的な中期経営計画を作ることが出来るんですね。
最初から数%ずつの売上増計画を作ってしまうと、それだけですべてが解決してしまい、自社の抱えている課題が置き去りになってしまうのです。

地方の高卒採用事情、求人倍率2倍の異常

採用
昨日、「県内就職促進協議会」に参加してきました。
県が主催するこの協議会は、「高校の進路指導担当者」と「企業の採用担当者」との出会いの場です。
県としては、就職希望の高校生が県外に出ることなく、地元に残ってくれるよう、高校と県内企業のマッチングに必死なのです。
人口減問題を抱える地方自治体にとって、高校生の県外就職も悩みのタネなんですね。
 
その協議会でもらった昨年の高卒者就職状況の資料によると、
県内企業求人倍率 1.71
②県内就職内定者 : 県外就職内定者 = 80 : 20
つまり県内の就職希望高校生の数に対し、1.71倍も企業は求人しているのに、生徒の2割は県外に出てしまうのです。
そうすると
県内就職者に対する県内企業求人倍率 2.14
に跳ね上がってしまいます。
県内の企業が地元の高校生を採用しようと思っても、採りたい人数の半分も採用できない勘定になります。
 
「半分採れればいいじゃないか」
と言われそうですが、現実は違います。
一社一社が希望数の半分を採用できるわけではありません。
現実は、高校生の「行きたい会社ランキング」で上位半分の会社は希望数確保、下位半分の会社は採用「0となるのです。
つまり、上場企業やそれに準ずる中堅企業、または高校生でもなじみのあるB to C企業などでほぼ満了してしまうのです。
 
そんな状況ですから、内定率は昨年も99.6%。
「全員合格」です。
希少な工業高校ならともかく、普通科も含めてのことですから、すごいことです。
「どんな子でも採用される」という状況は、それはそれで異常な気がします
 
まあ我々もそんな評論じみたこと言ってる場合ではありません。
これから始まる難しい採用活動、いい縁がありますように。

会議で「モチベーション」が飛び交ったら要注意 !

会議で「モチベーション」が飛び交ったら要注意 !

 

会議で、「モチベーション」という言葉が矢鱈と飛び交うようになったら、要注意です。
社員のモチベーション、部下のモチベーション、アルバイトのモチベーション
業績が上向かないのは、モチベーションを喚起できていないからだと。
 
しかし、本当に業績が上がらないのは、モチベーションのせいでしょうか。
少なくとも、直接的な原因はそうではないでしょう。
例えば、お客が店でモノを買うとき、店員のモチベーションの有無を確認して買うわけではありません。
確認するのは、品質、価格、ディスプレー、接客
それらを総合的に、または直感的に判断して、買う・買わないを決断します。

ですから、店の業績を上げるためには、品質・価格・ディスプレー・接客のレベルを上げる以外ありません。
そしてそのレベルアップの手段は、担当者の「アクション(行動)」以外ありません。
どんな素晴らしいアイデアやモチベーションを持っていても、「アクション」されなければ、業績アップにつながりません。
会議でフォーカスされるべきは、「モチベーション」ではなく、「アクション」なのです。

そもそも「会議」は、課題を解決するために行います。
➀解決したい課題を分析して、いくつもの小さい課題に分解する
➁その小さい課題で対策が打てそうなものを選び出す
➂その対策を「アクション」レベルで書き出す。
➃そのアクションに優先順位、担当者、対策期限を設定する
このように、小さい課題に対してアクションを起こすことで、元の大きな課題の解決を目指すのです。

ところが会議で「モチベーション」にフォーカスすると、そこで課題の分解はとまってしまいます
「モチベーション」は分解しにくい漠然としたものだからです。
そうなると会議は、最も解決困難なテーマ「モチベーションの充填」に時間を費やすことになります。、
そして最後に辿り着く結論は、「モチベーションアップ研修が必要」などということになります。
課題解決からどんどん遠ざかってしまうのです。

もちろん、「モチベーション」は大切です。
モチベーションはアクションを継続するための「燃料」だからです。

しかしそれは、ガソリンスタンドのように簡単に充填できる燃料ではありません。
こじつければ、走っているうちに生み出されるハイブリッドの電気のようなものでしょう。
アクションを起こした人だけに「モチベーション」は生まれるのです。

繰り返しますが、会議で議論すべきは「モチベーション」ではなく「アクション」です。

銀行との付き合い方③ 「何もないときに敢えて波風を立てる」

銀行との付き合い方③ 「何もないときに敢えて波風を立てる」

 

毎月の運転資金の一部を銀行から借りる会社があります。
当座貸越や手形割引などの短期借入ですね。
そうでない会社が銀行からお金を借りるのは、何年かに一度大きな設備投資をするときくらいでしょうか。
そうすると前の借入から45年経っていたり
場合によっては銀行の担当者が2回替わっていたりします
 
何かあった時に銀行に頼らなくてはいけない会社であれば、何もないときに銀行相手に予行演習しておくことをおすすめします。
 
具体的には、23年に一回、担当者が替わって少しなじんだ頃に、借入申し込みをしてみることです。
銀行が自社をどう見ているのか確認しましょう。
 
例えば次のような借入です。
A. 法人税支払いや賞与のタイミングで、6ヵ月返済の短期借入
この場合のポイントは、保証協会の保証や担保設定なしの条件で申し込むことです。
B. 自社にとって影響のない程度の金額を5年返済する長期借入
目的は手元資金(当座・普通などの流動性預金)を積み増すため、でいいでしょう。
これも保証協会・担保なしで申込みます。
 
①スパッと決裁されればそれで良し。
 安心してください、信用されています
②ちょっと審査に時間がかかってしまったけど決裁されたら、それはそれで良し。
 銀行が引っかかったところを知っておくことも有意義です。
 改善する努力を見せれば、信用されるでしょう。
③保証協会や担保の条件付きで決裁されたら、それはそれで良し。
 銀行の見方が分かっただけ意味がありました。
 借入申し込みは取り下げましょう
④審査が万一NGになってしまっても、それはそれで良し。
 とは言えませんが、それを現実と割り切れば、本当にお金が必要な時のために、他行を含めた銀行取引見直しのきっかけになります。
 
何もないときこそ、敢えて波風を立てるのも、銀行との付き合いにおいては必要なことです。